【Kindleセール】仕事・研究の生産性向上にむけて|イシューからはじめるエッセンシャル思考
本日の Kindle 日替わりセールに、グレッグ・マキューンのベストセラー『エッセンシャル思考』が登場。今日いちにち限定で54%オフと大幅値下げとなっているので、この機会にぜひ一読をおすすめしたい一冊だ。
Apple、Google、Facebook、Twitterのアドバイザーを務める著者の99%の無駄を捨て1%に集中する方法とは!?本書で紹介するエッセンシャル思考は、単なるタイムマネジメントやライフハックの技術ではない。本当に重要なことを見極め、それを確実に実行するための、システマティックな方法論だ。
エッセンシャル思考が目指す生き方は、「より少なく、しかしより良く」。そのためには、ものの見方を大きく変えることが必要になるが、時代はすでにその方向へ動きだそうとしている。
本書の副題が「最小の時間で成果を最大にする」となっているように、いかにして大事な部分を見極めそこに集中するかということがテーマとなっている。つまりは仕事の生産性をどう高めていくかという議論である。そんな生産性にいま再び注目が集まっているように、伊賀泰代『生産性』は、ずばりのタイトルでこのテーマに直接向かい合っており、こちらも合わせて読むと効果的。
かつて日本企業は生産現場での高い生産性を誇ったが、ホワイトカラーの生産性が圧倒的に低く世界から取り残された原因となっている。生産性はイノベーションの源泉でもあり、画期的なビジネスモデルを生み出すカギなのだ。本書では、マッキンゼーの元人材育成マネジャーが、いかに組織と人材の生産性を上げるかを紹介する。
さて、そんな本書をざっと読んで思い出したのが、数年前に出版された『イシューからはじめよ』である。こちらも同様に、本当に大事なことだけに集中すべきだと説いた一冊であり、個人的には上記の『エッセンシャル思考』や『生産性』よりも面白く読んだ。
それではなぜこの『イシューからはじめよ』が読み応えのある一冊となっていたのか?それは著者のユニークな経歴によるところが大きい。
1968年富山県生まれ。東京大学大学院生物化学専攻にて修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。4年半の勤務後、イェール大学・脳神経科学プログラムに入学。平均7年弱かかるところ3年9カ月で学位取得(Ph.D.)。2001年末、マッキンゼー復帰に伴い帰国。マーケティング研究グループのアジア太平洋地域における中心メンバーの1人として、飲料・小売り・ハイテクなど幅広い分野におけるブランド建て直し、商品・事業開発に関わる。また、東京事務所における新人教育のメンバーとして「問題解決」「分析」「チャートライティング」などのトレーニングを担当。2008年よりヤフー株式会社に移り、現在は執行役員・チーフストラテジーオフィサーとして幅広い経営課題・提携案件の推進などに関わる。
上記プロフィールにあるように、この著者・安宅和人氏はマッキンゼーを経てイェール大学でPh.D.を取得しているのである。しかもとんでもなく短期間で!
なぜそんなことが可能だったのかは、氏のブログ「ニューロサイエンスとマーケティングの間」でも紹介され、それに大幅加筆の上で出版されたのが本書『イシューからはじめよ』なのである。だからこの一冊は、デキるビジネスマンの思考法として読むよりも、質の高い論文を量産するアメリカの研究者の思考法として読むと、現在の博士課程学生等にとっても、ものすごく役立つ内容となっているのである。
詳細はぜひ本書を読んで頂くとして、そのポイントを抜粋すると以下の四点が重要になる。
- まずイシューありき
- 仮説ドリブン
- アウトプットドリブン
- メッセージドリブン
つまり、まずは何よりも、自分は何にケリをつけるのか(=issue)を明らかにすること。そして研究を始める段階でトップメッセージとそれを科学的にサポートするための複数のサブ論点といったリサーチデザインを明確にしておくこと。後はそのデザインに沿って穴埋めするようにエビデンスを出していき、必要に応じて仮説に修正を加えていくこと。最後にこれがとても大事なことだと個人的にも思うのだが、上記のように進めてきた必然の結果として、提示されるメッセージが非常に説得力を帯びたものとなること。なぜこれに取り組んだのか、なぜこれが大事なのか、そして何を明らかにしたのか、そういった一連のテキストがクリアだからこそ、論文を査読誌に投稿しても採択率が高くなるのだという。
英語での論文ライティングは英語の問題(だけ)ではなく、そもそもの研究の構想の仕方と具体的な進め方に深く関わっているということ、そしてその根幹を成す思考法にまで遡って解説したものだからこそ、本書『イシューからはじめよ』は稀有の一冊となっているのである。ビジネスマンを主な読者対象として執筆されベストセラーとなったものだが、研究者そしてその卵である大学院生こそ読んでおきたい一冊なのではないだろうか。おすすめです。
最後に、もしも仕事全般の生産性向上ではなく、研究者としての生産性アップ、すなわち、いかに効率的に研究テーマを見つけて取り組み結果を出し、そして論文にまとめて発表する、ということに特に関心があるならば、以下の2冊を追加でおすすめしたい。1冊目は「できる研究者の論文生産術:How to Write a Lot」の中で紹介したポール・シルヴィア『できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか 』であり、2冊目は「おすすめ新刊『できる研究者の論文作成メソッド』|書き上げるための実践ポイント」で紹介した、同著者による続編『できる研究者の論文作成メソッド 書き上げるための実践ポイント 』である。研究者および大学院生には、理系・文系分野を問わずにぜひ一読をおすすめしたい良書なのだ。
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