*

できる研究者の論文執筆術:Write It Up

公開日: : 英語

前回「できる研究者の論文生産術:How to Write a Lot」で紹介したように、英語ライティング・テキストの好著 “How to Write a Lot: A Practical Guide to Productive Academic Writing” に、ついに翻訳書が登場した。それがこちらの『できる研究者の論文生産術ーどうすれば「たくさん」書けるのか』だ。

 

 

 

著者の Paul Silvia は、心理学の若手准教授。そんな彼の優しい語り口が魅力の本書は、先輩から後輩へのカジュアルなアドバイスといったもの。とくにこの一冊は、英語ライティングのテキストとはいっても、書き方のイロハを教授するものではない。むしろ「書くスタイル」をどう確立するかといった、ライティング・マネジメントに関するものであり、だからこそ数多のライティング・テキストとは一線を画したユニークで有用な内容となっていたのである。

 

そんな著者が最近出版した第二作目がこちらの “Write It Up: Practical Strategies for Writing and Publishing Journal Articles” である。書名からも分かる通り、今回もまた読者にとって読みはじめやすいカジュアルなものとなっている。一方でサブタイトルが示唆するように、本書は前作とは一転、いわゆるアカデミック・ライティングの王道をいく内容でもあるのだ。つまり、どのジャーナルを選び、どのようなスタイルで書くのか、そしてより具体的には論文の各章をどのようにまとめるのか、といった視点で一貫して書かれており、それが以下の目次にも顕著に現れていると言えよう。

 

I. Planning and Prepping

  1. How and When to Pick a Journal
  2. Tone and Style
  3. Writing With Others: Tips for Coauthored Papers

II. Writing the Article

  1. Writing the Introduction
  2. Writing the Method
  3. Writing the Results
  4. Writing the Discussion
  5. Arcana and Miscellany: From Titles to Footnotes

III. Publishing Your Writing

  1. Dealing With Journals: Submitting, Resubmitting, and Reviewing
  2. One of Many: Building a Body of Work

 

 

アカデミック・ライティングの良書は多々あれど、個人的には以下で紹介したものが圧倒的にベストと思っている。

 

ただ、そこまで本格的な内容に取り組む前に、そもそもアカデミック・ライティングとは、もしくは論文を書く際のポイントを手短かに知りたい、というニーズに答えるには、まさに上記で挙げた “Write It Up” が最適であろう。コンパクトにまとめられた本書は簡単かつ簡潔に書かれているが、そこに書かれていることは極めて大事なことばかり。具体的な事例も多く掲載されており、自分が書いたものと比較できるという点で実践的でもある。ひさしぶりに出版されたおすすめのライティング書は、同じ著者の前作と合わせてぜひ読んで頂きたい一冊だ。こちらもそのうち翻訳書が出るかも知れないが、それを数年も待つくらいなら、電子書籍でも今すぐ手軽に読める原書でどうぞ。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

できる研究者の論文生産術:How to Write a Lot

これまで複数回にわたって紹介してきた、英語ライティングのおすすめテキストたち。古典的名著から新たなス

記事を読む

新書『英語独習法』が売れている|認知科学者がおしえる思考と学習

岩波新書の今井むつみ『英語独習法』が売れている。僕自身も大変興味深く読んでおり、これは英語学習者にと

記事を読む

英語論文の書き方:英文ライティングの新定番テキスト “The Sense of Style”

これまで4回連続で紹介してきた、英語アカデミック・ライティングのおすすめテキスト、の続き。

記事を読む

30万部突破のベストセラー『英語は3語で伝わります』他に学ぶパワフル動詞の使い方

中山裕木子著の『会話もメールも英語は3語で伝わります』を、とても興味深く読んだ。出版から2年で30万

記事を読む

もう一度聞きたい、アメリカの大学卒業式スピーチ5選

アメリカの卒業式シーズンは5月だが、日本でいえば今がまさに大学卒業のピーク・シーズンである。だからこ

記事を読む

new york times building

ニューヨーク・タイムズと朝食を

前回「フィナンシャル・タイムズと昼食を」で紹介した "Lunch with the FT" のインタ

記事を読む

学校では教えてくれない、正しいFUCKの使い方。

ちょっぴり気になっていたこの一冊、思わず読んでしまったじゃないか(笑)  

記事を読む

できる研究者の英語プレゼン術|スライド作成からストーリー展開まで

以前に紹介した、ポール・シルヴィア著の『できる研究者の論文生産術』は素晴らしい一冊である。著者は20

記事を読む

日本人の9割が間違えちゃう英語表現と英語常識

以前にも紹介したキャサリン・A・クラフト著『日本人の9割が間違える英語表現100』は、面白く読めるエ

記事を読む

おすすめ 『カリスマ同時通訳者が教えるビジネスパーソンの英単語帳』がKindleセール中

僕もこれまで何度もおすすめしてきた関谷英里子『カリスマ同時通訳者が教える ビジネスパーソンの英単語帳

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑