*

多才で異能の人・任天堂岩田聡の言葉

公開日: : 最終更新日:2017/07/03 ニュース, ビジネス・経営者

任天堂の岩田聡社長が亡くなったという突然のニュース。ゲーム業界の第一人者であっただけに、国内外でも大きく報じられている。

  • 任天堂を率いた岩田聡、55歳の死(WIRED.JP
  • 岩田聡さん死去、海外メディアが報道「素晴らしい才能を任天堂は失った」(Huffington Post

 

子供時代、僕にとってのテレビゲームとは任天堂であり、任天堂とはスーパーファミコンであった。それ以前のファミコンは親に買ってもらえず、それ以降のプレステ等には全くはまらず、だからこそゲームにどっぷりとのめり込んだあの数年間は、スーパーファミコンで一色であったことを今も懐かしく思い出す。

 

nintendo

Photo by Daniel

 

その後はプレステにもDSにもWiiにも興味をもったことはなく、せいぜい1-2度遊んだ程度のものだ。そうやってスーパーファミコンを卒業すると同時にゲーム自体から遠ざかっていた僕だが、任天堂への興味はまったく尽きないどころかむしろ強くなっていた。ただその関心対象が、ゲーム機やソフトから、それらを次々と創り出す企業とそんな組織を率いる岩田聡という人間に移ったということだったのだ。

 

ときに寡黙なプログラマー、一方で饒舌な経営者。そんな岩田の人柄や言動を知ったのは、糸井重里の「ほぼ日」が大きなきっかけだった。ご存知の方も多いと思うが、糸井と岩田は名作ゲーム「Mother」以来の盟友であり、岩田は「ほぼ日」の電脳部長という非公式の肩書きまで持っていた。二人が最初に知り合ったシーンは、まさにゲーム開発が頓挫しかけていたときであり、その際の会話はじつに印象的だ。

 

それが契機となり、糸井が「ほぼ日」を創刊した時も、岩田が任天堂社長に就いてからも、二人はずっと親交を深め続けてきた。だからこそ「ほぼ日」には実に多くの岩田との対談が残っており、それらが今「岩田聡さんのコンテンツ。」としてまとめて公開されている。働くということ、仕事の進め方、そしてゲームとコンテンツの未来と、話題は実に豊富で刺激的で、いつまでもこの続きが聞きたいとそう思わせる言葉ばかりだ。

 

また最近では、ドワンゴ・川上量生との対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」の最終回に、“ラスボス”的ゲストとして登場したことも記憶に新しい。この中でも、いかにコンテンツの価値を損ねずユーザに届けるか、そしてネット時代に対応すべきコンテンツのアップデートについて等々、ゲームが好きで好きでたまらない、だからこそその面白さをしっかりと伝えたい、という気持ちが伝わってくる。

 

話し上手の岩田はまた聞き上手でもあった。任天堂公式ウェブサイトで掲載されている名物企画「社長が訊く」は、各種プロジェクトの開発現場でのストーリーや裏話を、社長自らがスタッフに聞くというもの。こうした話の引き出し方にも、岩田の組織運営に対する考え方が反映されているように思う。ゲーマーとして、プログラマーとして、そして経営者として。ときには語り部として、またあるときには聞き役として。岩田はそのときどきの役割を見事に演じ切り、その様はロールプレイングゲームのようだとも言えよう。

 

今後10年20年経っても、僕らはきっと「いま岩田聡が生きていたらどう考えるだろうか」という視点からゲーム業界を眺めることになるだろう。それだけ氏の存在感は大きく、亡くなった今の喪失感は深い。享年55歳という余りにも若すぎる死に対し、ご冥福をお祈りするという言葉さえ用意していなかった僕たちは、もう一度彼の言葉に触れる時間をつくりたいと思う。

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

The 2015 Daily chart Advent calendar by The Economist

Economist 誌が毎年行っている恒例の "Daily chart Advent calenda

記事を読む

捏造と背信の科学者:繰り返される不正と、研究者の責任ある行動

STAP細胞の件で改めて考えさせられたのは、なぜこの一件だけではなく、研究不正・論文捏造がこれほどま

記事を読む

新潟県南魚沼市の銘酒「鶴齢」がJALビジネスクラスの機内食日本酒リストに登場

JALが3月1日から、国際線の機内食にて春の新メニューを提供開始したというニュース。今回のメニュー刷

記事を読む

中学生プロ棋士・藤井聡太四段の新たな歴史的偉業

快進撃を続けていた若干14歳のプロ棋士・藤井聡太四段が、ついに、なんと、歴代連勝記録の単独トップとい

記事を読む

gated community 1

アメリカ地方自治体の分断:富裕層による独立運動

先日のNHKクローズアップ現代を興味深く視た。「“独立”する富裕層 ~アメリカ 深まる社会の分断~」

記事を読む

Kindle電子書籍『クラウドソーシングの衝撃』は、成長著しい市場を概観する希少な業界本

『クラウドソーシングの衝撃』(比嘉・井川著)がKindle電子書籍が大幅に値下げされている。本書は現

記事を読む

確定申告は明日まで|マイナンバー義務化で非常勤講師も手続きを忘れずに

さて、今年の確定申告の手続き期限も明日3/15までと迫ってきたが、必要な方はもう手続き済みましたよね

記事を読む

世界大学ランキング最新版発表|英国オックスフォード大学が初のトップに

"Oxford Tops List of World’s Best Universities" とい

記事を読む

刑務所の医師不足と漫画『ムショ医』

先日のNHK News Web でも報道された通り、現在日本の刑務所における医者不足が極めて深刻な問

記事を読む

playground in a rural area

アメリカと日本と国際養子縁組

先日のTBSの番組「女児はなぜアメリカへ行ったのか?国際養子縁組を考える」を観た。 豊かな社会とは

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

ヒマラヤ山脈でイエティの足跡を発見|雪男は向こうからやって来た

ヒマラヤ山中で伝説の雪男「イエティ」の足跡を発見したと、インド軍が公式

今年の科研費採択者におすすめ|研究関連事務を劇的に効率化するクラウドサービス

さて、先日は今年度の科学研究費助成事業(科研費)の採択者が発表された。

日本に残る最後の秘境へようこそ|東京藝術大学のアートでカオスな毎日

いよいよこの書籍が文庫化されましたね。そう、2016年に出版され大きな

春になり大人になったら辞書を買おう|これがいま日本で最も売れている国語辞典だ

さて今年も4月になり、進級・入学・入社とおめでたいイベントが相次いだ。

ブラックホールを初めて写真撮影|いまこそ宇宙論がおもしろい

さて先日は、人類史上初めてブラックホールの撮影に成功したという記者会見

japanese dictionaries 1
卒業・進級・入学のお祝いに|今も昔も定番の国語辞書をプレゼント

いよいよ春も近い。それはすなわち、卒業シーズンを迎え、そして進級・入学

NHK「最後の講義」物理学者・村山斉を見逃すな

先日のNHK「最後の講義」みうらじゅんが圧倒的に面白かったのは既にお伝

NHK「最後の講義:みうらじゅんの幸福論」が面白すぎた

2/2(土)に放送されたNHK「最後の講義」に登場した、みうらじゅん。

PAGE TOP ↑