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できる研究者の論文生産術:How to Write a Lot

公開日: : 最終更新日:2017/04/08 英語

これまで複数回にわたって紹介してきた、英語ライティングのおすすめテキストたち。古典的名著から新たなスタンダードまで、よい文章とはという一般論を語ったものから、論文の章ごとの書き方を詳しく解説した個別論、そして音やリズムにこだわった特色ある一冊まで、英語で書かれた英語文章法については実に豊富な選択肢があるものだと思う。

 

  1. 英文ライティングここから始める必読テキスト4選
  2. よりモダンでクリアな英作文テキスト3選
  3. アカデミック・ライティングの決定版テキスト
  4. スタイルとフォーマットで学ぶアカデミック・ライティング
  5. 英文ライティングの新定番テキスト “The Sense of Style”

 

 

一方で、その翻訳となると一気に選択肢が狭くなってしまう。そもそも英語文章術に関する内容を日本語で表現することが難しいということもあれば、翻訳書に対する需要がそれほど大きくないという事情もあるのだろうか。いずれにしろ、上記で紹介した英語論文の書き方レファレンスのうち、日本語訳が出ているものはごく一部に限られる。

 

さてそのような中、これはユニークな一冊というおすすめテキストが新たに翻訳されて登場した。それがこの『できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか』である。

 

 

原書タイトルは “How to Write a Lot” であり、その副題 “A Practical Guide to Productive Academic Writing” が示唆するように、英語論文の書き方について実に具体的で実践的なアドバイスを提供してくれる、とても役立つ一冊なのだ。

 

 

これは以前に、「英語ライティングおすすめ参考書」の中でもリストアップして推薦した一冊であり、著者は、論文が書けないのは書かないからであり、書かないのはセルフマネジメントが出来ていないからだと読者を叱咤する。とくに本書では、「いかに書くか」ではなく、「いかに書き続けるか」について焦点が当てられている。書くトピックがないとか、書く時間がないとか、(自分への)イイワケはいくらでもできる。しかし質の高い論文を書きたければ、一定量(a lot)を書くしか方法はなく、だからこそライティング・マネジメントが欠かせない。目標をどう設定し、進捗をどう管理するかという実務的な話と、writing と editing を切り分けて考えるといった how to も含め、カジュアルな書きぶりだが、実に大事なことをさらりと述べている。

 

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”Stipula fountain pen” by Power_of_Words_by_Antonio_Litterio.jpg: Antonio Litterioderivative work: InverseHypercubePower_of_Words_by_Antonio_Litterio.jpg. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

 

 

本書を読んで連想するのが村上春樹の小説執筆スタイルだろう。彼は決まった時間に起き、決まった時間執筆し、決まった時間に寝るという極めて規則正しい生活を長年続けている。そこには編集者と夜な夜な飲み明かす姿も、アイデアが降ってきたら一気に書き上げるという姿もない。そうではなく、調子が良い日も悪い日も、決まったように机に向かい、決まった量を書く。調子がよくても書き過ぎない、一方で調子が悪くても一定量は絶対に書く。そうやって書き続けてきたからこそ、今の村上春樹と数々の名作が産み落とされたのだと思う。

 

本書 “How to Write a Lot” は、まさにこうした執筆スタイルを論文生産にも導入すべきだと主張しているのである。研究者にとっては、自分の研究スタイルを振り返り、そのマネジメントを改善する契機となる、実に示唆に富んだ内容と言えるだろう。「本ブログでのベストセラー」にも上位ランクインしている本書が翻訳されたちょうどこのタイミングで、改めておすすめしたい名著なのである。

 

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