囲碁タイトル7冠同時制覇|井山裕太と師匠・石井邦生が創りだした盤上の宇宙・独創の一手
すごいな、井山裕太。大きなニュースとなったことで、囲碁ファン以外にも伝わったであろう、7冠同時制覇へ返り咲き。これは囲碁界ではもちろん史上初、将棋界を含めても初めての、前人未到の快挙なのである。それをこの若き天才棋士がなしとげたのだ、すばらしい偉業だ。
- 井山棋聖が史上初2度目の7冠(Nifty ニュース)
- 「まだ、信じられない」 井山裕太七冠の一問一答(産経ニュース)
- 井山裕太、進化の源泉は「世界一」の志 七冠返り咲き(朝日新聞)
ちなみに以下は井山裕太が最初に7冠を達成した時に書いたエントリだが、そこでも触れたように、井山の師匠・石井邦生の育て方がまた素晴らしいのである。この師匠の下で、伸び伸びと育った井山だからこそ、いままさに盤上で創造的な一手を指し続けられるのである。
ついに、ついに実現してしまった、囲碁界初のタイトル全7冠同時制覇!
(毎日新聞)囲碁のタイトル6冠を保持する井山裕太本因坊(26)=ほかに棋聖、名人、王座、天元、碁聖=が20日、十段を奪取し、囲碁界では初めて全7大タイトルの同時制覇を達成した。
1996年に当時25歳の羽生善治が将棋界初のタイトル7冠独占を達成してからちょうど20年に当たる今年、これまた弱冠26歳という若き囲碁棋士が成し遂げた前人未到の偉業。本当に素晴らしい。
先日はグーグルの人工知能(AI)「アルファ碁」の強さが大きくクローズアップされたが、それでもなお今回の井山裕太のこの快挙には驚きそして感動せざるを得ない。そして囲碁を愛する人、これから初める人がもっと増えることを期待したい。
photo credit: Ken Reppart via photopin cc
そして、今回の井山裕太の偉業とともに記憶して頂きたいのが、彼の師匠である石井邦生の存在である。7冠達成に際して祝福のコメントを贈っているが、この師匠なくしては今の井山もなかったであろう。
1994年、5歳の井山と会った。とても小さい子で、碁盤の前に立ち上がって打っていた。座ると盤の端まで手が届かないのだ。目にも止まらぬ速さで打っていくのが強烈な印象に残っているが、難しい局面になると手を止め、考える。盤上の感性は最初から豊かだった。
弟子を取るつもりはなかったが、井山の才能にほれた。出会った時、私は既に55歳。タイトルは諦めてしまっていたが、弟子に夢を託そうと思った。
以前に「いま囲碁がとんでもなく面白い:弱冠24歳の6冠井山裕太」でも紹介したように、石井による井山育成は、じつにユニークで型破りなものだった。それは囲碁という伝統的な世界にあっては従来では考えられないものばかりだった。だが、それがよかった。当時まだ普及していないインターネット上での囲碁対局を通じ、師匠のコワイ顔を見ることなく(笑)、「子供らしく元気な碁、恐れを知らない大胆な一手」そういったものをどんどん奨励していったのである。詳しくは石井邦生の著書『わが天才棋士・井山裕太』をご覧頂きたいが、これを読めばこの師匠にしてこの弟子あり、というのがよく分かることだろう。
そんな井山に迫ったドキュメンタリーが、NHKプロフェッショナル「盤上の宇宙、独創の一手。囲碁棋士・井山裕太」だった。これも実におもしろく視聴したのを思い出すが、ぜひともこの7冠制覇というタイミングで再放送されることを期待したい。(追記:その後、4/25 (月) に再放送されることが決定。Good job, NHK! 前回見逃した方、どうぞお忘れなく。)

最後に、井山より20年早く、将棋界においてタイトル7冠独占を成し遂げた羽生善治も、今回の井山に次のような祝辞をおくっている(Yahooニュース)。
おめでとうございます。1年通じて気力、体力、精神力を維持し続けての偉業に心から敬意を表します。自分が成し遂げた時よりもはるかに競争が激しくなっている現代での達成に、感嘆と井山さんであれば当然と感じました。そして、まだまだ余力も進歩の余地もたくさんある今後の活躍も期待しています。囲碁の大きな歴史を現在進行形で作られている姿に同じ棋士として誇りに思っています
その彼が、その偉業達成に向かう当時の気持ちを語り、そして7冠独占の前後でどう将棋に対する考え方が変わっていったのか、さらには歳を重ねたいま将棋に対して思うこと。そうした羽生善治のこれまでの歴史とこれからを知るには、『羽生善治 戦う頭脳』が最適の一冊となるだろう。これもまた実に興味深く読んだものとして、ぜひおすすめしたい内容である。
15歳でプロ棋士になってから30年、将棋界のトップランナーとして走りつづける天才・羽生善治。その卓越した思考力、勝負力、発想力、人間力、持続力はどこから湧き出るのか―。勝負と格闘してきた日常より生まれた彼の言葉は、将棋の枠だけには収まりきらない深い含蓄に溢れている。ビジネスにも通じる発想のヒントが満載です。
Amazon Campaign
関連記事
-
-
「ヘンな論文」を書き続ける動機と勇気
高学歴の芸人と言えば? という問いに、ロザンの宇治原と応えるのではあまりにもフツー過ぎる。もう少しツ
-
-
若き冒険家のアメリカ|植村直己『青春を山に賭けて』
NHK-BS で放送されている「ザ・プロファイラー|夢と野望の人生」をご覧になっているだろうか?以前
-
-
申請者必携のハンドブック『科研費獲得の方法とコツ』に最新第4版が登場|採択率を上げる書き方
今年もまた科学研究費助成事業(科研費)の締切が近づいてきた。多くの研究者が申請するこの科研費だが、も
-
-
新中学生・高校生から新社会人にまでおすすめする国語辞典4選|辞書それぞれの個性を理解して選ぼう
中学生・高校生から新社会人まで必須アイテムとしての国語辞典 春から新たに中学校・高校・大学に入学す
-
-
学校で教えて欲しいおすすめ国語辞典の選び方・使い方・遊び方:複数の辞書を比較して使い分けよう
ベストセラーかつロングセラーの3冊の定番国語辞典 数多く存在する国語辞典の中から最初の一冊を選ぶな
-
-
アメリカ連邦最高裁、49年前の判断を覆す|今こそ憲法で読むアメリカ史
すでに日本においてもニュースや新聞を始めとする各種メディアで報道・解説されている通り、アメリカ連邦最
-
-
若い読者のための経済学史と哲学史
米国イェール大学出版局の "A Little History" は、歴史や文学そして経済学といった学
-
-
いま国語辞典がおもしろい|10年ぶりの大幅改訂による最新版あいつぐ
さて、「2020年、本ブログで最も売れたこの1冊」でも紹介したように、昨年の一年間でもっとも売れたの
-
-
「幸せの国」ブータン王国を築いた国王のリーダーシップとマネジメント
「眞子さま、ブータンから帰国 」(日経新聞)等と各種ニュースで報道されたように、日本とブータンとの友
-
-
都立浅草高校国語教師・神林先生が愛してやまない飲み屋と呑み助と大将と女将
自宅や実家での新年気分も終わり、今週末あたりから町の飲み屋に繰り出すか、という人も多いかも知れない。



