この国語辞典がおもしろい|比べて愉しい辞書のディープな読み方・遊び方
公開日:
:
オススメ書籍
これはこれは大変に興味深い本が出版されていましたね。その名も『比べて愉しい 国語辞書ディープな読み方』である。岩波、三省堂、角川などなど、各出版社から出されるありとあらゆる国語辞典を細かく比較検討し、それぞれの個性を引出そうという本書、これが面白くないわけないのである。
それにしても、比較内容が実に細かい。例えば以下の写真にあるように、それぞれの辞書で新語が載っているか、外来語は、語釈は、等々と、様々な視点から斬り込み、どの辞書がどのような点で特徴的なのかをあぶりだす。辞書はどれも同じでしょ、なんて思っていた人にこそ読んで欲しい一冊であり、これがあれば間違いなく、それぞれの国語辞典の狙いや特色が手に取るように分かることだろう。

なるべく公平な視点で評価したいという、単なる辞書ファンと称する著者だからこそ、とくに推しの辞書を挙げることなく、比較分析に徹底しようという姿勢だ。それでも、やはり三省堂の明解国語辞典に対する評価は手堅い。そりゃそうだ、なにしろいま日本で一番売れている辞書であり、しかもその語釈がちょっぴりユニークで面白さに溢れていたりするのだから。よく注目されるのは、「恋愛」や「公僕」といった言葉の解説だ。う~ん、確かにクセが効いてるよね!ちなみに、こうした言葉の解釈には時代背景も色濃く反映されるため、例えば恋愛も過去には男女間の感情という表現が一般的であったところ、いまは同性愛も包括した語釈に変化してきている。
もうひとつ、本書で推しを感じた辞書が、明鏡国語辞典である。これも分かるわ~、僕自身もこれはイチオシの、日本語の誤用解説に強みのある一冊なのだ。新明解も明鏡も、それぞれ約10年ぶりの大幅改訂を終え、最新の現代事情も反映させつつ編纂された、現時点におけるベスト・オブ・ベストの国語辞典といってよいだろう。本来であれば2冊とも揃え、それぞれの違いを楽しんでみて欲しいところだが、どちらか一冊ということであれば、本当に、どちらを選んでも間違いない、おすすめの定番辞書なのである。
それにしても、こんなにマニアックな国語辞典解説本が出版されるなんて、あの名著サンキュータツオ『学校では教えてくれない!国語辞典の遊び方』以来ではなかろうか。こちらもめちゃくちゃおすすめの一冊なので、ぜひとも合わせて読んで欲しいところだ。
ちなみに、僕個人のおすすめ国語辞典は以下に解説したとおりだ。ぜひこちらもご参考ください。
- 国語辞典を選ぶならこの4冊がおすすめ:現代語に強い三省堂・豊かな語釈の新明解・安定と安心の岩波・誤用を正す明鏡
- 新中学生・高校生から新社会人にまでおすすめする国語辞典4選|辞書それぞれの個性を理解して選ぼう
これら一連のエントリでお伝えしたかったメッセージとは、国語辞典にはそれぞれに個性があり、自分に最適なものを選ぼう、ということだ。使い方や個人的好みで選べば十分だと思うが、とくにおすすめの4冊の特長をひとことでまとめると次のようになる。ぜひどうぞ。
- 堅実でオーソドックスな、安定感と安心感が売りの『岩波国語辞典』
- 言葉の意味を深く考えさせる、人気ナンバーワンの『新明解国語辞典』
- 現代語の収録に優れ、新しい用語を知るのに最適な『三省堂国語辞典』
- 自分の日本語の誤用や疑問に気づき、正すために必要な『明鏡国語辞典』
Amazon Campaign
関連記事
-
-
欧州サッカー「データ革命」|スポーツを科学する最前線ドイツからの現地レポート
先日書いた「錦織圭の全豪オープンテニスをデータ観戦しながら応援しよう|IBMのSLAMTRACKER
-
-
ニッポンの国宝と景観を守る:外国人だけが知っている美しい日本
昨日書いた「キューバに行くなら今が最後のチャンス」の中で、この国の文化と歴史が色濃く残っているうちに
-
-
将棋の子|奨励会年齢制限と脱サラ棋士のプロ編入という奇跡の実話
映画『泣き虫しょったんの奇跡』が公開されている。まだ観ていないのだが、もちろんこの実話はとてつもなく
-
-
論文捏造はなぜ繰り返されるのか?科学者の楽園と、背信の科学者たち
先週は、小保方晴子氏の論文「学位取り消しに当たらず」(NHK)との報道が新たな議論を引き起こしている
-
-
組織を動かす実行力|結果を出す仕組みの作り方
新刊『実行力』を興味深く読んだ。本書は、ご存知橋下徹が、これまで大阪府知事として、そして大阪市長とし
-
-
東大医学部合格者の6割が通う進学塾|受験エリートと塾歴社会
先日、雑誌AERAの特集を読んだ。「東大理III合格者の6割が所属 受験エリートの“秘密結社”」とい
-
-
2020年、本ブログで最も売れたこの1冊
さて、2020年、本ブログ経由でもっとも購入数が多かったのは、なんと、なんと、新明解国語辞典でした!
-
-
2016年のベストセラー書籍トップ5冊【国語辞典編】
先日まとめた「2016年のベストセラー書籍トップ10冊【一般書籍】」および【英語編】に続き、本ブログ
-
-
米国人一家と英国一家が美味しい日本を食べ尽くす
ちょっぴり巷で評判の『米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす』を読んでみたら、これが思いの外おもしろか
-
-
国語辞典ベストセラーランキングに見る人気辞書|中学生以上は新明解、小学生はドラえもんかチャレンジか
国語辞典というのは大変におもしろい。実に個性豊かであるにも関わらず、その特徴は必ずしもきちんと伝わっ
