ワールドカップで大番狂わせを狙え|サッカー監督の世界級チームマネジメントの極意
2022年という年は、やはりサッカー・ワールドカップでの日本代表の活躍が強烈な印象として残っている人も多いことだろう。まだついこの間のことであり、その記憶は鮮明でいまも余韻に浸ることもあるはずだ。とくに、グループリーグ初戦でのドイツに対する逆転勝ち、そして第2戦コスタリカに負けて絶体絶命のなか、最終戦スペインに対してもまたもや逆転勝ち。この大番狂わせ(ジャイアント・キリング)をみせてくれた日本代表に、そしてそのチームを率いた森保監督に、日本中が熱狂したわけだ。
まさにその「ジャイアント・キリング」という名前をタイトルにした漫画が、いま絶賛連載中で、これがめちゃくちゃ面白いのである。いままでにない、サッカー監督を主人公に据えた設定、弱小チームだからこそ選手ひとりひとりの個性を活かしそれをつないで組織力を強化する、そして何よりも中長期的な視点に立った戦略的な施策の数々と、サッカー漫画の常識をすべて覆すかのような見事なストーリー展開なのである。
達海猛35歳、職業サッカー監督。今季より弱小プロサッカークラブ『ETU イースト・ トウキョウ・ユナイテッド』の監督に就任する。現役時代も監督になってからも、好物は「番狂わせの大物喰い=ジャイアント・キリング」!
本当にいい監督はゲームを面白くしてくれる! 『U-31』原作者と俊英がタッグを組んだ、これがフットボール漫画の新スタンダード!!達海猛、35歳。イングランド帰りのサッカー監督。好物は大物喰いの大番狂わせ=GIANT KILLING!
このように、与えられた戦力でたたかわねばならないというのは、もちろんサッカーに限った話ではない。これは、すべてのチームスポーツに言えることだろう。例えば今年の箱根駅伝を見ても分かるように、それぞれの大学は今いる選手のなかから誰をどの区間に配置するのか、勝負の山登りや山下りをどう攻略するかと、戦略を練りに練っているのだ。
そんな監督目線で考える組織論とチームマネジメントというのは、もちろん会社やビジネスにも応用可能なものだ。それを見事に描いたのが本書『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則――『ジャイアントキリング』の流儀』であり、これが実に面白かったのだ。
僕らはみな、何らかの組織に属し、様々な形でその運営に関わっている。新入社員が戦力にならないとか、老害の邪魔がはいるとか、そんな愚痴や弱音がすぐ出てきてしまいそうだが、ちょっと待て。誰だって与えられた条件のもとで、ベストパフォーマンスを出すしかないのだ。若手をどう即戦力に仕立て上げるのか、それこそがあなたの仕事なのではないですか?ベテランからも知恵を引出すのも、あなたの責務なんじゃないですか? そんな痛烈なメッセージが込められた本書は、漫画そのものを読んでいなくとも十分に胸に突き刺さる。
ワールドカップで見事な戦いを見せた日本代表と森保監督、そして傑作漫画『ジャイアント・キリング』。僕らはいま、監督の立場から組織づくりとチームマネジメントを考える、格好の素材に恵まれたと言えるだろう。ぜひ自分のいまのポジションに置き換えながら読むと、本書の味わいが一段と増してくる。大変刺激的な一冊として、すべてのチームプレイヤーに強く一読をおすすめする。
チームには「成長法則」がある!
「70点のグループ」が、「赤点」を経て、「120点以上のチーム」に変身する――。
カリスマ的リーダーもエース社員も不要!のべ3万社の経営をサポートしてきた「チームづくり」のプロが語る、今いるメンバーの化学変化で史上最高の成果を生み出す「成長法則」。
伸びる組織には「混乱」がともなう。混乱のない組織に成長なし――。
ロールモデルは達海猛。目指すは「生き物のようなチーム」。指示待ちだったメンバーたちが、自ら考え、行動し始める!
「モーニング」掲載の大人気マンガをケーススタディにした、ビジネスにもスポーツにも活かせる「超画期的」組織論登場!
Amazon Campaign
関連記事
-
-
箱根駅伝・青山学院の圧勝で見せつけた原晋監督のマネジメント能力
2022年の箱根駅伝も面白かったですね! レース自体は青山学院の記録づくめの圧勝という形で終わったた
-
-
今年の入学・進級祝いには、三省堂国語辞典第8版がおすすすめ
今年ももう3月、中学・高校・大学入試も結果が出た人も多いだろうし、これから最後のラストスパートという
-
-
林業男子と林業女子:Wood Jobs!
「少年よ、大木を抱け。WOOD JOB!」で書いたように、『舟を編む』の著者三浦しをんによる『神去な
-
-
[おすすめ数学テキスト]政治学・社会学のための数学基礎講座
経済学Ph.D.課程の多くでは、夏の間に新入生向け の数学基礎講座(通称 Math camp)を開講
-
-
NHK探検バクモン「激闘!将棋会館」が面白かった|人工知能時代の天才棋士たち
先日NHKで放送された「探検バクモン」をご覧になっただろうか?「激闘!将棋会館」と題された今回は、東
-
-
アカデミアへの転身と、アカデミアからの転身
日本テレビの桝太一アナウンサーが、16年間在籍した同局を今年3月で退社し、4月からは同志社大学ハリス
-
-
科学と度量衡の歴史|キログラムの定義が130年ぶりに変更
さて、先日のニュースでも大きく報道された通り、来年から「キログラム」の定義が変更されることとなった。
-
-
都立浅草高校国語教師・神林先生が愛してやまない飲み屋と呑み助と大将と女将
自宅や実家での新年気分も終わり、今週末あたりから町の飲み屋に繰り出すか、という人も多いかも知れない。
-
-
数学者たちの異常な日常|世にも美しき最後の秘境
以前に「あたなの知らない、世にも美しき数学者たちの日常」でも紹介した、二宮敦人著『世にも美しき数学者
-
-
ハートマウンテン日系人強制収容所の、貴重なプライベート写真集
7月に出版されたエッセイ写真集『コダクロームフィルムで見る ハートマウンテン日系人強制収容所』を読ん
