あなたの知らない、世にも美しき数学者たちの日常
「日本に残る最後の秘境へようこそ|東京藝術大学のアートでカオスな毎日」でおすすめした、二宮敦人の『最後の秘境 東京藝大』。実に刺激的で濃ゆい内容だったのはお伝えのとおりだ。
やはり彼らは、只者ではなかった。入試倍率は東大のなんと約 3 倍。しかし卒業後は行方不明者多発との噂も流れる東京藝術大学。楽器のせいで体が歪んで一人前という器楽科のある音楽学部、四十時間ぶっ続けで絵を描いて幸せという日本画科のある美術学部。各学部学科生たちへのインタビューから見えてくるのはカオスか、桃源郷か? 天才たちの日常に迫る、前人未到、抱腹絶倒の藝大探訪記。
藝大という日本最後の秘境で芸術家の卵たちの生態に迫った二宮が、次に題材として選んだのが、なんと数学者たちだった。
「リーマン予想」「ホッジ予想」……。前世紀から長年解かれていない問題を解くことに、人生を賭ける人たちがいる。そして、何年も解けない問題を”作る”ことに夢中になる人たちがいる。そして、数式が”文章”のように見える人たちがいる。数学者だ。
「紙とペンさえあれば、何時間でも数式を書いて過ごせる」
「楽しみは、“写経”のかわりに『写数式』」
「数学を知ることは人生を知ること」
「問題と一緒に“暮らす”ことから始まる」
「味噌汁も数学のテーマになる」
「芸術に近いかもしれない」
「数学は、宇宙がなくなっても残るもの」
「数式は、世界共通の言語」
「歩く姿を後ろから見ても、数学者だとわかる」
「心は数学だ」
「エレガントな解答を求められる」
「人工知能に数学はできない」
「音楽と数学はつながっている」
「数学を絵にしてみた」
「今の数学は冬景色だ」
「中学生のときに、数学に情緒があると知った」類まれなる優秀な頭脳を持ちながら、時にへんてこ、時に哲学的、時に甘美な名言を次々に繰り出す数学の探究者たち――。
黒川信重先生、加藤文元先生、千葉逸人先生、津田一郎先生、渕野昌先生、阿原一志先生、高瀬正仁先生など日本を代表する数学者のほか、数学教室の先生、お笑い芸人、天才中学生まで――7人の数学者と、4人の数学マニアを通して、その未知なる世界に触れる!
ベストセラー『最後の秘境 東京藝大――天才たちのカオスな日常』の著者が、次に注目した「天才」たちの本当の姿とは。あなたの苦手な数学の、あなたの知らない甘美な世界へようこそ。
この本、これまた大変に面白く読んだのは、僕が個人的にここで取り上げられた先生の講義を直接受けたことがある、というだけではもちろんない。数学者の知り合いなどいない、というごくごく普通の人こそ、そんな彼らの生態と思考を知る格好の機会になるはずだ。数学者というのは歴史に名を残すことが多く、「ピタゴラスの定理」や「フェルマーの定理」など、なんとなく記憶している名前を誰しもいくつか挙げることができるのではないだろうか。
しかし、歴史上の人物ではなく、いままさに現役の数学者の名前を挙げられるひとは決して多くはない。だからこそ本書は、これまでの長い長い数学の旅の最先端にいる彼らに迫ることで、この壮大な人類史を俯瞰しようというものでもあるのだ。といっても、本書を読めば分かるように、どちらかと言えば、前著『藝大』の秘密に迫ったのと同じ著者の好奇心によって、今度は『数学者』の謎を解き明かそうというわくわくする旅であるのだが。
いずれにしろ本書は、これまでの類書とは大きく異なる、実にユニークなアプローチで書き上げた数学者についての一冊なのである。他の歴史書と合わせて読むと、いっそう興味が沸くことだろう。そんな本書は、現在の【50%ポイント還元】幻冬舎フェア によって、Amazon Kindle版なら半額還元という大特価となっているので、どうぞこの機会をお見逃しなく。
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