*

美術大学青春グラフィティーと漫画ブルーピリオド

先日放送されたNHKの番組「ドキュメント72時間」をご覧になっただろうか?個人的に好きな番組のひとつで、前回は「美術大学青春グラフィティー」と題して、武蔵野美術大学の学園祭を密着取材した3日間だった。

美大の名門・武蔵野美術大学。この秋、年に一度の「芸術祭」が3年ぶりに観客を入れて開かれた。絵画や彫刻、工芸など、創作活動に打ち込む学生たち。仲間を募って巨大なオブジェを作るグループ。廃部の危機を乗り越えたいという人形劇サークル。将来に不安を覚えながらも、ひたすら絵画に向き合う学生もいる。何をそこまで作ろうとしているのか。芸術祭が始まるまでの3日間、アートに情熱を注ぐ若者たちの青春グラフィティー。

 

同大学でも3年ぶりとなるキャンパスでの芸術祭開催に、学生たちが大いに張り切り盛り上がった。確かに、作品づくりを手がける美大においては、すべてをオンラインで補完することはできない。やはり対面で、どうしても手作りで、という現場の感触が伝わる、よいドキュメントだった。

 

そんな番組のなかで、ひときわ注目された登場人物が、周りから「リーダー」と呼ばれるひとりの男子学生だった。彼の呼びかけに応じて30人が集まり、芸術祭に掲げる巨大オブジェが見事に完成した。そんな彼のリーダーシップは、周りから2歳年上であることからくるのかも知れないし、もしくは2年間浪人したものの第一希望の藝大には結局受験で突破することが出来なかった、という挫折からくるのかも知れない。インタビューの中からは伺い知れない彼の心情ではあるが、その受験競争がいかに特殊なものかを、少なくともいまの僕らなら理解できる。

 

なぜなら、今まで全く未知の世界であった藝大受検という特殊な環境を舞台として設定し、見事に漫画化したのがこの傑作『ブルーピリオド』だからだ。著者の山口つばさ自らの実体験にもとづく描写はリアルであり、アーティストとして自分の名前で勝負することなどほんの一握りの人にしか許されないなか、ある者は漫画という別世界を切り拓き、またある者は、藝大以外の美大へと進学する。そうした18歳から20歳にかけての、若さと創作意欲にあふれたNHKのドキュメント番組であり、この漫画なんだよなと思いながら、これから最終盤を迎える今年の受験競争を思わざるを得ないのだ。

 

成績優秀かつスクールカースト上位の充実した毎日を送りつつ、どこか空虚な焦燥感を感じて生きる高校生・矢口八虎(やぐち やとら)は、ある日、一枚の絵に心奪われる。その衝撃は八虎を駆り立て、美しくも厳しい美術の世界へ身を投じていく。美術のノウハウうんちく満載、美大を目指して青春を燃やすスポ根受験物語、八虎と仲間たちは「好きなこと」を支えに未来を目指す!

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

WOWOW連続ドラマの新作『翳りゆく夏』、本日スタート

これまで何度もオススメしてきた、WOWOWの連続ドラマWシリーズ。その待望の新作が本日からスタートす

記事を読む

メジャーリーグ新時代|アストロズ優勝が示す鮮やか過ぎるデータ革命

先日 NHK-BS で放送された「アストロズ革命~MLBデータ新時代~」がめちゃくちゃ面白かったのだ

記事を読む

NHKの数学ミステリー白熱教室がおもしろい|数学の大統一に挑む

大ヒットシリーズとなっているNHKの「白熱教室」シリーズ。その最新作が先週から始まった「数学ミステリ

記事を読む

ジョジョの奇妙な原画展|荒木飛呂彦の冒険

この夏最大の注目とも言えるべきイベント、「荒木飛呂彦原画展JOJO-冒険の波紋」がいよいよ始まるぞオ

記事を読む

WOWOWの人気連続ドラマWシリーズ、4月のもう一つの新作「スケープゴート」本日スタート

さて、WOWOWで今月放送開始されるもう一つの連続ドラマWシリーズが、こちらの「スケープゴート」だ。

記事を読む

WOWOWはスポーツ生中継よりも、オリジナル・ドラマが魅力のコンテンツだと思う

WOWOWの加入実績が好調という先日の日経新聞記事。加入増の原動力となっているのが、スポーツの生中継

記事を読む

これは経費で落ちません|経理部が見つめる人間模様

NHKで現在放送中のドラマ「これは経費で落ちません!」が面白い。多部未華子が演じるアラサー独身女子・

記事を読む

上野公園に3時間の大行列|伊藤若冲展に行ってきた

「生誕300年記念の伊藤若冲展に行こう」と書いてから早一ヶ月。今回の若冲展もいよいよ明日5/24(火

記事を読む

WOWOW連続ドラマのもうひとつの新作『贖罪の奏鳴曲』、本日スタート

さて、WOWOW「連続ドラマW」シリーズの最新作『翳りゆく夏』が先週放送開始となったばかりだというの

記事を読む

伊藤若冲生誕300年|今年またこの天才絵師に注目が集まる

昨年末に「伊藤若冲と京の美術」展を見に行ったばかりだというのに、今度は東京ミッドタウンのサントリー美

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑