フェルメールになりすまし、ナチスをだました男|20世紀最大の贋作事件
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最終更新日:2020/04/04
アート, オススメ番組・映画・ドラマ
4/7にNHK-BSプレミアムで再放送予定の「ダークサイドミステリー」は必見である。アート好きにとってはご存知の話しかも知れないが、これを機にアートに興味を持つ人もぐっと増えるだろう、そんな美術界を震撼させた、ウソのような本当の話なのである。
ヒトラー率いるナチスドイツの最高幹部が15億円の名画サギに!?世紀のだましを実現したのは、闇の天才贋作(がんさく)師メーヘレン。大人気画家フェルメール幻の作品への金持ちや権力者の欲望を狙いニセ名画を量産した末に、驚くべき数奇な運命で人生を翻弄された伝説の画家だ。タダ同然の絵を数百万倍の名画に仕立てただましテクニックとは?高名な美術研究者までだまされた、意外な落とし穴とは?芸術と金と欲望の闇に迫る!
美術作品をめぐるアヤシイ話は古今東西あまたと存在する。それは漫画の世界でも同様で、例えば往年の名作『キャッツ・アイ』から、近年の傑作『ギャラリーフェイク』まで、とても面白い作品が数多く生み出されてきた。そんないちおしの『ギャラリーフェイク』は、期間限定でKindle無料でお試しキャンペーンを実施中なので、ぜひとも最初の5巻までを試し読みしてみて欲しい。とても面白いんだから!
ところが、である。現実世界の方が、漫画の虚構よりもさらに何倍も数段もエキサイティングだと言ったら信じられるだろうか? それがその通りとなっているのが、世界のアート市場なのである。有名作家の唯一無二の作品が、信じられないほどの高値で取引される世界、だからこそ偽物がはびこり、魑魅魍魎が跋扈する世界でもあるのだ。そんなダークな美術史の中でも燦然と輝く、という言い方がよいのか疑問だが、強烈な爪痕を残したのが、今回放送される「メーヘレン事件」なのである。
NHKでの放送もぜひご覧頂きたいが、それとともにおすすめしたいのが、こちらの書籍『フェルメールになれなかった男』だ。このフェルメール事件をもとにした、傑作アート・ノンフィクションであり、以前に書いたエントリ「アートは小説よりも奇なり:盗作と贋作の歴史、美術ノンフィクションが面白い」でも紹介し、イチオシした一作である。
秀れた才能を持ち、将来を嘱望された画家は、なぜ贋作作りに手を染めることになったのか。第二次大戦終結直後のオランダで、ナチの元帥ゲーリング所蔵の「フェルメールの絵画」に端を発して明らかとなった一大スキャンダル事件に取材。高名な鑑定家や資産家たちをもまんまと欺いた世紀の贋作事件を通して、美術界の欲望と闇を照らし出し、名画に翻弄される人々の姿を描き出した渾身作。
ちなみに、フェルメールという作家は、きわめて少数の作品しか世に送り出さなかったため、その希少性から値段が高騰しやすい。くわえて、じつはフェルメールはもう一枚作品を残していた、というストーリーを組み立てやすいということもあり、犯罪集団からは格好のターゲットとなるのである。そんなフェルメールを巡る数々の事件をまとめたのが、こちらのエントリ「盗作と贋作のフェルメール|美術作品にまつわる犯罪史」だ。
アートの世界というのは、光り輝き、人々の憧れも大きい。だからこそ、その背景でどす黒い欲望がうずまき、闇は暗く深い。そんなまさに人間ドラマの結晶だからこそ、僕らは今も綺麗に着飾った美術史の裏にある、もう一つの真実から目が離せないのだろう。そんな思いをさらに強くさせてくれるだろう、4/7のNHKの番組、そしてそれにまつわる関連書にもぜひ目を通してみて欲しい。そこには人々を惹きつけて止まない、誰もがのぞいてみたくなる深淵があるのだ。
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