錦織の全仏オープンテニス敗戦を、SlamTracker のデータで振り返る
先日は「グランドスラム初優勝を目指す錦織圭の全仏オープンテニスを、SlamTracker でデータ分析しながら応援しよう」と書いたように、僕も深夜の対ツォンガ戦フルセットマッチをテレビ観戦した。それにしてもツォンガの体格のよさ、ものすごいね。まるでラグビー選手のような風貌とガタイではないか。ご存知のように残念ながら錦織は敗れてしまったが、ツォンガの好調さは特筆に値する。次はフェデラーを破ったワウリンカと対戦するわけだが、これまた楽しみな準決勝の顔合わせとなったと言えるだろう。
さて、先日も紹介したIBMの SlamTracker、使ってみましたか?それではもう一度、一昨日の錦織戦を振り返る意味でも、試合結果のデータを眺めてみよう。まずは、画面を開いたら下図の赤丸の部分 “MATCH STATISTICS” をクリック。そうすると表示されるのが、まずは全体の試合結果。錦織のエースが5本に対してツォンガは10本。ファーストサーブの確率は(意外にも)66%の錦織が、61%のツォンガを上回っている。一方で錦織のダブルウォールの多さが目立つ、といったように、ざっと概観した試合結果がデータで表されるのがこのページというわけだ。
続いて今度はセット別の結果も見てみよう。テレビ観戦していた人はご存知のように、第1第2セットの錦織の調子の悪さは明らかで、試合後「自分を見失っていた」とまで述べたほどだった。それがデータにも現れているのがこのページである。ファーストサーブでもセカンドサーブでもポイントが取れないだけでなく、世界最高レベルとまで賞賛されるリターンにおいても、相手のパフォーマンスを大幅に下回っている。錦織自身の敗戦の弁の通り「ポイントを取りに行こうと急いだ」結果、しかしツォンガの好調さもあり狙ったようにはポイントが取れず、それでペースを崩し自分を見失っていったということなのだろう。以下のデータにも現れているように、第3セット以降は立て直してきただけに、やはり試合の出だしでつまづいたことが改めて悔やまれる。
次に見ておきたいのが、この SlamTracker の目玉機能でもある “KEYS TO THE MATCH” の項目。下の画面の赤丸の部分をクリック。そうすると表示されるのが、各選手それぞれの勝利要件である。例えば、錦織がツォンガに勝つためには、「ファーストサーブで73%以上のポイントを取る」ことが鍵だとこのシステムは算出しているわけである。その目標数値と錦織の実績値を比較してみると、これを満たしたのは錦織が獲った第4セットのみであり、それ以外のセットは全てこの目標を下回っている。
もう一つの鍵と考えられていたのが「相手のファーストサーブの際、28%以上のポイントを取る」ということ。普段の錦織ならば達成できていたかも知れないこの目標数値に対しては、先日の試合では第4セットのみで達成しており、他のセットでは大幅に下回る数値となった。これでは勝てるはずがない。
とはいえ、これらの「勝利のための鍵」は、あくまでも現システムが過去のデータから導出するものであり、その信頼性にはもうすこし改善が必要かも知れない。というのは、「相手のファーストサーブの際、28%以上のポイントを取る」という目標に対し、第3セットの錦織はこれを大きく下回る実績値でしかなかったものの、このセットをものにしているわけである。というように、他の要素との組み合わせもあるわけだから、これが絶対必要というわけではまったくない。という意味でも、一つの参考指標として、そしてそれと同時に、このシステムが今後どんな発展を見せてくれるのかと、そういうことを楽しみにしたいと思うわけである。
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