*

グランドスラム初優勝を目指す錦織圭の全仏オープンテニスを、SlamTracker でデータ分析しながら応援しよう

公開日: : 最終更新日:2015/06/16 オススメ, スポーツ, データ

グランドスラムでのベスト8進出が、もはや驚きではないということ自体に驚かされる錦織圭のテニス。現コーチのマイケル・チャンがグランドスラム初優勝したのが、1989年のこの全仏オープンだった。師匠に続いて錦織自身にとっても、今回の全仏は大きなチャンスであろう。その意味でも今後の試合からますます目が離せない。

 

nishikori

(Photo by fdevillamil)

 

さて、そんな錦織の全仏オープンをテレビ観戦している人は多いだろう。しかし、どれくらいの人がデータとともに観戦しているだろうか?ところでまず最初に、データと相性がいいスポーツとして真っ先に挙げられるのが野球だろう。『マネー・ボール』が大リーグの経営や選手評価システムを大きく変えたように、今やデータ無しに野球を語ることは難しい。

 

一方でデータと相性の悪いスポーツの代表がサッカーだった。「だった」と過去形で書くのは、むしろ今もっともデータ分析と活用が進められているのがサッカーであり、その威力を証明したのが、「ワールドカップの閉幕、そしてデータドリブン・サッカーの開幕」でも書いたように、昨年のワールドカップで圧倒的な強さで優勝したドイツなのである。

 

もちろん各国の代表チームだけでなく、クラブチームでも積極的なデータ利用が始まっており、その最先端を走るチームの一つが、英国プレミア・リーグのリバプールであることは、「英国プレミア・リーグと、リバプールのData-driven football」で紹介した通りだ。最近では関連書の出版も相次ぎ、いまやサッカー観戦にデータ分析の視点は必要不可欠となったと言えるだろう。具体的にはどんな分析をしているのかに興味がある人にとっては、『サッカー データ革命 ロングボールは時代遅れか』がとても面白く読める一冊なので、ぜひともオススメしたい。

 

 

 

さて、それでは一体テニスとデータの相性はどうなのだろうか?結論から言えば、ものすごく相性がいいと言える。なぜ野球にデータが合うのかと言えば、投手の一投がストライクかボールなのか、打者の一振りがライト前ヒットなのかショートゴロなのか空振りなのか等々、ひとつひとつのアクションを簡単にデータに落とし込めるからである。一方のサッカーは、横へのグラウンダーパスなのか、ドリブル突破なのか、ロングシュートなのかと、選手のアクションが非常に多岐にわたりかつ連続的で三次元的であることから、データに落としこむのが非常に難しいのである。これはラジオ放送を思い起こせば分かりやすいだろう。野球のラジオ放送は、中継を聞いていれば、どんな試合展開となっているのか大体予想がつくことだろう。しかし、サッカーのラジオ放送ではどう頑張っても、試合の流れをイメージすることは難しい。これもやはり、サッカー選手のアクションを言葉やデータという情報で伝えるのが困難だからに他ならない。

 

翻ってテニスはどうだろうか?すぐに分かるように、テニス選手のアクションはサーブ、フォアハンドリターン、バックボレー等々、非常に類型化しやすく、かつ一ポイント毎に分断されている。つまり、極めて野球的なのである。だからこそ、テニスにもデータ分析が驚くほどよくマッチするのである。というわけで、次の錦織の試合は、ぜひデータとともに観戦してみませんか?使うべきなのは、IBMが無料で提供している SlamTracker だけ。とても簡単に選手のプレーを可視化してくれる優れものなんです。

 

French-open-nishikori0

 

 

それではまずはこの SlamTracker を立ち上げて、先日の錦織とガバシビリの4回戦の結果を見てみよう。既に報道の通り、錦織のストレート勝ちとなった試合だ。ただ、試合中継をご覧になっていた方なら感じているであろうが、「ストレート勝ち」という言葉から連想されるほど「圧勝」だったわけではない。それをこれからデータで見てみよう。

 

French-open-nishikori1

 

 

以下の画面で見えるのが試合結果の統計数値。ファーストサーブの確率は、ガバシビリの59%に対し、錦織も66%と決して良くはない。また、ダブルフォールトの数も両者ともに5つとなっているし、アンフォースドエラーを見れば錦織のほうが数が多いのである。結果的に「ストレート勝ち」ではあったものの決して「楽勝」などではない。それでは錦織が何に優れていたかと言えば、ファーストサーブでのWINが82%あることと、レシーブでのWINが46%あることであり、この二つはガバシビリと大きな差がついたことが分かるだろう。

 

French-open-nishikori2

 

 

続いては、この統計数値をセット毎に見ることもできるのだ。錦織のファーストサーブの確率が第三セットに入って急に悪くなった、といったことが下の画面から見てとれる。

 

French-open-nishikori3

 

 

次に、各選手の運動距離を見てみよう。錦織が走った距離は1900メートルとガバシビリよりも5%以上多い。それはフットワークが良い錦織の特徴でもあるのだろうが、スタミナを考えると決してよいことばかりではない。それを示すのが1ポイント取るのに走った距離だ。錦織が10.16であるのに対し、ガバシビリは9.66となっており、錦織の方が効率が悪い。もちろんそれを跳ね返すくらいの体力があれば別だろうが、どちらかといえばスタミナ面が不安視される錦織にとっては、フットワークを活かしつつも、いかに省エネでポイントを獲得するか、それは5セットマッチを何度も戦わなくてはならない今回の全仏のようなグランドスラムでは、一層重要なことと言える。

 

French-open-nishikori4

 

 

これ以外にも個別のデータはいろいろ揃っているので、あとはご自身でチェックしてみてもらえればと思うが、最後に紹介しておきたいのが、このSlamTracker の目玉でもある、”Keys To The Match” の機能だ。これは、各試合においてそれぞれの選手が勝利するためには何が必要なのかを、過去の対戦成績等をもとにして導出したものである。例えば、錦織対ガバシビリでは次のような要因が提示されていた。具体的には、錦織がガバシビリに勝つためには、(1)相手のファーストサーブのうち34%以上でポイントを取ること、(2)リターンの際、3回以下の短いラリーのうち27%以上でポイントを取ること、そして(3)自分のファーストサーブのうち74%以上でポイントを取ること、の3つである。

 

French-open-nishikori6

 

 

これらの勝利要件がどのように導出されているのか詳しく知りたいところではあるが、そのアルゴリズムの詳細は明らかにされていない。それでも大変に面白い試みだと思うし、実際にその要件がどれくらい満たされているのかを、試合後に比較してみるのも興味深い。それが以下の画面だ。例えば、第一要因として挙げられた「相手のファーストサーブのうち34%以上でポイントを取ること」という項目については、第1セットこそわずかに目標値を下回ったものの、続く第2第3セットではともに目標をクリアしたばかりか、その実績値を徐々に高めていったことが分かる。その他上の画面からは第三要因の「自分のファーストサーブのうち74%以上でポイントを取ること」という目標については、3セット全てで達成したことも明示されている。

 

French-open-nishikori7

 

 

というように、テニスとデータは非常に相性がよく、眺めているだけでも大変興味深いのである。そして、このIBM の SlamTracker をより面白くしているのは、こうしたデータ収集と表示が、テニスの試合とリアルタイムで更新されていくことにある。錦織の次の試合はぜひとも、タブレットでこの SlamTracker を開きながら、生中継でテレビ観戦してみてはどうだろうか。試合の見方・楽しみ方が変わること間違いない。

 

ちなみに、こちらの書籍『スポーツを10倍楽しむ統計学』は、スポーツとデータに関する書籍を数多く執筆している鳥越規央による最新作。本書の第一章はテニスに充てられており、過去から現在までのテニスを男女別にデータで俯瞰しながら、番狂わせの起きにくいスポーツであることや、データで読みとく錦織の強さなどについて解説していて、実にタイムリーに読むことができた。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

emotional highs and lows in facebook

『ヤバい予測学』とフェイスブックデータが示す感情の起伏

フェイスブックのデータ・サイエンティストたちは毎度興味深いデータを見せてくれる。それは「フェイスブッ

記事を読む

もちろんご存知ですよね?ついに開幕、第四回OKB48選抜総選挙。センター推しは、三菱鉛筆ユニボール・シグノだ!

いよいよ第四回目となった「OKB48選抜総選挙」、熱い闘いが今年も始まった。もちろんOKBとは「お気

記事を読む

3年に一度のアートの祭典|越後妻有アートトリエンナーレ「大地の芸術祭」は今週末まで

「今年の夏は「大地の芸術祭」越後妻有アートトリエンナーレへようこそ!」でも紹介したように、今年は三年

記事を読む

六本木ウィスキーヒルズに行ってきた。

昨年末、六本木ヒルズで開催されたイベント「Whisky Hills」に行ってきた。なにしろ「マッサン

記事を読む

Amazon.com の勢いが止まらない|サイバーマンデーで過去最高売上を記録

株価上昇が続くアメリカ経済の中でも、Amazon.com の勢いはひときわ目を引く。下のグラフを見れ

記事を読む

岡崎所属のレスターシティ奇跡の優勝と、これからのサッカー・データ革命

プレミアリーグ大番狂わせのレスターシティ優勝 ご存知のように、今年の英国プレミアリーグでは、岡崎が

記事を読む

大学入学おめでとう|Amazon Student 大学別会員数ランキングと春のキャンペーン

新入学生におすすめの Amazon Student プログラム 今春大学に入学した皆様、おめでとう

記事を読む

クラウドソーシングを使って優秀なリサーチアシスタントを早く安く簡単に探す

英語論文の校正にかかる費用と時間というのは、多くの研究者を悩ませるところだろう。安くて早くて質のいい

記事を読む

relationship on facebook

フェイスブックから愛を込めて|Data love と love data

「バレンタインの統計学と経済学」で書いたように、Facebook Data Science チームは

記事を読む

起業家視点の戦略的ボードゲーム「カタンの開拓者たち」|世界的ベストセラーがシリコンバレーで盛り上がる

今年の冬休みこそボードゲームを楽しもう ことしもまた冬休みが近づいてきた。クリスマスや正月休暇を、

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

「お茶」が教えてくれる日々のしあわせ

10/13(土) から上映が始まった『日日是好日』。樹木希林の遺作とな

日本美術展史上最大のフェルメール展ついに始まる|事前に読んでおきたいおすすめ5冊

さて、先週からいよいよ上野の森美術館で「フェルメール展」が始まった。現

2018年ノーベル経済学賞はノードハウスとローマーに|著書が半額セール中

今年のノーベル経済学賞が先日発表され、受賞者はイェール大学のウィリアム

japanese dictionaries 1
三省堂『辞書を編む人』が、今年の新語を募集中

時を経て社会は変容し、そして言葉も変遷する。いつの時代もワカモノの言葉

レギュラー化決定NHKの新番組「ろんぶ~ん」は最高のアカデミック・エンターテインメント

さて先週から始まったNHK-Eテレの新番組「ろんぶ~ん」をご覧になりま

植物はスゴい!と語る山田孝之がもっとスゴかった

先日放送されたNHK-Eテレの「植物に学ぶ生存戦略 話す人・山田孝之」

30万部突破のベストセラー『英語は3語で伝わります』他に学ぶパワフル動詞の使い方

中山裕木子著の『会話もメールも英語は3語で伝わります』を、とても興味深

『ヤバい統計学』他で学ぶ数字のセンス|統計リテラシー入門におすすめの4冊

以前にも「『ヤバい統計学』とテーマパーク優先パスの価格付け」で紹介した

PAGE TOP ↑