レギュラー化決定NHKの新番組「ろんぶ~ん」は最高のアカデミック・エンターテインメント
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最終更新日:2018/10/12
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さて先週から始まったNHK-Eテレの新番組「ろんぶ~ん」をご覧になりましたか?これは以前に一度だけ試験的に放送された番組がついにレギュラー化されたものであり、僕自身たいへんに待ち望んでいたものなのである。なにしろ以前に放送を見て「『もっとヘンな論文』がついに登場|アカデミック・エンターテインメントの最高峰」と紹介したように、おもしろおかしく、でも真面目に学術論文の内容を味わうという視点がじつに斬新だったのだから。
小難しくてとっつきにくいイメージがある『論文』。しかし丁寧に読み解いていくとそこには知的好奇心を刺激してくれる「知の結晶」が詰まっている。この番組では、研究者が人生をかけて生み出した『論文』を“ロンブー”田村淳とともに読み解きながら知ることの面白さを味わう。
さて、以前の試験的放送で取り上げた研究テーマが「ハゲ」であったのに対し、先週のレギュラー初回放送は「お笑い」であった。しかも、漫才の動作と発語のタイミングに焦点を当てた研究であり、これは科研費研究「笑いがもたらす情報・情動・同調に着目した漫才インタラクションの時空間的分析」として取り組まれているものなのだ。
イグ・ノーベル賞を筆頭に、世界には実にユニークな研究がある。それを埋もれたままにせずに、真剣に向き合ってみようというのがこの新番組「ろんぶ~ん」の姿勢であり、そこには面白いものを素直に面白がる芸人的精神も相まって、きわめて独創的な番組に仕上がっているのである。
ちなみに、10/11の第二回放送では「ネコ」を、10/18は「アイドル」、そしてその後も「盛り顔」「ラーメン」「秋の味覚」と、一見しただけではとてもアカデミックな内容とは想像がつかないようなテーマがずらりと並ぶ。それがいいのである。ぜひともこの個性あふれる番組とそこで取り上げるもっと個性的な研究テーマをご覧頂きたい。アカデミックに面白い、そんな素敵な番組なんです。
個人的にどうせならこうして欲しかったなあ、というポイントが一つだけあって、それが人選である。ロンブー田村淳が司会となっているのはよいのだけど、どうせなら、学者芸人の異名をもつ、サンキュータツオにもこの番組に出て欲しかったと思わざるを得ないのだ。ご存じない方も多いだろうが、「『もっとヘンな論文』がついに登場|アカデミック・エンターテインメントの最高峰」でも紹介した、サンキュータツオの以下の2冊は、まさに本番組と同様の視点で、世の中に埋もれている奇妙奇天烈な研究を真面目に議論した、とても素晴らしい本なのだから。ぜひこちらも合わせて読んでみて欲しい。
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