英語論文の書き方:アカデミック・ライティングの決定版テキスト
僕が学生の論文を指導するにあたって、まずは徹底的に読み込むようアドバイスしているのが、前回紹介した英語ライティングの基本テキストである。
上記でおすすめするテキストは全て必読だと思うが、一方でこれらは英作文の基本のキを解説するものであるため、論文執筆にあたってはもう一つ上のレベルの、いわゆる英語アカデミック・ライティングを学ぶ必要がある。
その際に最も参考になるものとして僕が信頼を置いているのが次の一冊だ。実際の論文を題材に、セクションごとに分けて(Abstract, Introduction, Method, Conclusion等)、各セクションの目的とその達成方法がクリアに解説される。この部分を読むだけでも論文を書くときの視点がぐっと変わってくるはずだが、本書がそこから続けて説明する、効果的なフレーズの使い方等も非常にタメになる。それに加えて、良い例と悪い例の比較分析では、なぜこう書いてしまってはダメなのかがよく分かる。
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例えば “Being Concise and Removing Redundancy” の章や、 “Avoiding Ambiguity and Vagueness” の章。これらの各章では、英語ノンネイティブの文章にありがちな、まだるっこさ・もどかしさ・じれったさをどう取り除くかという解説がなされる。ノンネイティブの学生が書く論文を数多く指導してきた著者ならではの、実に生々しい事例が豊富に並べられており、だからこそ実践において役に立つ。
また “Clarifying Who Did What” の章や、 “Highlighting Your Findings” の章では、主張が弱くなりがちなノンネイティブの文章に対し、論文の中で最も訴えなくてはならない貢献をどう強く明瞭に伝えるべきか説明されていく。これもまた、英語ノンネイティブの弱点を深く理解していなければ書けない章であろう。
このように極めて実践的なアドバイスが続き、現在論文執筆中という人にとっては常に手元で参照したい内容となっている。こうした理由から、僕は学生に本書を真っ先におすすめしているわけだ。
上記の一冊は経済学およびその他の社会科学を専門とする人にとってはベストテキストとなるだろう。一方で、取り上げている論文が社会科学系のものであるため、自然科学専攻者にとっては若干の読みにくさや違和感があるかも知れない。
書いてある内容は、アカデミック・ライティングにおける極めて一般化されたルールであるため、それらは専門に関係なく役立つものだ。しかしながら、読みやすさという点ではやはり読み慣れた論文が取り上げられている方がよいだろう。その意味で、次の一冊はタイトルが示唆しているように、自然科学専攻者にとっての決定版と言えるだろう。内容構成は上記の一冊と同様に、各セクションにおける論文執筆ポイントが詳細に解説されている。
そして、この自然科学者専攻者向けの決定版テキストには、ありがたいことに日本語版も発売されているだ。英語で論文を書くのだから、参照テキストも英語のものを使えばよいのだが、やはり最初は日本語のテキストを探しているという人にとっては、この翻訳書『理系研究者のためのアカデミック・ライティング』が最適の一冊となるだろう。ただし、こちらの翻訳は原著第1版をもとにしたものであり、最新第2版に興味があるならば、やはり上記の原著を選択するべきとおすすめしたい。
その他にもアカデミック・ライティングの洋書テキストには良書が多い。それらのおすすめテキストを含めた詳細解説は、「英文アカデミック・ライティングおすすめ参考書」にまとめた通りだ。参考になれば幸いである。
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