*

英語論文の書き方:アカデミック・ライティングの決定版テキスト

公開日: : 最終更新日:2021/01/30 研究・論文, 英語

僕が学生の論文を指導するにあたって、まずは徹底的に読み込むようアドバイスしているのが、前回紹介した英語ライティングの基本テキストである。

  1. 英文ライティングここから始める必読テキスト4選
  2. よりモダンでクリアな英作文テキスト3選

 

上記でおすすめするテキストは全て必読だと思うが、一方でこれらは英作文の基本のキを解説するものであるため、論文執筆にあたってはもう一つ上のレベルの、いわゆる英語アカデミック・ライティングを学ぶ必要がある。

 

その際に最も参考になるものとして僕が信頼を置いているのが次の一冊だ。実際の論文を題材に、セクションごとに分けて(Abstract, Introduction, Method, Conclusion等)、各セクションの目的とその達成方法がクリアに解説される。この部分を読むだけでも論文を書くときの視点がぐっと変わってくるはずだが、本書がそこから続けて説明する、効果的なフレーズの使い方等も非常にタメになる。それに加えて、良い例と悪い例の比較分析では、なぜこう書いてしまってはダメなのかがよく分かる。

 

paper editingphoto credit: Unhindered by Talent via photopin cc

 

例えば “Being Concise and Removing Redundancy” の章や、 “Avoiding Ambiguity and Vagueness” の章。これらの各章では、英語ノンネイティブの文章にありがちな、まだるっこさ・もどかしさ・じれったさをどう取り除くかという解説がなされる。ノンネイティブの学生が書く論文を数多く指導してきた著者ならではの、実に生々しい事例が豊富に並べられており、だからこそ実践において役に立つ。

 

また “Clarifying Who Did What” の章や、 “Highlighting Your Findings” の章では、主張が弱くなりがちなノンネイティブの文章に対し、論文の中で最も訴えなくてはならない貢献をどう強く明瞭に伝えるべきか説明されていく。これもまた、英語ノンネイティブの弱点を深く理解していなければ書けない章であろう。

 

このように極めて実践的なアドバイスが続き、現在論文執筆中という人にとっては常に手元で参照したい内容となっている。こうした理由から、僕は学生に本書を真っ先におすすめしているわけだ。

 

 

上記の一冊は経済学およびその他の社会科学を専門とする人にとってはベストテキストとなるだろう。一方で、取り上げている論文が社会科学系のものであるため、自然科学専攻者にとっては若干の読みにくさや違和感があるかも知れない。

 

書いてある内容は、アカデミック・ライティングにおける極めて一般化されたルールであるため、それらは専門に関係なく役立つものだ。しかしながら、読みやすさという点ではやはり読み慣れた論文が取り上げられている方がよいだろう。その意味で、次の一冊はタイトルが示唆しているように、自然科学専攻者にとっての決定版と言えるだろう。内容構成は上記の一冊と同様に、各セクションにおける論文執筆ポイントが詳細に解説されている。

 


 

 

そして、この自然科学者専攻者向けの決定版テキストには、ありがたいことに日本語版も発売されているだ。英語で論文を書くのだから、参照テキストも英語のものを使えばよいのだが、やはり最初は日本語のテキストを探しているという人にとっては、この翻訳書『理系研究者のためのアカデミック・ライティング』が最適の一冊となるだろう。ただし、こちらの翻訳は原著第1版をもとにしたものであり、最新第2版に興味があるならば、やはり上記の原著を選択するべきとおすすめしたい。

 

 

その他にもアカデミック・ライティングの洋書テキストには良書が多い。それらのおすすめテキストを含めた詳細解説は、「英文アカデミック・ライティングおすすめ参考書」にまとめた通りだ。参考になれば幸いである。

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

ジョジョの奇妙な冒険で英語を勉強するなんて、無駄無駄無駄無駄無駄ですか?

いや、決してそんなことはない、という一冊が登場。昨年出版されたことに気づいて以来、ものすごく気になっ

記事を読む

新書『英語独習法』が売れている|認知科学者がおしえる思考と学習

岩波新書の今井むつみ『英語独習法』が売れている。僕自身も大変興味深く読んでおり、これは英語学習者にと

記事を読む

海外で研究者になる|知られざる就職活動その舞台裏

日本人が数多く海外留学していることに比べると、海外で就職する例はまだまだ少ないと言えるだろう。とくに

記事を読む

英語論文の書き方:英文ライティングの新定番テキスト “The Sense of Style”

これまで4回連続で紹介してきた、英語アカデミック・ライティングのおすすめテキスト、の続き。

記事を読む

科研費に採択されたら使いたい、研究と事務を効率化するクラウドサービスおすすめ2選

研究者にとって4月は特別な季節。それはもちろん日本のほとんどの大学で新しい学年が始まるから、だけでは

記事を読む

日本語で書かれたおすすめテキスト『発信型英語スーパーレベルライティング』が待望のKindle版で登場

なんと、植田一三の『発信型英語スーパーレベルライティング』が、Kindle版で登場しているではありま

記事を読む

食べログ評価とレストランオーナーの憂鬱

東洋経済ONLINE「食べログに勝訴でも飲食店が抱く『後味の悪さ』」等でも報じられているように、グル

記事を読む

『科研費獲得の方法とコツ』は、科研費申請予定の研究者必携の一冊

研究者にとっての秋は、科学研究費助成事業(科研費)の締切が迫る時期でもある。今年は11月10日が最終

記事を読む

英語論文の書き方・直し方|英文校正校閲にはクラウドソーシングがおすすめ

英語アカデミックライティングに必携の英語辞典 「アカデミックライティングにおすすめの英語辞典|コロ

記事を読む

おすすめ 『カリスマ同時通訳者が教えるビジネスパーソンの英単語帳』がKindleセール中

僕もこれまで何度もおすすめしてきた関谷英里子『カリスマ同時通訳者が教える ビジネスパーソンの英単語帳

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑