*

新書『英語独習法』が売れている|認知科学者がおしえる思考と学習

公開日: : 最終更新日:2021/03/20 オススメ書籍, 英語

岩波新書の今井むつみ『英語独習法』が売れている。僕自身も大変興味深く読んでおり、これは英語学習者にとっての必読書に指定したいくらいだと思っている。それくらい、これまでの英語関連書にはない、ユニークな一冊となっているのだ。

 

世の中に数多存在する、英語がペラペラ話せるようになるといった宣伝文句の教材、ヒアリングとして英語を浴びるように聞いて慣れさせようという授業、そうした安易なやり方をまずは否定するところから本書は始まる。それではこの『英語独習法』は、これまでの英語学習教本とはいったい何がどう異なっているのか?その答えはひとことでいうと、著者が英語の専門家ではない、ということに尽きる。

 

今井むつみ
1989年慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。
1994年ノースウェスタン大学心理学部Ph.D.取得
現在―慶應義塾大学環境情報学部教授
専攻―認知科学、言語心理学、発達心理学
著書―『ことばと思考』岩波新書、『学びとは何か――〈探究人〉になるために』岩波新書、『言語と身体性』岩波講座コミュニケーションの認知科学第1巻(共編著)、『ことばの発達の謎を解く』ちくまプリマー新書、『親子で育てることば力と思考力』筑摩書房、『言葉をおぼえるしくみ――母語から外国語まで』ちくま学芸文庫(共著)、『新人が学ぶということ――認知学習論からの視点』北樹出版(共著)ほか

 

上記プロフィールにもあるように、著者・今井むつみは認知科学者であり、英語の専門家でもなければ、英語教師でもない。そうではなく、認知科学・言語心理学をアカデミックに研究する立場から、日本人にとってなぜ英語学習がこれほどまでに難しいのか、そして安易な上達を謳う教材や手法はどこがどう問題なのか、を丁寧に解説していく。このアプローチがこれまでの数多くの英語学習法とは大きく異なるのは、第1章「認知のしくみから学習法を見直そう」で明確に述べられており、ここをしっかりと読むだけでも本書の価値は高い。

 

もちろん、第1章は導入に過ぎず、そこから本書のキーコンセプトである「スキーマ」について解説がすすみ、日本語の英語ではそもそもからズレが生じており、それをどう乗り越えていけばよいのか、という実践的な探索・探究法へとレベルを上げた話題へと展開する。

 

 

 

 

僕らはついつい、より効率的・効果的な英語学習法はないかとついつい探してしまう。英英辞典、英語新聞、Podcast、TED Talk、そしてスタディサプリと、どうしても教材やツールに目移りしてしまいがちだが、そうではなく、本書では、そもそも人間はどのような学習プロセスをとっているのか、という原点に立ち返り、それに合わせてどう外国語としての英語を勉強していくべきなのか、という大きな発想の転換が求められる。しかし、一見遠回りに見えるであろうこの道こそが、そして学習とは何かというアカデミックな理解に基づいたほうが、実は有効な方法論であるというのは、本書を読み終えれば誰しも納得するはずだ。

 

こうした書籍が新書で出版され、誰にとっても手軽に本格的内容を学ぶことができるのは、大変すばらしいことだ。岩波書店のまさにグッジョブであり、その結果としていま売れているというのは、それだけの潜在的ニーズがあったことの証明でもあり、これもまた喜ばしいことだ。英語学習と無縁でいられる日本人はなかなかいない。いまや小学生から英語を学ぶ時代であり、好きだろうが嫌いだろうが、受験から仕事まで、どこまでも英語は身近にあり続ける。であるならば、一番根本的な学習の意味から問い直すのはとても価値あることだと思う。まずはいったん立ち止まって、これからどう英語を勉強していくべきかを考えるためにも、本書は極めて示唆に富んだ一冊となっている。強くおすすめしたい。Amazon でも楽天でも、いまだけポイント10倍でお買い得です。

 

英語の達人をめざすなら、類義語との違い、構文や文脈、共起語などの知識に支えられた高い語彙力が不可欠だ。記憶や学習のしくみを考えれば、多読や多聴は語彙力向上には向かない。語彙全体をシステムとして考え、日本語と英語の違いを自分で探究するのが合理的な勉強法なのだ。オンラインのコーパスや辞書を利用する実践的方法を紹介。

■目次
はじめに
第1章 認知のしくみから学習法を見直そう
第2章 「知っている」と「使える」は別
第3章 氷山の水面下の知識
第4章 日本語と英語のスキーマのズレ
第5章 コーパスによる英語スキーマ探索法 基本篇
第6章 コーパスによる英語スキーマ探索法 上級篇
第7章 多聴では伸びないリスニングの力
第8章 語彙を育てる熟読・熟見法
第9章 スピーキングとライティングの力をつける
[ちょっと寄り道] フィンランド人が英語に堪能な理由
第10章 大人になってからでも遅すぎない
探究実践篇
【探究1】 動詞の使い分け(1)──主語・目的語に注目
【探究2】 動詞の使い分け(2)──修飾語・並列語に注目
【探究3】 動詞の使い分け(3)──認識を表現する
【探究4】 動詞の使い分け(4)──提案を表現する
【探究5】 修飾語を選ぶ──頻度に注目
【探究6】 抽象名詞の使い分け──共起する動詞と修飾語に注目
【探究7】 前置詞を選ぶ──前置詞+名詞の連語に注目
【探究8】 抽象名詞の可算・不可算
本書で紹介したオンラインツール
参考文献
あとがき

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

three main dictionaries

国語辞典を選ぶならこの4冊がおすすめ:現代語に強い三省堂・豊かな語釈の新明解・安定と安心の岩波・誤用を正す明鏡

目的と用途に合わせてベストの国語辞典を見つけよう 卒業・入学シーズンを前に、そのお祝いとして国語辞

記事を読む

好きなことだけを仕事にした、新潟県三条市の世界的アウトドアメーカー「スノーピーク」の経営

新潟県三条市に、あのアップルも見学に来る企業があるのをご存知だろうか?それがアウトドアブランドの「ス

記事を読む

いまこそ本当の宇宙兄弟を目指す|13年ぶりの宇宙飛行士選抜試験いよいよ始まる

大ヒット漫画『宇宙兄弟』を挙げるまでもなく、僕らはみな子供の頃から宇宙が大好きだった。そして、あの頃

記事を読む

辞書編纂者・飯間浩明の仕事の流儀プロフェッショナル

先日NHKで再放送された「プロフェッショナル仕事の流儀」をご覧になっただろうか。「言葉の海で、心を編

記事を読む

ヒマラヤ山脈でイエティの足跡を発見|雪男は向こうからやって来た

ヒマラヤ山中で伝説の雪男「イエティ」の足跡を発見したと、インド軍が公式ツイッターに写真つきで投稿した

記事を読む

Kindle電子書籍で手軽に読む高野秀行の探検記シリーズは、フィクションかと思うほどの強烈ノンフィクション

高野秀行という作家はものすごく強烈な個性を放っている。「高野秀行はセンス抜群の海外放浪ノンフィクショ

記事を読む

【おすすめ経営書】ゼロ・トゥ・ワン:君はゼロから何を生み出せるか

話題の経営書『ゼロ・トゥ・ワン:君はゼロから何を生み出せるか』を、とても興味深く読んだ。著者はピータ

記事を読む

『シグナル&ノイズ 天才データアナリストの予測学』のネイト・シルバーがおすすめする2冊の絵本がステキ

「今年続けて読みたい統計学オススメ関連書と教科書15冊」で紹介したうちの一冊が、ネイト・シルバーの『

記事を読む

戦略アナリストが支える全日本女子バレー|世界と互角に戦うデータ分析術

女子バレーボールのワールドカップもいよいよ終盤戦。リオデジャネイロ五輪への出場権をかけて瀬戸際のニッ

記事を読む

Kindle電子書籍で(不)真面目に読める、おすすめ英語テキスト19冊

Kindleで安く手軽に読める英語テキスト。まずオススメしたいのは、何と言っても越前敏弥の『日本人な

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

japanese dictionaries 1
春の入学・進学・進級にあわせて最適な国語辞典を選ぼう

小中学校の生徒にとっての春は入学・進学・進級の季節であり、大学や大学院

マンガ大好き芸人も絶賛の異色作『チ。地球の運動について』最新刊がさらにおもしろい

宗教的絶望と科学的真理の葛藤。中世の時代、当時の世界を支配するキリスト

科研費に採択されたら絶対に使いたい超便利クラウドサービス

さて今年も科研費の採択が発表されるシーズンとなったが、昨年応募した方々

NHK「プロフェッショナル」東北魂サンドウィッチマンスペシャル

先日は「ついに完結エヴァンゲリオン|ありがとうを君に」で書いたように、

【Kindle月替わりセール】おすすめの6冊

Kindle月替わりセール、3月末までの期間限定でお買い得となっている

論理思考の駆け引きで騙し合い|カードゲーム「TAGIRON」が熱すぎる

以前に「冬休みにおすすめの人気ボードゲームランキング:「カタンの開拓者

ついに完結エヴァンゲリオン|ありがとうを君に

3/22月曜日、NHKで放送された「プロフェッショナル仕事の流儀」ご覧

新書『英語独習法』が売れている|認知科学者がおしえる思考と学習

岩波新書の今井むつみ『英語独習法』が売れている。僕自身も大変興味深く読

PAGE TOP ↑