宗教的絶望と科学的真理|異色マンガ『チ。―地球の運動について―』が面白い
公開日:
:
最終更新日:2021/01/18
オススメ漫画
前回「中世キリスト教世界の絶対真理「天動説」に挑んだ意欲的漫画『チ。―地球の運動について』が面白い」でも紹介した、極めて新しいタイプの漫画『チ。』がめちゃくちゃ面白い。その第2巻が発売されたばかりなのだが、物語はさらに深みを増していく。こんなにも早く続きが読みたい漫画、ひさしぶりではないだろうか。
作者のこの構想力は素晴らしく、もはや脱帽としか言いようがない。圧倒的迫力でせまるこの歴史的大作を見逃すわけにはいかない。中世の時代、聖書がすべてであり、そこに書かれていないことを知ろうとする者は異端者として迫害された。しかし、この世界を、そしてこの天体を理解したいという人間の根源的な知的好奇心は失われず、その観察記録は密かに受け継がれてきた。果たしてその行為はどのような帰結となるのか・・・。宗教と科学をめぐる壮大な人間のドラマが、ここにある。今年いちばん読んで欲しい漫画と言えるかもしれない。まだ第2巻が発売されたばかりと序章なので、今からでも十分ついていけます。ぜひ読んでみて!
私達はこの世界に絶望すべきなのか――?
地動説を生き延びさせるために、神童ラファウが自ら命を絶ってから10年が経った。代闘士として殺人を繰り返す超ネガティブ思考の青年・オクジーは、同僚の超ポジティブ思考の男・グラスに「絶対の信頼がおける『希望』を見つけた」と告げられる。そしてグラスが取り出したのは、「火星」の観測記録だった――
あらかじめ絶望しておけばそれ以下の悲しみも苦しみもない。ならばこの世界に絶望しておくのが正解なんだろうか? いや、そんなことはない。 まったく違う。その理由はこの漫画に描いてある。
Amazon Campaign

関連記事
-
-
至高のグルメ(ギャグ)漫画『食の軍師』を、TOKYO MX がまさかのドラマ化
『孤独のグルメ』で新たなグルメ漫画のあり方を提示した久住昌之が、さらなるイノベーションをもたらしたの
-
-
【おすすめコミック】賭博と心理の傑作『カイジ』のスピンオフ漫画『中間管理録トネガワ』が最高すぎる
ギャンブル漫画としてのみならず、その心理戦の描写が実に素晴らしいご存知『カイジ』。このシリーズに敵役
-
-
電子コミックの時代がやってきた:『ナナのリテラシー』が描く漫画業界のビジネスモデル革命
ご存知のように、今ものすごい勢いで電子書籍市場が拡大している。出版業界では今年こそ「本当の電子書籍元
-
-
NHK「浦沢直樹の漫勉」がおもしろい|シーズン1『ゴルゴ13』さいとう・たかを編
先日「NHK「浦沢直樹の漫勉」がおもしろい|シーズン1「東村アキコ」編」で書いたように、現代の人気漫
-
-
中央アジアとシルクロードを舞台にしたおすすめの漫画『乙嫁語り』の細かい描写が素晴らしい
ついに出ましたね、『乙嫁語り』最新第8巻。今回はパリヤさんの結婚物語。いやぁ今回も楽しく読ませて頂い
-
-
大注目コミック『僕だけがいない街』待望の最新巻発売とアニメ化決定
現在連載中のコミックの中では、個人的には『進撃の巨人』等よりもずっとハマっているのが三部けい『僕だけ
-
-
若き冒険家のアメリカ|植村直己『青春を山に賭けて』
NHK-BS で放送されている「ザ・プロファイラー|夢と野望の人生」をご覧になっているだろうか?以前
-
-
手塚治虫の夢と野望と欲望と嫉妬:アトムとAKIRA
先日のNHK番組「ザ・プロファイラー~夢と野望の人生~」をご覧になっただろうか?テーマは「手塚治虫
-
-
キリスト教と天動説|中世のタブーに挑んだ異端の漫画が面白い
以前にも紹介したいま最も注目すべき漫画『チ。―地球の運動について―』、その最新第4集がついに発売され
-
-
Kindle版が無料だったので、ものすごく今更だが漫画『島耕作』シリーズを読んでみた
最も有名なサラリーマン漫画といってもいいだろう『島耕作』シリーズ。僕自身はまったく読んだことなかった