プロテニスプレイヤーの憂鬱|男女格差と上下格差の歴史と現状
ウィンブルドンテニスで今年も熱戦を繰り広げられるなか、Financial Times の記事 “Don’t blame market forces for female tennis stars being short-changed” を興味深く読んだ。それによると、ウィンブルドンでは2007年からは男女の賞金が同額に設定されているということだ。これは他のプロスポーツを見渡せば、まだまだ珍しい男女差なし、ということになるだろう。例えば、サッカー日本代表をみたって、男子サムライブルーはいつも女子なでしこよりも好待遇であり、結果がでないときにはとくにそれが批判されてきたわけである。
一方のテニスにおいては、ウィンブルドンを含めた四大グランドスラムですべてが男女同額になっているのだが、そこに至るまでには長い長い歴史がある。ちなみにグランドスラムのうち最も最初に同額設定となったのが、1973年の全米オープンなので、ウィンブルドンはそれに比べて随分と遅れてからの対応となった、といえる。こうした歴史については日経新聞の記事「全米テニス、高額優勝賞金 男女同額へ奮闘の歴史」に端的にまとめられているので、興味がある方はぜひご覧頂きたい。
一方で、先のFT誌の記事が指摘するのは、グランドスラムでは同額となっている一方で、他の一般テニストーナメントではむしろ男女賞金格差が拡大傾向にあるということだ。グランドスラム以外では、男女ともに3セットマッチなのだから、「男子は5セット戦うから」という言い訳は通じない。また、男子の試合の方が視聴者数が多くビジネスの規模が違うという指摘にも、必ずしも同意する者ばかりではないというのは、日経新聞の記事でも指摘されている通りだ。
そして関連して僕が思い出すのが、プロテニスというのは、男女ともにトッププレイヤーと下位選手の格差があまりにも大き過ぎ、絶望するほどの断絶がある世界だということだ。そんなことなんとなく知っていたような気もしていたが、本書『テニスプロはつらいよ』を読むと、いやほんと読んでいるだけで胃が痛くなるほど辛さが伝わってくるのである。だって、日本人男子プロテニスプレイヤーと聞かれて、錦織以外の名前を挙げられる人どれくらいいますか? もちろんどの世界もプロは厳しいというのは当たり前のことだ。それでもなお、若い頃からテニス漬けの青春時代を過ごし夢を追い続けてきた若者にとって、もう少しココロ休まる時間があってもよいのでは、というのは甘いのかしら。
Amazon Campaign

関連記事
-
-
錦織圭と大坂なおみの全米オープンテニス2019
さて、いよいよ始まった今年の全米オープンテニス。錦織圭は、相手選手の途中棄権があったものの、初戦を無
-
-
リンクトインのデータに見る、アメリカの新卒採用と転職行動
雑誌WIREDの記事「アップルやグーグル、フェイスブックはどの大学の卒業生を採用しているのか」で紹介
-
-
戦略アナリストが支える全日本女子バレー|世界と互角に戦うデータ分析術
女子バレーボールのワールドカップもいよいよ終盤戦。リオデジャネイロ五輪への出場権をかけて瀬戸際のニッ
-
-
オープンガバメント:ニューヨーク市消防庁のオープンデータ戦略
ニューヨーク市の消防庁が、データを使って建物検査を効率的に行っているというウォール・ストリート記事。
-
-
サッカー・データ革命の時代に読んでおくべきこの5冊
データ革命が加速する世界最先端の現代サッカー 「ワールドカップの閉幕、そしてデータドリブン・サッカ
-
-
データと恋愛とバレンタインデー
バレンタインデーの週末、みなさまいかがお過ごし予定でしょうか?昨年「バレンタインの統計学と経済学」で
-
-
今年も箱根駅伝の季節がやってきた
さて、今年もまた箱根駅伝の季節がやってきた。毎回手に汗握るドラマを見せてくれるこの大学スポーツは、始
-
-
日本代表はなぜ負け続けるのか|サッカー・データ革命はどこに?
サッカー・ロシアW杯出場を賭けたアジア最終予選が始まった。と思った矢先に、対UAE戦にホームで敗れる
-
-
全米オープンテニス|錦織がフルセットを制して準決勝進出
日本時間早朝の全米オープンテニス生中継を観戦したみなさま、お疲れ様でした。錦織がやってくれましたね。
-
-
100年目の国勢調査|本日の締切おわすれなく
現在実施中の国勢調査は、5年に一度実施される最も重要な統計調査である。日本国内に住んでいるすべての人
Amazon Campaign
- PREV
- NHK短編ドラマ・星新一の不思議な不思議な世界
- NEXT
- 越後長岡藩の熱い夏|最後のサムライの夢の跡