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NHK短編ドラマ・星新一の不思議な不思議な世界

7/4月曜から始まるNHKの短編ドラマは大注目だ。なにしろ、あのショートショートの傑作をこれまで千編以上も創作してきた、まさに神様と呼ばれるべき星新一の世界をドラマ化したのだから。

“ショートショートの神様”星新一。生涯にわたり発表された1001編を超える作品は、教科書にも掲載され、いまなお読みつがれています。世代を超えて愛されるその魅力は、“宇宙”“ロボット”“悪魔”など不思議でワクワクするSFやファンタジーの要素。また人間や社会に対する「おかしみ」や「皮肉」をまじえた目線。そしてなにより、短くも、あっと驚かされる予測不可能なストーリーです。それは、毒を含んだ寓話なのか、人類への警鐘なのか…。星新一の珠玉の作品を、令和のいま、実写ドラマとして描きます。

 

しかも、初回放送はあの名作中の名作とも言うべき『ボッコちゃん』なのである。これは見ないわけにはいかないよね? 少年時代に星新一作品をむさぼり読んだという人は結構いるだろう。そんな人たちにとっては絶対に忘れられない一作、それがこの『ボッコちゃん』だ。抑揚のない近未来の世界を描くのが抜群にうまかった星新一の作品のなかでも、人型ロボット(美人)のボッコちゃんの存在感は突き抜けていた。それを今回のドラマ実写化においては、水原希子が演じるということらしい。どんな物語となるのか、そしてどうやって終わるのか、もちろんあの忘れられないラストシーンは今も鮮明に記憶に残っているのだが、それでももう一度見てみたくなる、それが星新一の中毒になるほどの魅力なのだ。

 

 

ボッコちゃん(水原希子)はバーのマスター(古舘寛治)が作った人型ロボット。見た目は美人だが、能力はいまひとつ。ほとんど人の言うことをオウム返しすることしかできない。それでも、ベテランホステス(片桐はいり)を横目にたちまち店の人気者に。そんなある日、父親(杉本哲太)に連れられて一人の青年(岡山天音)がバーにやって来る…

 

 

また星新一の数多の作品群とともに、彼の人生そのものも大変興味深いのである。森鴎外を親戚にもつほか、父の星一は星製薬の創業者であり、彼の名前はいまも星薬科大学に残っている。星新一自身は「ショートショートの神様」として知られることが多いが、僕の個人的な感想としては、父・星一の奮闘を描いた『明治・父・アメリカ』が素晴らしい。あの時代、海を越えてアメリカに渡り、そこで夢をつかんだ物語、胸が熱くなる一冊として、ぜひもっと多くの人に読んでもらいたいと願っている。

星新一の父、星一は、福島の田舎から東京に出て苦学し、20歳で単身アメリカに渡る。いつも貧しかったが、決して挫けず、他人に頼らず住み込みで働きながら小学校で英語を学び、行商や翻訳をして大学の学資を稼いだ。周到な計画と持ち前の克己心で困難を乗り越え、貪欲に異国の新しい文明を吸収していく……夢を抱き、野心に燃えて、星製薬を創業した父の若き日の記録。感動の評伝。

 

 

くわえて、星新一の人となりを描いた評伝として、最相葉月『星新一』も重厚なノンフィクションとしておすすめしたい。いずれにしろ今回のNHK短編ドラマシリーズを機会に、もっと星新一の作品が、そして彼の人生が、視聴者や読者に届くことを願ってやまない。

大企業の御曹司として生まれた少年は、いかにして今なお愛される作家となったのか。知られざる実像を浮かび上がらせる評伝。

「ボッコちゃん」「マイ国家」など数多のショートショートを生み出し、今なお愛される星新一。森鴎外の血縁にあたり、大企業の御曹司として生まれた少年はいかなる人生を歩んだのか。星製薬社長となった空白の六年間と封印された負の遺産、昭和の借金王と呼ばれた父との関係、作家の片鱗をみせた青年時代、後の盟友たちとの出会い――
関係者134人に取材、知られざる小説家以前の姿を浮かび上がらせる。

 

 

 

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