誰もいなくなった東京にそして人が戻り始めた|中野正貴が切り撮るTOKYOの空気
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最終更新日:2020/10/01
アート, オススメ番組・映画・ドラマ
9/27土曜日のTBS「情熱大陸」をひさしぶりに観た。今回どうしてもこの番組を見ようと思っていたのは、取り上げる人物が写真家・中野正貴だったからだ。
独自の視点から東京を撮り続けて、約30年。中野の名を一躍有名にしたのは、2000年に発表された「TOKYO NOBODY」だ。その写真には、誰も見たことのない東京の姿があった。誰もいない東京の街。水辺から見上げた東京。窓から見た生活の中にある東京。写し出されたそれぞれの作品は、不思議と見る者の想像力を掻き立てる。2004年に発表された写真集「東京窓景」では、木村伊兵衛写真賞を受賞。49歳で最年長受賞者となった。ただ、それらの写真が2020年、猛威を振るうコロナウィルスによって現実のものとなった。街からは人の姿が無くなり、在宅により窓から眺めるしかない外の景色。中野は言う「写真には不思議な力がある、何故か予言の書のようになってしまった」と。2020年、夏。猛暑が続く中、主流のデジタルカメラではなく大判と言われる大きなカメラを担ぎ、汗だくになっている中野がいた。「この中に風景を閉じ込める。そして、どこを見るかはその人に委ねる」不思議な力がある観る者を惹きつける写真のシャッターを切る瞬間を取材した。
以前に「そして誰もいなくなった東京|中野正貴の TOKYO NOBODY の世界」でも書いたように、彼が撮る東京はじつに斬新だ。大都会にひとっこ一人いない決定的瞬間を捉えた「Tokyo nobody」を筆頭に、建物のなかから窓をフレームにして東京の景色を眺める「東京窓景」、そして昔は水の都といわれた昔の名残を感じさせる水辺から見上げる現代の江戸。
そんな東京の空気を毎回意表をつく視点で写真に収めていく中野は、誰も真似できない視点があり、より面白い視線を探して誰よりも東京の街をひたすら歩きまわっている。重量のあるカメラ機材一式を背負って毎日歩き続ける彼は、年齢からくる衰えもありあと何年こんなことが出来るのだろうか、と語る。しかし、これは彼のライフワークであり、まだ見たことのない景色を求め、今日も歩き続けるその姿には、なにかひとつのことを探究するプロフェッショナルの神髄を見た気がした。今も撮り続ける「Tokyo Nobody」や「東京窓景」の新たなチャプターを見に、僕はいつでも彼の次の写真展に行けるのを楽しみにしているのだ。
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