若き水中考古学者の海底探検記|ガラクタから宝物そして遺跡新発見
「水中考古学」なる学問分野をご存知だろうか? もちろん考古学なら知っている。それの水中版? もちろんそれで大体あっているのだけれども、その具体的内容はというと、海に沈んだ遺跡を発掘したり、沈没船を探索したりして、人類のいまだ知られざる歴史を研究しているのである。その実態をもっと知ってみたいという人は、こちらの記事「地震で沈んだ『海底都市』を発掘せよ 若き水中考古学者の驚きの日常」が参考になるだろう。
主役は「沈没船博士」こと山舩晃太郎。世界中を飛び回り、大海を潜りまくり、そして今日も新たなお宝を発見するという、インディージョーンズばりの日常生活なのだ。ちなみに同氏は極めてユニークな経歴の持ち主であり、そのキャリアにも興味があればぜひとも別記事「『英語力ゼロで単身渡米』法政大野球部の戦力外投手がアメリカでつかんだ”異色の仕事”」も合わせて読んでみてほしい。
そんな山舩晃太郎博士の著書がこちら『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』である。こういう研究最前線の内容を、こんな面白い一般書で読めるなんて機会はなかなかないだろう。であればぜひ、自分の研究や専門にとらわれずに、ぜひとも読んでみて欲しい。こんな分野があったなんて!っていう驚きに満ちた、とてもエキサイティングな一冊としておすすめしたい。
恋人や家族が戯れる海の底で沈没船を探すロマンチスト。それが水中考古学者だ。今日は地中海、明日はドブ川。激アツの発掘デイズ。
英語力ゼロなのに単身渡米、ハンバーガーすら注文できず心が折れた青年が、10年かけて憧れの水中考古学者に。その日常は驚きと発見の連続だった! 指先さえ見えない視界不良のドブ川でレア古代船を掘り出し、カリブ海で正体不明の海賊船を追い、エーゲ海で命を危険にさらす。まだ見ぬ船を追うエキサイティングな発掘記。
さらには、これまで本当に全然知らなかったのだけれども、この「水中考古学」という研究分野は、アメリカのテキサスA&M大学がリードしているんだね。先の山舩博士も同大学の出身なのだが、実はそれだけではないのだ。例えば、以下の一冊『水中考古学 地球最後のフロンティア』を著した佐々木ランディ博士もまた、同じくテキサスA&M大学にて「水中考古学の父」と呼ばれるジョージ・バス氏に師事して博士号を取得したとのこと。
溺れるほど面白い、水中考古学の世界へようこそ。
・坂本龍馬のいろは丸は銃を積んでいなかった?
・海に沈んだイカリから蒙古襲来の神風の進路が判明?
・湖に沈む一隻の釣り舟はキリストの舟だった?
・沈没船から見つかったオーパーツは世界最初のコンピューターだった?水中に沈む沈没船や遺物から歴史を塗り替える発見が相次ぐ。まだ見つかっていない遺跡も多く、まさに地球最後のフロンティアといえる。しかし、世界に冠たる海洋国家の日本は水中考古学の分野では後れをとっている。貴重な水中遺跡が充分に保護されず失われていく現状を憂い、立ち上がったのが「海のランディ・ジョーンズ」こと佐々木ランディだ。
水中考古学の魅力と価値を伝える使命感で筆をとり、書き連ねた魂の玉稿。「水中考古学者は財宝の夢を見ない。どんな財宝よりも面白いことが水中には眠っているからだ。人類の歴史を解き明かす鍵が君を待っている」――著者
「日本人なら水中考古学」と叫びたくなる知的探求の世界へ、いざゆかん。
そのうえ、この分野にはさらに先輩がいて、数年前に以下の書籍『水中考古学 クレオパトラ宮殿から元寇船、タイタニックまで』を上梓した井上たかひこ博士もやはり、テキサスA&M大学にて「水中考古学の父」ジョージ・バス氏の薫陶を受け、そして東洋人として初めて水中考古学の学位を授与されたそうなのだ。
水中考古学とは、水面下の遺跡や沈没船を対象とする考古学の一分野である。これまで、欧米の研究チームがクレオパトラ宮殿やタイタニック号を発見し、中国・韓国も国を挙げて沈船調査に取り組んでいる。日本でも、長崎の元寇船調査を中心に、国内の体制が徐々に整えられつつある。著者自身、千葉県沖に眠る幻の黒船を発見し、今も調査を続けている。本書では、自身の体験も織り交ぜながら、探検と研究の現場に迫る。
というように、今アツく盛り上がっている水中考古学の世界、そしていずれもテキサスA&M大学にて最先端研究に携わってきた3人の日本人研究者が発表した一般向け書籍。読み比べてみるとそれぞれに刺激があり、今後もさらに彼らを追った若き水中考古学研究者が海を渡り、海に潜り、そしてこの分野がますます発展していくことを確信している。大変に興味深い研究分野であり、とても知的好奇心にあふれた、ロマンチックな本としてすべての人におすすめしたい。夏休みの読書にぜひ。
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