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科研費に応募する2|申請書作成に向けてどんな情報を参考にするか?

公開日: : 最終更新日:2020/09/08 研究・論文

申請書作成に向けて

今年の科研費に応募しようと考えたとき、とくに初めて申請書を書くとなった場合、まずはどこから手をつけたらよいだろうか? いきなり書き始める、ということはないだろう。そうではなく、そもそも「どう書いたらよいのか」という辺りから、まずはいろいろと調べてみる人が多いように思う。そのため、僕自身が申請書を作成する際に、大いに参考にしたという個人的な経験等をもとに、役立つ情報を以下、紹介していきたいと思う。

 

 

 

 

科研費公式ウェブサイト

まずはもちろん、科研費の公式ウェブサイトである。なにしろ、募集要項をはじめとする全ての公開情報はここにあるのだから。もちろん、今年の新規募集にかかる規定だけでなく、昨年の応募数や採択率、そして過去数年のトレンド等のデータもきちんとまとまっており、そして公開されているのだから、これをしっかり確認しないい手はないだろう。また、意外と知らない人もいるのだが、過去に科研費の申請書を評価した審査員の名簿もしっかり情報公開されているのだ。誰が審査員なのかが分かれば、例えばどの研究区分で応募しようとか、どんな書きぶりで申請書をまとめようか、といった意思決定にも大いに役立つこと間違いなしなので、ぜひともこの公式ウェブサイトにある情報は、すべて目を通しておきたいところだ。

 

科研費パンフレット

公式ウェブサイトにある情報のなかでも、科研費パンフレットには、科研費全体のことが端的にまとまっており、きわめて有用だ。とくに初めての応募にあたって、科研費とはそもそもどのような研究費であり、どのように応募・採択が決まるのか、といったイメージが的確に伝わるものとなっているので、ぜひこのパンフレットで概要をしっかり確認しておこう。

 

科研費ハンドブック

パンフレットだけでなく、こちらの科研費ハンドブックもたいへん参考になる情報だ。これは、科研費の使い方を解説したものであるため、採択者にとってより有用なものである。ただし、科研費はけっこう制約が多くて使いづらいよ、なんて話を聞いたことがあり、それで応募を躊躇するくらいなら、まずはこのハンドブックで研究費使用のガイドラインを確認してみてはどうだろうか。科研費にはもちろんルールはあるのだけれども、それは決して非合理なやり方を押し付けてくるものではない、ということが理解できるし、であれば応募してみようかという気にもなるのではなかろうか。

 

科研費データベース

さて、実際にどのような研究が科研費に採択されているだろうか? これから応募しようと考えている人にとっては、一番気になるところだろうか、これももちろん、すべて情報公開されている。こちらの科研費データベースをみると、どの年に、誰が、どんな研究で、どれくらいの科研費を受けたのか、がすべて分かる。だからこのデータベースを有効に使って、自分の研究分野では近年どんなトピックが科研費に採択されているのかや、同分野の同業者でもある他の研究者の人たちがどんな研究テーマで採択されているのか、といった参考になる情報が盛りだくさんだ。それだけでなく、研究機関や研究予算も明示されているので、どれくらいの規模で研究しているのかも分かり、自分自身で研究計画を立てるに当たって大いに役立つはずだ。

 

応募にあたっての参考書籍

科研費獲得の方法とコツ

ここからは、以上のような公式サイトでの公開情報をもとに、それでは具体的にどのように研究計画書を作成し、科研費への申請書として応募すればよいのか、その視点や戦略についての参考情報をお伝えしたい。まずは何と言ってもこの一冊『科研費獲得の方法とコツ』である。以前にも「誰も教えてくれない、科研費に採択されるコツを公開|研究費獲得に向けた戦略的視点」で紹介し激推ししたように、科研費に関する参考書籍を一冊選んでと言われたら、間違いなくこの一冊である。その特徴を2点あり、ひとつは、申請書を読む審査員の立場になって「どんな申請書だったら読みやすく分かりやすいか」という視点でまとめられていること。もうひとつは、申請書の事例が豊富で、採択されたものだけでなく、不採択だったものまでもが本書で開陳され、何がダメだったのかを解説している本書は、極めて実践的で、だからこそ今から自分が応募しようという人には最も役立つ情報となっているのだ。毎年改訂版が出版されるほどのベストセラーとなっており、科研費募集締め切り前にはいつも品切れとなるのがもはや風物詩。ちょうど先日最新版が出版されたので、お求めになる方はぜひ早めに。もし既に品切れとなってしまった場合には、昨年度の電子書籍版をおすすめしたい。内容はほぼ同じだし、売り切れることもないのだから、こういうときに電子書籍ってほんと便利だと思う。

「応募者の研究遂行能力」の書き方,重複応募制限の緩和などを加筆したベストセラー最新版!令和2年度公募に採択された申請書見本を追加。申請書の書き方を中心に、応募戦略、採択・不採択後などのノウハウを解説。

 

科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック

自分で書いた申請書は、だれかの目で批判的に見てもらうと、足りないところがよく分かり、改善の方向性が具体的に理解できる。ただ、いつもいつも身近に、自分の研究計画書を読んでくれる人がいるわけではない。であるならば、自分自身でも、いかに研究計画をよりよいものに、とくに審査員に内容がより具体的に伝わるものとしていくのか、真剣に考えねばならない。そんなときに役立つのが、上記書籍と同じ著者があらわした姉妹編『赤ペン添削ガイドブック』である。先の一冊と同様に、不採択という結果になった申請書のどこがダメなのか、どこをどう改善すればよいのか、そしてそれはなぜか? こうした具体的で実践的な疑問にこたえてくれる本書は、やはり類例のない一冊であり、とくに科研費応募が初めての人には極めて有用なものとなるはずだ。こちらも合わせておすすめしたい。

科研費応募のバイブル「科研費獲得の方法とコツ」の姉妹書最新版! 「科研費改革」後の申請書に対応!「他の人の申請書をたくさん見たい! 」「誰か私の申請書を添削してください! 」という声に応えたベストセラーの姉妹書第2版です。理系文系を問わず、さまざまな申請書の実例から学ぶスタイルで、どのような書き方がよくないか、どのように改良したらよいのかを丁寧に解説しています。審査委員の目線がわかり、申請書のブラッシュアップに最適です。採択の可能性を高めるための、添削に役立つチェックリスト付き!

 

研究資金獲得法の最前線:科研費採択とイノベーション資金活用のフロント

上記2冊は同じ著者によるものであるため、申請書作成にあたってのアプローチがどうしても偏ってしまう、という点は否めない。その観点からもうひとり別の著者による一冊を参考にするのは非常に意味があることだ。であるならば、この『研究資金獲得の最前線』がまさにその期待にこたえる一冊といえるだろう。本書でもやはり具体的な事例を提示し、研究計画の書き方のコツを丁寧に解説してくれる。上記2冊と比較して、このポイントは本書でも指摘されているゾ、ということが分かれば、それは複数の人が重要な点だと考えているという意味で、自分の申請書に忘れずに反映させたい視点となるはずだ。

2020年度 科研費採択の重要ポイントを解説!科研費の採択実例をもとに重要ポイントを解説。審査基準と研究計画調書の記述要領、 KAKENキーワード検索、ポジショニングに合わせた研究種目・審査区分の選択、審査委員の構成分析。さらに、イノベーション資金の活用に向けて、科学技術振興機構(JST)の競争的資金プログラムが目指すゴール、 研究開発スキーム、 資金規模、 提案書様式・作成要領、 選考の観点・審査基準、審査委員名簿、研究領域別の採択率など採択関連データを詳述。採択支援に数多く成功してきた著者が、研究資金獲得法の最前線を紹介。

 

できる研究者の科研費・学振申請書 採択される技術とコツ

本書は、科研費についてまとめた(非公式)ウェブサイト科研費.com の内容をもとにしてまとめた一冊である。ウェブサイトの内容だけでも十分だが、これまで上記で紹介してきた書籍にくわえてもうひとつ、ということであればこの一冊を挙げておきたい。

研究者に人気のサイト「科研費.com」が切り口・構成を変えて書籍化! 論理的かつユーモラスな語り口はそのままに、アイデアの生み出し方や文例の具体例など、半分以上が書き下ろしです。著者が添削してきた実際の申請書をもとに、作文やデザインのコツ、よくある間違いなどを豊富に掲載。さらにチェックリストやテンプレートなどの支援ツールで、短時間での申請書作成をお助け!科研費や学振に初めて応募する人も、何度も挑戦してきた人も必携の一冊。申請書だけでなく、論文や企画書等で説得力のある文章を書くための思考が身につきます。

 

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