*

グラデーションマップで類似英単語を効果的に使い分ける

公開日: : オススメ書籍, 英語

評判のよい英単語帳を新たに買って読んでみた。そしたらこれが期待以上によかったので紹介しておきたい。それがこの『英単語使い分けグラデーションマップ』だ。本書が強調するように、類似した英単語のちょっとしたニュアンスの違いまでをきちんと理解して正しい単語を選んで使うことは、日常会話はもちろんのこと、細かな意図まで正確に把握する必要があるビジネス英語、そして学術論文の執筆に至るまで、どのような場面でも欠かせないことである。

 

しかし、類似した英単語を細やかに使うということは、これまでの類書でも散々に述べられてきたことだ。本書の素晴らしいところは、そのちょっとした違いを「グラデーションマップ」という形で可視化したことにある。例えば、「推量」については以下のように図示されるように、possibly や perhapsという低い可能性から、certainly や definitely といった、より確度の高い可能性までを、まるで色使いのグラデーションのように、少しずつ、徐々に、次第に、可能性を高めていくにつれ、どのように英単語を使い分けるべきかを提案してくるのである。

 

 

 

「頻度」も同様に次のような解説となる。決して該当しない never から、いつも該当する always まで、その中間にあるもろもろの英単語を、これもまたグラデーションとして少しずつニュアンスを変化させて理解できるように設計されているのだ。

 

 

 

上記のような、推量や頻度は、日本語訳もそれぞれ異なるので、それらと合わせて覚えておけば、それほど難しくはないだろう。しかし、それでは果たして、日本語だと同じように「提案」と訳されることが多い、suggest/propose/recommend/advise は、どんなニュアンスの違いがあるかお分かりだろうか? その答えはぜひ本書で確認して欲しいのだが、こうした重要な英単語ではありながらも、われわれはその些細な差異に十分な注意を払ってきただろうか? そんな細やかな心遣いと気配りが、コミュニケーションをより円滑にしていくために必要なのは疑いようがないのだが、果たして自分にそれができていただろうか、と今までを省みるという点でも、非常に優れた英単語帳となっているのだ。

 

日本の英語教材市場において、これまでに出版された英単語帳は数えきれないほどある。だからこそ新規性を打ち出すのが難しいこの分野において、本書は、グラデーションを付けることで、些細だけれども非常に重要な類似英単語の差異を誰の目にも明らかなものとしたことで、とても大きな貢献をしていると思う。ぜひとも数多くの英語学習者に役立てて欲しい。いまなら電子書籍版が安くなっていておススメです。

 

英語で大事な用件や気持ちを伝える場合、類似した表現の使い分けには特に注意が必要です。例えば緊急性を伝えるsoon「すぐに」は、「そのうちに」というニュアンスが含まれていて緊急性が低いと受け取られます。緊急性が高いのはinstantly「直ちに」、そしてnow「今」です。重要という意味のimportantもこれらの語彙の中では重要度は低く、もっとも重要度が高く伝わるのはvital「極めて重要な」です。本書では、ビジネスや日常生活で使用頻度の高い語彙を意味別に分け、視覚的に表した「グラデーションマップ」で紹介します。語彙のニュアンスをイメージで刷り込むことができる、英語でのコミュニケーション能力を高めるために必携の一冊です。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

できる研究者の論文生産術:How to Write a Lot

これまで複数回にわたって紹介してきた、英語ライティングのおすすめテキストたち。古典的名著から新たなス

記事を読む

chess board

機械 vs 人間:チェス、予測、ヒューリスティック

今回もサッカー・ワールドカップ予想をしている、毎度注目の統計家ネイト・シルバー。その彼の著書『シグナ

記事を読む

【応募書類受付中】NASAが宇宙飛行士を新規募集|火星に行く大チャンス

もうご存知と思うが、アメリカの National Aeronautics and Space Adm

記事を読む

天才・奇才のおうち時間|日本に残る最後の秘境・東京藝術大学生の華麗な日常

NHKで放送中の「金曜日のソロたちへ」という番組をご存知だろうか? これは、「ひとり暮らし拝見バラエ

記事を読む

若き探検作家・角幡唯介の「極夜行」は最悪の旅だからこそ最高のノンフィクション

探検家・角幡唯介のノンフィクション作品を読んだことがある人も多いことだろう。NHKでも特集番組となり

記事を読む

歌舞伎町ホストの帝王・ローランドの言葉にみる至極真面目なプロ意識

現代ホスト界における圧倒的カリスマ、歌舞伎町の夜の帝王、そしてこの世には二種類の男(自分かそれ以外)

記事を読む

捏造と背信の科学者:繰り返される不正と、研究者の責任ある行動

STAP細胞の件で改めて考えさせられたのは、なぜこの一件だけではなく、研究不正・論文捏造がこれほどま

記事を読む

チェス界のモーツァルト、天才ボビー・フィッシャーの生涯が待望の文庫化

伝説的なチェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーの生涯を記録した傑作ノンフィクション『完全なるチェス』

記事を読む

『シグナル&ノイズ 天才データアナリストの予測学』のネイト・シルバーがおすすめする2冊の絵本がステキ

「今年続けて読みたい統計学オススメ関連書と教科書15冊」で紹介したうちの一冊が、ネイト・シルバーの『

記事を読む

Amazonソムリエが教える美味しいワインのえらび方

いま、Amazonがもっとも力を入れているもの、それは電子書籍、ではないですよね。Kindleはもう

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑