いまこそ本当の宇宙兄弟を目指す|13年ぶりの宇宙飛行士選抜試験いよいよ始まる
大ヒット漫画『宇宙兄弟』を挙げるまでもなく、僕らはみな子供の頃から宇宙が大好きだった。そして、あの頃の夢をあのまま持ち続けた一部の大人だけが、本当に宇宙飛行士を目指し、そしてその中のごく少数の精鋭だけが難関試験を突破して選抜され、あのとき思い描いた地球の向こうへと旅立っていった。そして、いよいよ待ちに待った次のチャンスがやってきました。なんと2021年中に、13年ぶりに宇宙飛行士選抜試験が実施されるとのこと!みなさま先週のオンラインイベントにももちろん参加され、準備万端でウォームアップ始めましたよね?
前回、日本国内でこの宇宙飛行士選抜試験が実施されたのは2008年のこと。10年ぶりに訪れた絶好の機会に、応募者は963名と過去最多を数え、そこから書類審査で230人に、1次選抜の筆記試験・医学検査で48人に、そして2次選抜の面接でついに10人の最終後者が選ばれた。そして、この10人が閉鎖環境のなかで最終試験を受け、高いストレスとプレッシャーをかけた状況で共同作業を行わせ、そこからリーダーシップやチームワークといった、宇宙飛行士としての最後の適性が判断された。このとき、それぞれの候補者が何を考え、どう行動したのか、その様子が克明に描かれるシーンは、漫画『宇宙兄弟』の序盤ではあるものの、大変に見ごたえのあるものだったし、今も鮮烈に記憶に残っている人も多いことだろう。
もちろん『宇宙兄弟』の漫画はフィクションなのだけれども、それが実にリアルなのは、このときの様子をドキュメントとして記録した以下の『宇宙飛行士選抜試験』を読むと明らかである。そして何よりも驚くのは、こうしたドキュメントを元にして漫画を描いたのではなく、丹念な取材をもとに、それまで秘密のヴェールに包まれていた宇宙飛行士選抜試験という謎に迫り、そこから想像力を膨らませて描いたのが、あの『宇宙兄弟』のあのシーンだった、というところだろう。これはもう驚愕のイマジネーションと言ってよいだろう。
2008年2月、日本で10年ぶりとなる宇宙飛行士の募集が、日本の宇宙研究・開発を担うJAXAによって発表された。応募総数は史上最多。そして、選抜試験自体も最難関で熾烈を極めるものとなった。本書は、この選抜試験の取材を日本で初めて許され、さらに候補者10人に絞られた最終試験では一部始終に密着することに成功した、NHKの番組スタッフによるドキュメンタリー。その10人がおかれた閉鎖環境という特殊な状況下で、彼らは何を考え、語り、行動したのかをつぶさに追ってゆく。宇宙という極限の環境において自らの命を賭け、かつ他の乗組員の命をも預かる宇宙飛行士とはどういう職業なのか。その資質と人間力に迫る。
そして、このときの最終選抜を見事に突破した精鋭3人のうちの一人が、油井亀美也である。自衛隊を経て39歳でJAXA宇宙飛行士候補者に認定された遅咲きにして「中年の星」である。
宇宙で撮影した数万枚の絶景写真の中から、91点を厳選。宇宙から宇宙を撮影した、他では見られない貴重な写真の数々を、撮影時のエピソードを交えながら1点1点紹介。
秒速8km、拳銃の弾の約20倍の速さで移動するISS(国際宇宙ステーション)から撮影するテクニックや、また、天体マニアである油井宇宙飛行士しか話せない宇宙空間での「星の探し方」など
内容盛りだくさん!4章では、宇宙飛行士になる前、自衛隊で戦闘機パイロットとして活躍していた時の油井宇宙飛行士の宇宙への思いや、宇宙滞在を通して得たこれからの夢について語る。油井宇宙飛行士が愛する「宇宙の美しい星々」と「儚い地球への思い」が詰まった唯一無二の一冊!
また、このときの宇宙飛行士選抜試験の様子は、試験を実施する運営側からも以下の書籍でまとめられており、取材を通じたドキュメントと、それを行うスタッフ側の両方の視点で読み比べると大変に興味深いのでおすすめである。
人類史上いまだ550人ほどしかいない宇宙飛行の経験者。この特別な職業の実態とは―。選抜試験の中身と求められる資質、ユニークかつ厳しい地上での訓練、搭乗待ちの焦燥感、そして宇宙での実験や船外活動まで。JAXA宇宙飛行士室長などを歴任し、宇宙飛行士たちの素顔と奮闘を間近に見てきた著者が、すべてを描く。日本人初の国際宇宙ステーション(ISS)船長・若田光一氏への特別インタビューも収録。
宇宙飛行士をどう選抜し、どう訓練し、どう育てるのか。そしてそこから浮かび上がる、「失敗が死につながる世界で必要とされる資質」とは――? ビジネスマンにも是非読んでもらいたい「人材採用・育成」の究極の姿。情報を“捨てる”勇気、平時の“対リスク”思考。“自分”を管理する力…一人の人生と日本の未来を懸けた「飛べる人材」を育む組織力とは?JAXA現役職員が初めて書く“選抜”の本質。
そして、最近になって出版された以下の『宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶』は、この分野におけるもっとも重要な一冊と言えるだろう。なにしろ、あの2008年の最終選抜に残った10人のうちの一人であり、そして残念ながら合格者3人には選ばれなかった著者が始めた明かす、あのときの話なのだから。スペースシャトルにあこがれて宇宙エンジニアになった著者が、宇宙飛行士になるために全身全霊を傾けて挑んだ10か月におよぶ選抜試験への挑戦と、夢破れてからのその後の12年の葛藤を描いた本書は、他の類書では実現できない熱量があり、ぜひそれを体感して欲しい。とくに、2021年実施予定の次の選抜試験に参加する予定の人にとっては言うまでもなく必読である。
日本一壮絶な宇宙への夢をかけた挑戦 !
2008~9年に行われた第5期 JAXA宇宙飛行士選抜試験。その試験でファイナリスト10人まで残った宇宙船技術者が、本気で宇宙飛行士を目指した挑戦のものがたり。
宇宙飛行士の採用基準は、忍耐力? 体力? 語学力…? 壮絶な選抜試験の舞台裏は、夢を追い地道に努力する若者たちが互いに刺激し合いながらも、己自身と戦う場だった ! そこで求められたものとは?
12年間語ることができなかった「選抜試験への挑戦」、「そこで出会った同志たちとの熱い絆」、そして「挫折からの長きに渡る葛藤」を赤裸々に描くことで、夢を追うことの美しさと悪魔性の両面を描きだす。宇宙への夢をかけた本気の挑戦を、筆者の肩越しに覗き見ているかのような臨場感で追体験できる。
大人気漫画『宇宙兄弟』に負けないリアルがここにある !
第0章 指先まで触れた夢
第1章 突然の報、10年ぶりの募集
第2章 ザ・宇宙飛行士選抜試験(前編)
第3章 宇宙飛行士の資質とは?
第4章 ザ・宇宙飛行士選抜試験(後編)
第5章 残酷な分岐点
第6章 2020年,宇宙への絆は消えない
終章 紡いでいく夢
そしてもう一冊のおすすめは、以前にもおすすめした小野雅裕の一冊『宇宙に命はあるのか』である。宇宙飛行士ではないものの、NASAで働くエンジニアである著者の作品にも、大学教授を辞して宇宙への夢を追いかけた熱い思いに溢れている。こちらもぜひ読んで頂きたい一冊だ。いずれにしろ、僕らが今も子供のころのあの純粋な気持ちを持ち続けているかどうかは、宇宙飛行士になれたかどうかなんかじゃなく、こうした本を読んでも今なお胸躍るかどうか、ということではないだろうか。宇宙の本を読んでアツくなれなくなったなら、そりゃあもう年老いたな、ということかも知れないね。だからこそ、2021年実施予定の宇宙飛行士選抜試験には応募しなくてもいいから(笑)、それでも少なくともこうした本をたくさん読んで思う存分ワクワクしようぜ。
●我々はどこからきたのか? ――答えはこの本に。
銀河系には約1000億個もの惑星が存在すると言われています。そのうち人類が歩いた惑星は地球のただひとつ。無人探査機が近くを通り過ぎただけのものを含めても、8個しかありません。人類の宇宙への旅は、まだ始まったばかりなのです――。
本書は、NASAジェット推進研究所で火星探査の技術開発に従事し、人気コミック『宇宙兄弟』の監修協力も務める著者が、人類の謎に挑む、壮大な宇宙の旅の物語です。
私たちはどこからきたのか。どこへ行くのか――。
テクノロジーとイマジネーションを駆使して、独自の視点で語る宇宙探査の最前線。胸躍るエキサイティングな書き下ろしです。
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