*

『ヤバい統計学』著者による新作『ナンバーセンス』で知る、アメリカ大学ランキングの舞台裏

公開日: : 最終更新日:2018/09/19 アメリカ, オススメ書籍

以前に「テーマパーク優先パスの価格付け」でも紹介したように、カイザー・ファング著『ヤバい統計学』は、身近な実例を数字を使って解説する刺激的な一冊である。書名は『ヤバい経済学』の大ヒットに便乗したものだが、むしろそんな小手先でなく、内容のおもしろさで訴求すればよいのに、と思わざるをえない。そんなオススメの一冊なのである。

 

 

 

credit: MervC via FindCC

credit: MervC via FindCC

 

 

そんな『ヤバい統計学』の著者カイザー・ファングが新たに著したのが、以下の『ナンバーセンス ビッグデータの嘘を見抜く「統計リテラシー」の身につけ方』である。これがまた確かにヤバいほど面白い内容だったので、簡単に紹介しておきたい。

 

 

 

僕らが日常生活で経験するような身近な題材を取り上げ、その背景にあるロジックを数字を使ってクリアに解説するのは、前作でも見せたようにこの著者の見事な腕前と言えるだろう。例えば、日本でも少し前に大きく盛り上がったグルーポンのビジネスモデル。各種のクーポンを発行することで、レストランを始めとする店舗側は一体全体どれくらい儲かる(または儲からない)仕組みなのか、その説明が実に分かりやすいのである。本書の翻訳書の出版が、まだグルーポンが日本でも大きな話題となっている頃であればよかったのに、というのが唯一残念な点ではないだろうか。

 

しかし、それ以上に僕が個人的に興味深く読んだのが、アメリカの大学ランキングについて。ご存じの方も多いだろうが、米国では US NEWS 等が毎年作成する大学・大学院ランキングが、ものすごい影響力を持っている。このランキングによって、その年にどれくらいの出願があるか、どれくらい優秀な学生が入学してくれるか、そして彼ら彼女らが卒業後どれくらい活躍し(将来多額の寄付をし)てくれるか、がかかっているものだから、大学運営サイドはこの順位の上下にそれこそ一喜一憂するのである。

 

university_ranking

 

 

だから、大学運営の事務側は、あの手この手を使ってランキングを上げようと血の滲むような努力をする。だけれども、それがまさかあんな手やこんな手だったなんて!というのが本書のもう一つの読みどころなのだ。これを(ずる)賢い試みと評価するか、ランキング操作の汚い手段と糾弾するか、それは読者の判断に委ねられているし、アメリカでも賛否が分かれている。しかし、ランキングを上げることを絶対的な目標とするならば、そしてそのルールが明確であるならば、ぎりぎりセーフの範囲内でやれることは全部やるという、米国で大学を経営する上での執念は十二分に伝わってくる。日本の大学関係者にとっては、アメリカはここまでやっているという舞台裏を知るということだけでも、本書の価値は高いように思う。ぜひとも一読をおすすめしたい。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

今こそ再び学ぶ『英語の読み方』|読めるか読めないかそれが問題だ

英語学習に関する書籍というのは、それこそ書店に溢れていて、玉石混交でどれを選んだらいいのか分からない

記事を読む

【Kindle特大セール】7月の月替わりセール注目の統計データ分析3冊

Amazonは今月は年に一度の最重要イベント「プライムセール」を実施することもあり、Kindle電子

記事を読む

米国大統領選挙2020を前に|憲法でふりかえるアメリカ近現代史

コロナ禍もあって史上もっとも盛り上がらないと言われている今年のアメリカ大統領選挙だが、副大統領候補が

記事を読む

好きなことだけを仕事にした、新潟県三条市の世界的アウトドアメーカー「スノーピーク」の経営

新潟県三条市に、あのアップルも見学に来る企業があるのをご存知だろうか?それがアウトドアブランドの「ス

記事を読む

most popular sport in the U.S. is NFL

世界で最も成功したスポーツビジネス:アメフトNFLとスーパーボウル

米国で最も盛り上がるスポーツイベントと言えば、アメフトのスーパーボウル。個人的にはいまだにアメフトの

記事を読む

2020年、本ブログで人気だった英語論文ライティングの参考書ベスト5冊

先日のエントリ「いま国語辞典がおもしろい|10年ぶりの大幅改訂による最新版あいつぐ」で紹介したように

記事を読む

今年の入学・進級祝いには、三省堂国語辞典第8版がおすすすめ

今年ももう3月、中学・高校・大学入試も結果が出た人も多いだろうし、これから最後のラストスパートという

記事を読む

キューバに行くなら今が最後のチャンス:アメリカ人観光客が殺到する前に

今年の「ニューヨーク・タイムズが選ぶ、今年絶対に行きたい世界52ヶ所」でも書いたように、今キューバが

記事を読む

都立浅草高校国語教師・神林先生が愛してやまない飲み屋と呑み助と大将と女将

自宅や実家での新年気分も終わり、今週末あたりから町の飲み屋に繰り出すか、という人も多いかも知れない。

記事を読む

数学ミステリー白熱教室|数学と物理学の驚異のつながり

「NHK『数学ミステリー白熱教室』本日最終回をお見逃しなく」でも書いたように、先週末でNHKの「白熱

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑