*

東大医学部合格者の6割が通う進学塾|受験エリートと塾歴社会

公開日: : オススメ書籍

先日、雑誌AERAの特集を読んだ。「東大理III合格者の6割が所属 受験エリートの“秘密結社”」というインパクトあるタイトルが示唆するように、東大合格を目指す受験生に圧倒的な王道コースがあるという記事だ。それは具体的には、まずは開成や筑駒といった中高一貫の超進学校合格を目指し、「SAPIX」に通う小学生時代に始まる。そして無事に合格を得たら、次は休む間もなく「鉄緑会」に通うという流れだ。ちなみに鉄緑会には13の超進学校が「指定校」として優先入学を許されており、その他の学校から入塾するのは極めてハードルが高い。

 

つまり、就職時等に学歴で差別されるとかフィルターにかけられるという話以前に、そもそも小中学校のうちからこうした有名進学塾に通う子供とそうでない子供のあいだに、その後埋められないほどの格差が生じているという内容の記事である。ちなみに、話はそこでは終わらない。

 

これは昨年の別の雑誌・別の記者による記事だが、「塾が神童を再生産する。SAPIX婚、鉄緑婚の子どもたち」という、これまたインパクトのあるタイトルだった。この記事では、SAPIXから超難関中高へと進学し、その後東大へ入学していったかつての神童たち同士が結婚して、その子供がまたエリート塾に通い始めるという「再生産」の現状をレポートしている。

 

このように、ときに「秘密結社」とまで呼ばれるような、SAPIXと鉄緑会という少数精鋭のエリート進学塾でいったいどのような教育がされているのか、ベールに包まれたその先を取材した一冊が、今回のAERA記事を書いた、おおたとしまさによる『ルポ塾歴社会』である。ちなみに、雑誌でも新書でも、読者の目を引くために少々煽り気味のタイトルが付けられているが、その内容と書きぶりについてのトーンは極めてフェアである。両塾のやり方や現状を一方的に批判するわけでもなく、かといってその教育や経営方針を手放しで礼賛するわけでもない。そうではなく、多くの人が知らないこのエリート塾の中身を冷静に伝えるべく、そこでどんなシステムでどんな授業が行われているのか、そして塾が何を目指しており、そしてなぜそれが多くの家庭に支持されているのかを丁寧に解説する。

 

そんな本書は現在の【最大70%OFF】幻冬舎 電本フェス で電子書籍版が43%引きと大変お買い得となっているので、興味ある人はぜひ今のうちに読んでおいたらよいと思う。日本の政官財にエリートを輩出し続ける東大、その東大入学者の多くは受験より10年も前からこうした有名進学塾で日夜切磋琢磨し、勉学に励んできているのだ。本書が描くその光と闇は、ぜひ自分の目で確認して頂きたい。間違いなく、なるほどと唸ることだろう。

 

開成、筑波大付属駒場、灘、麻布など進学校の中学受験塾として圧倒的なシェアを誇る「サピックス小学部」。そして、その名門校の合格者だけが入塾を許される、秘密結社のような塾「鉄緑会」。なんと東大理IIIの合格者の6割以上が鉄緑会出身だという。いまや、この二つの塾がこの国の“頭脳”を育てていると言っても過言ではない。本書では、出身者の体験談や元講師の証言を元に、サピックス一人勝ちの理由と、鉄緑会の秘密を徹底的に解剖。学歴社会ならぬ「塾歴社会」がもたらす、その光と闇を詳らかにする。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

史上最年少プロ棋士・藤井聡太の初勝利と『将棋の子』たち

史上最年少のプロ棋士が誕生したと話題となったのが2016年9月のこと。それから3か月が経ち、今度は若

記事を読む

経済学と歴史学そして自然実験

2010年に出版されていた "Natural Experiments of History" がよう

記事を読む

事実は小説より奇なり|大人が味わうノンフィクション

先日おすすめした『10代のための読書地図』と同じブックガイドでありながら、そのテイストが大幅に異なる

記事を読む

ジョジョの奇妙な英語にまさかの続編ガァァァ|あのクールな台詞はこれで学べ

以前に「ジョジョの奇妙な冒険で英語を勉強するなんて、無駄無駄無駄無駄無駄ですか?」でご紹介した英語テ

記事を読む

いま国語辞典がおもしろい|10年ぶりの大幅改訂による最新版あいつぐ

さて、「2020年、本ブログで最も売れたこの1冊」でも紹介したように、昨年の一年間でもっとも売れたの

記事を読む

Kindle電子書籍で安く読める、経済学および統計学の教科書

電子書籍の普及がますます加速しているが、大学や大学院で使う教科書はまだまだ電子化が遅れている。しかし

記事を読む

日本人の氏名はなぜこんなにも多種多様にして複雑怪奇なのか?

日本人はなぜにこんなにも自分の名前や家族のルーツに興味津々なのだろうか? NHKの番組だけ取り上げて

記事を読む

天才・奇才のおうち時間|日本に残る最後の秘境・東京藝術大学生の華麗な日常

NHKで放送中の「金曜日のソロたちへ」という番組をご存知だろうか? これは、「ひとり暮らし拝見バラエ

記事を読む

辞書は時代を映す「かがみ」|新語に強い三省堂国語辞典が8年ぶりの全面改訂

いよいよ登場、国語辞典の大本命、三省堂国語辞典(通称サンコク)の最新第8版! 創刊当初より、辞書とは

記事を読む

2020年、本ブログで人気だった英語論文ライティングの参考書ベスト5冊

先日のエントリ「いま国語辞典がおもしろい|10年ぶりの大幅改訂による最新版あいつぐ」で紹介したように

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑