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NHK探検バクモン「激闘!将棋会館」が面白かった|人工知能時代の天才棋士たち

公開日: : オススメ書籍

先日NHKで放送された「探検バクモン」をご覧になっただろうか?「激闘!将棋会館」と題された今回は、東京の将棋会館の内部に潜入。なんと、特別対局室でプロ棋士の対局を生観戦するなど、大変に見どころの多い放送内容だったのである。

将棋界のレジェンド、加藤一二三九段と東京の将棋会館を探検!プロ棋士の真剣勝負を生観戦し、将棋界の至宝、棋譜を拝見。若き天才、佐藤名人も登場し将棋界の未来を語る!中学生棋士・藤井聡太四段の活躍で注目を集める将棋界。日々、プロ棋士が真剣勝負を行う東京の将棋会館を加藤一二三九段と探検!普段は入ることができない特別対局室でプロの公式戦を生観戦する。続いて、日本将棋界の貴重な財産、“棋譜”を見せていただく。35年前、加藤九段が名人位を獲得した渾身の一手とは?さらに、爆笑問題が加藤九段とハンデ戦に挑む。若き将棋界の至宝、佐藤天彦名人も登場!人工知能との激闘を語る!

 

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近年の将棋界の大きな話題と言えば、ご存知の通り史上最年少でプロ棋士となった藤井聡太四段と、いまや名人を圧倒するまでに成長した人工知能の2つである。今回の「探検バクモン」でも、これらの最新トピックと絡めながら話を展開していったが、やはり短時間でまとめるのは難しかったようで、その点に物足りなさを感じた視聴者も多かったように思う。

 

だからこそ、今まさに知っておきたいこのトピックについては、ぜひ関連書を当たってより深く、現在の最先端について知っておきたいところなのである。まず最初に藤井聡太四段については、谷川浩司が著したばかりの新刊『中学生棋士』が素晴らしい。これまで中学生棋士は、加藤一二三、谷川浩司、羽生善治、渡辺明、そして藤井聡太の4人しか誕生していない。自分自身も過去に中学生としてプロ棋士となった谷川は、当時の自分と重ねるように、藤井聡太が生まれ育った愛知県瀬戸市を訪れ、家族に話を聞き、モンテッソーリ教育を受けた生い立ちや、詰め将棋づくりにハマった経歴等から現在の強さの秘密を垣間見る。また本書内でも紹介されているように、藤井聡太が知育玩具「キュボロ」で育ったというエピソードから、この玩具が爆発的に売れたのはまだ記憶に新しい。どの親にとっても、自分の子を将来の将棋名人のような頭の良い子にしたいという、強い願いのあらわれであろう。

日本全土がフィーバーに沸いた中学生棋士・藤井聡太四段の登場と破竹の29連勝。中学生棋士はこれまで5人現れ、その全員がトップ棋士として活躍した。早熟な才能はいかにして生まれるのか。そしていかにして開花するのか。自らも「中学生棋士」だった著者がその謎に迫る。

 

 

 

ちなみにだが、藤井聡太も熱中する(問題を解くのも作るのも)詰め将棋はじつに面白いもので、僕自身もこっそりハマっているのである。主に新幹線や飛行機での移動時間を使って練習問題に取り組んでいるのだが、これが頭の体操にぴったりなのである。高橋道雄の「パワーアップシリーズ」は、実戦形の詰将棋問題を揃えており、大変にやりがいがある。僕自身は5手詰問題はそろそろ卒業して、これから7手詰問題に取り掛かるところだ。ハマる人はおもいっきりハマるだろう詰将棋、本シリーズはKindle版なら現在半額セール中ということもあり、大変お買い得なシリーズとしてもおすすめしたい。

 

 

 

さて、そんな本書『中学生棋士』では、藤井聡太がひょっとすると、著者である谷川浩司が将棋界に築いた21歳での名人位獲得という最年少記録を塗り替えるだけでなく、現役最強の羽生善治をも超える天才である可能性に言及する点も特筆すべき内容だ。それに加えて、やはり圧倒的な強さで奨励会を勝ち抜いた藤井聡太の勝負強さにもページが充てられるが、個人的にはこのプロ棋士養成機関である奨励会の存在と仕組みは、もっと多くの人に知ってもらいたいと思っている。以前に「史上最年少プロ棋士・藤井聡太の初勝利と『将棋の子』たち」で紹介したように、この奨励会では、まだ幼い少年たちが、将来のプロ棋士を夢見て戦う場所であり、ときに命を削るようにして勝負に臨み、そして規定年齢までにプロになれなかった者は問答無用で退会せねばならない、そのような過酷な場所なのだ。藤井聡太が持ち前の勝負強さで重要な対局を勝ち抜いたと同時に、それは他の少年たちが負けたこと、そして夢に敗れ去っていったことを示唆する。そうしたエピソードを集めたのが、大崎善生の名著『将棋の子』だ。将棋会館で毎日のように対局を続ける少年たちを温かく見守ってきた大崎だからこそ書けたこの傑作を、Kindle版なら今だけ半額ポイント還元という大セールのこの機会に読んでみて欲しい。

奨励会……。そこは将棋の天才少年たちがプロ棋士を目指して、しのぎを削る”トラの穴”だ。しかし大多数はわずか一手の差で、青春のすべてをかけた夢が叶わず退会していく。途方もない挫折の先に待ちかまえている厳しく非情な生活を、優しく温かく見守る感動の1冊。第23回講談社ノンフィクション賞受賞作(講談社文庫)

 

 

 

さらには、若きプロ棋士を主役にした漫画『3月のライオン』も、個人的に興味深く読んだ。映画化もされているので、こちらも合わせてぜひどうぞ。ちなみに、『中学生棋士』のなかでは、藤井聡太が極めて熱心に読書していることも紹介されており、上記で言及した『将棋の子』の著者・大崎善生のもうひとつの傑作『聖の青春』(こちらもKindle版半額還元セール中)や、この漫画『3月のライオン』といった将棋関連の作品もしっかりと読んでいるそうだ。

その少年は、幼い頃すべてを失った。夢も家族も居場所も──。この物語は、そんな少年がすべてを取り戻すストーリー。その少年の職業は──やさしさ溢れるラブストーリー。

 

 

 

そして、『中学生棋士』の中でも語られる人工知能と将棋の関係については、やはり避けて通ることができない話題だ。著者の谷川浩司が日本将棋連盟会長を務めている間に、コンピュータ将棋が飛躍的に性能を向上させたのは誰の目にも明らかであり、本書の中でも、コンピュータが人間を上回ったことを認めざるを得ないと明解に述べている。また、そんな谷川浩司が会長を辞任した理由が、まだ記憶に新しいように将棋ソフトの不正使用に関するスキャンダルだったことは何とも皮肉である。

 

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しかし、いずれにしろ、これからの将棋を語る上で人工知能の存在はあまりにも大きい。その一方では谷川自らが『中学生棋士』で述べるように、われわれファンや世間は人間の挑戦に心を揺さぶられるのであり、まさにそれを証明したのが若き中学生棋士・藤井聡太であることに、異論はないだろう。だからこそ今後は、人工知能の凄みをきちんと理解しつつ、そのうえで人間がどこまで深く考えられるのかを、これまで以上の関心を持って見守っていきたいのだ。

 

そんな人工知能と将棋に関する決定版が、次の2冊だ。一つ目は、現役最強のプロ棋士・羽生善治が迫る『人工知能の核心』だ。以前に放送されたNHKスペシャルをまとめ、さらに拡張した本書では、日本が誇る最高の頭脳・羽生善治が人工知能の最先端をたずねる。この素晴らしい一冊が、Kindle版なら半額以下の大特価となっている。

人間にしかできないことは何か?二〇一六年三月、人工知能の囲碁プログラム「アルファ碁」が世界ランクの棋士を破った。羽生善治は、その勝利の要因を、「人工知能が、人間と同じ“引き算”の思考を始めた」とする。もはや人間は人工知能に勝てないのか。しかし、そもそも勝たなくてはいけないのか─。NHKスペシャル『天使か悪魔か─』の取材をもとに、その先を描く。天才棋士が人工知能と真正面から向き合い、その核心に迫る、“人工知能本”の決定版。

 

 

 

つづいておすすめしたいのが、こちらのノンフィクション『棋士とAIはどう戦ってきたのか』だ。当初はプロ棋士どころかアマチュア棋士にも歯が立たなかった将棋ソフトは、過去十年で飛躍的な進化を遂げ、そしてついには名人を圧倒するまでに成長した。その技術の黎明期から現在までの一連の流れを解説する本書は、この分野をざっと概観するにはうってつけの一冊だ。人間はもうトップ・プロ棋士であっても、機械に将棋で勝つことはできない、そう突きつけられた今だからこそ知っておきたい、激闘の歴史なのである。

二〇一七年四月一日、現役タイトル保持者が、はじめてコンピュータ将棋ソフトに敗れた。AI(人工知能)が、ついに人間の王者を上回ったのだ。それは予想だにしない奇跡だったのか、それとも必然だったのか?コンピュータ将棋の開発が始まってから四十年あまり、当初、「人間に勝てるはずがない」ともいわれたコンピュータ将棋は、驚異的な進化を遂げて、いま、人間の前に立ちはだかる。この間、棋士は、そしてソフト開発者は何を考え、何をめざしてきたのか?そして、人間とAIは、どのような関係へと向かうのか?将棋界の最前線を十数年取材してきた将棋記者の、渾身のルポルタージュ!

 

 

加えて、現在最高峰の将棋ソフトを産み落とした開発者・山本一成が自ら書いたこの一冊『人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか』がまた面白いのである。われわれはどうしても、「人間側」の視点から将棋ソフトや人工知能について語ることが多い。プロ棋士が負ければがっかりするし、ついに名人まで敗れたとなると落胆どころか絶望してしまい。しかし、その気持ちはもちろん十二分に分かるのだけれども、一方では将棋ソフト側・人工知能側の言い分にも耳を傾けねばフェアではないだろう。そんなときに大変興味深く読んだのが、まさに開発者の言い分である本書だったのだ。この一冊で面白いと思ったのは、人工知能が自ら学習するすべを手にした今、開発者ですら理解できないような質とスピードで機械がさらに賢くなっていることだ。加えて興味深かったのが、将棋の世界ではとかく人工知能が目の敵にされる一方(初めてプロ棋士が負けた時は通夜のような雰囲気だったらしい)、世界中にプレイヤーとファンがいる囲碁の世界では、もっと柔軟に人工知能を受け入れているという、両者の違い。様々な視点で現在の研究最先端を教えてくれる本書は、じつに刺激的な一冊としておすすめしたい。

2017年4月1日――人工知能「ポナンザ」が現役の将棋名人に公式戦で初めて勝利した日を、その生みの親である著者は次のように振り返ります。

「この日は、コンピュータ将棋の世界にとって記念すべきものになりましたが、同時に改めて、人間と人工知能の違いを認識させられた日ともなりました。
本書で紹介してきた人工知能(ポナンザ)の特徴と、世界に意味を見つけ物語を紡いで考えていく人間の思考法の限界が明確に表れたのです。」

本書の魅力は、このフレーズに象徴される「人工知能と人間の本質的な違い」
そして「知能と知性の未来」を、
◇プログラマからの卒業
◇科学からの卒業
◇天才からの卒業
◇人間からの卒業
という4つの章で見事に段階的に説明している点にあります。

そしてもう1つの読みどころは、著者が研究の最前線で遭遇した驚くべき事象や、囲碁・将棋のプロ棋士たちの人工知能への反応を鮮やかに記述していること。既存のどんな人工知能の解説書よりも面白くてわかりやすい、必読の1冊となっています。

 

 

 

というように、谷川浩司の新作『中学生棋士』には、若き天才プロ棋士・藤井聡太の生い立ちや強さのヒミツだけでなく、現在の将棋界を覆う人工知能の普及についても言及された良書である。一方、新書だからこそコンパクトによくまとまっているのだが、もっと詳しくこの分野について知りたいという人には、ぜひ上記のような書籍にも目を通してみることをおすすめしたい。いま、将棋がおもしろい。

 

 

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