今こそ再び学ぶ『英語の読み方』|読めるか読めないかそれが問題だ
英語学習に関する書籍というのは、それこそ書店に溢れていて、玉石混交でどれを選んだらいいのか分からない、そんな人も多いと思う。そのような出版状況のなかにあって、『英語独習法』などの良書が新書で出版されていることに注目していたのだが、また新たにおすすめしたい書籍がやはり新書で登場した。
それがこの『英語の読み方』である。すでに評判となっている一冊のようなので、僕だけが知らなかったのなら申し訳ない(苦笑)。今さらなのかも知れないが、これが実に素晴らしい内容だったので紹介しておこう。以下にあるような絶賛の声は、宣伝文句なのだから大幅に割り引いていいはずなのに、これが実際に超納得、激推奨、だったのである。
絶賛の声、続々!
「新書でここまでやるか」と驚愕した。英語本市場の眠りを覚ます黒船本
――読書猿さんビジネスにも趣味の読書にも活用できる、本物の英語力を築くための一冊
――越前敏弥さん北村さんのせいでむずむずと英語を読みたくなった
――阿部公彦さん特殊な言い回し、強調・省略の表現、見出し言語、Whole Part法……洋書やネットの英文を「読みこなす」ためのレッスン。
〈内容紹介〉
ネット上で海外発の情報に接する機会が増えた昨今、英語を読む力の重要性はますます高まっている。本書では、ニュース記事や論文、SNS、小説など、幅広いタイプの英文の読み方を指南。論理的な読み解きのセオリーを解説する。独学者にとって宝の山である各種サイトの活用法や、ネイティブでも間違えやすい表現など、「さらに上」を目指す人へのガイドも満載。巻末に、重要語彙・文法が身につく60の厳選例文を収録。
著者の北村一真は、現在は大学教員として教壇に立っているが、以前には学習塾・予備校で英語講師を務めていた経験をもつ。だからこそ、現在の日本の英語教育のなかで考えられている「使える英語」というものに、大きな違和感を持っていたのだという。つまり、聞いたり話したりと外国人とのコミュニケーションを図るための「使える英語」という考え方からは、英語の読み書きがすっぽり抜け落ちてしまっているという指摘だ。しかしながら著者は断言する。海外の多様なニュースサイトから情報を得て「読む」力や、SNSを通じて自分から情報発信したり交換したりするための「書く」力は、このような現代だからこそ実用的で必須のスキルなのだと。大いに納得だ。
加えて、より重要な指摘は、このように能動的に英語情報にアクセスし、ネットで日常的に使われている英語を問題なく読めるかどうかが、自分の能力を自ら高めていける人と、そうでない人との、大きな分水嶺となっている、という事実だ。まさにその通りで、英語がデキるデキない、よりも、デキるようになるために自分で頑張れるかどうかが、将来の大きな格差となるのは間違いない。そんな学生・予備校生・受験生を数多く見てきて著者だからこその、極めてリアルで生々しい指摘、それが本書を書く大きなモチベーションとなっており、数多の類書と一線を画す、ユニークな視点となっているのだ。
本書ではより具体的に、英語読解力の向上に役立つニュースサイトの紹介から、YouTubeやTED talks のおすすめ活用方法など、現代にマッチした学習方法が提案される。さらには、新聞・ニュース等で時事英文を読む訓練、そしてより論理的な文章を読むための論文読解まで、少しずつレベルを高めながら、「使える英語が身につく」とは一体どういうことなのか、を実感してもらえるような構成となっている。著者の願いは、本書を読み終えた人たちが、ここで展開された方法やアイデアを使って、自ら積極的に英語のネット記事を読んだり、英語のニュースや動画などを楽しんでいけるようになることなのだ。
素晴らしいタイミングで出版された本書は、現代を生きる人にとって、そしてこれから英語を特別なこととしてではなく普通のこととして使っていくためにも、必須の基礎スキルなのだと改めて実感させてくれる、とてもよくできた良書なのである。学生だけでなく、もちろん新社会人にとっても、そしてこれから大人の学び直しをしたいと思っている人にもおすすめできる一冊だ。ぜひ多くの人に読まれることを願っている。
Amazon Campaign
関連記事
-
ヒマラヤ山脈でイエティの足跡を発見|雪男は向こうからやって来た
ヒマラヤ山中で伝説の雪男「イエティ」の足跡を発見したと、インド軍が公式ツイッターに写真つきで投稿した
-
できる研究者の英語プレゼン術|スライド作成からストーリー展開まで
以前に紹介した、ポール・シルヴィア著の『できる研究者の論文生産術』は素晴らしい一冊である。著者は20
-
町山智浩の『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』と、ハズレのない現代米国社会批評シリーズ
「教科書に載っていないし、知ってても全く偉くもないUSA語録」でも紹介したように、町山智浩のエッセイ
-
【おすすめ経営書】ゼロ・トゥ・ワン:君はゼロから何を生み出せるか
話題の経営書『ゼロ・トゥ・ワン:君はゼロから何を生み出せるか』を、とても興味深く読んだ。著者はピータ
-
大学入試数学 不朽の名問100|大人のための「数学腕試し」
世に数多といる数学のファンと猛者のみなさま、この1冊はもうすでに読みましたか? 科学もので知られる人
-
世にもおもしろい英語|あなたの知識と感性の領域を広げる英語表現
小泉牧夫の『世にもおもしろい英語』は、サブタイトルにある通り「知識と感性の領域を広げ」、英語という言
-
最年少プロ棋士・藤井聡太とAI将棋の時代|人工知能が切り拓く新たな地平
ついにストップした藤井聡太四段の連勝記録。しかし、史上最年少でプロ棋士となってから、これまで29連勝
-
綻びゆくアメリカと繁栄から取り残された白人たち
2014年に翻訳出版された『綻びゆくアメリカ―歴史の転換点に生きる人々の物語』に今また注目が集まって
-
経済学と歴史学そして自然実験
2010年に出版されていた "Natural Experiments of History" がよう
-
サッカー・データ革命の時代に読んでおくべきこの5冊
データ革命が加速する世界最先端の現代サッカー 「ワールドカップの閉幕、そしてデータドリブン・サッカ