Kindle電子書籍でわくわく読む、角川書店の初心者向け数学シリーズ
今年はますます電子書籍市場の拡大に拍車がかかりそうだ。「2018年には米国と英国で紙書籍を追い抜くか」と報道されているが、ひょっとすると日本でも予想以上に早く、紙書籍の市場に迫る日が近いのかも知れない。
そんな日本市場の特徴は、「電子コミックの時代がやってきた:『ナナのリテラシー』が描く漫画業界のビジネスモデル革命」に書いたように、コミックの電子化が急速に進んでいることだろう。漫画という超強力コンテンツが、電子書籍化との相性がよかったこともあり、ものすごい勢いで市場が拡大しているのは上記事内のグラフが示すとおりだ。
だが、漫画が一足先に軌道にのせた電子書籍ではあったが、ここ最近は一般書の参入も相次いでいる。その一つの象徴が岩波書店。どちらかというと電子化に遅れていた同社だが、「岩波書店がAmazonで電子書籍Kindle版を配信開始:おすすめは『日本人の英語』」でも紹介したように、昨年末にはいよいよ岩波書店がKindleに大量のコンテンツ配信を開始した。
今ではご覧のように、赤いカバーでお馴染みの岩波新書の数々から、岩波文庫の古典的名作までが、ずらりと並んでいる。
さて、こうした岩波書店のように、電子化に消極的だった出版社もついに重い腰を上げる一方で、元々フットワークが軽かった出版社はますます電子化に力を入れているように見える。その顕著な例が、角川書店だろう。ドワンゴと経営統合し、より一層デジタルコンテンツに注力していくであろう同社だが、Kindle書籍の展開は昨年からさらに加速し、続々と新たな電子書籍を投入している。
そんな角川のKindle電子書籍の中で個人的におすすめしたいのが数学関連書である。具体的には、小島寛之の『数学入門』シリーズ三部作や瀬山士郎の『読む数学』シリーズ、さらには矢野健太郎から吉永良正まで、KADOKAWAには実に名作が多いのである。
とくに多作の小島作品の中にあっても、『無限を読みとく』はずば抜けて著者の熱量が多く、イチオシの一冊。それだけ熱い筆致となっているのは、実はこれが氏のデビュー作であるからなのだ。無限、存在、矛盾、パラドクス。そういう数学の魅力のひとつひとつを知って欲しい、そういう著者の願いが詰まりに詰まった名作となっている本書は、ぜひ数学が今までニガテだったという人にこそ読んで欲しいものだろう。まずはこの『無限を読みとく』だけでも、そんな数学の面白さを垣間見ることが出来る一冊となっているのだ。
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