*

パーソナルゲノム時代の医療:米国の予防的手術

公開日: : 最終更新日:2018/09/19 アメリカ, ニュース

本日の Kindle 日替わりセールに『遺伝子医療革命 ―ゲノム科学がわたしたちを変える』が登場。紙の単行本では2,300円するものが、電子書籍なら今日だけのセールとはいえ600円と定価の7割引きで買えるということに、改めて電子の衝撃を感じざるを得ない。とくに、こういう厚手のノンフィクションがセール対象になることは今のところそう多くはない。というわけでとりあえず買った。来週の出張時に読む。

 

未来への鍵は、あなたの遺伝子が握っている。癌、心臓疾患、アルツハイマーなど、わたしたちを脅かすリスクについて事前に知ることができるとしたら……? 個人個人の遺伝子を解析し、それぞれに適した治療や薬を処方する「パーソナルゲノム医療」時代はすぐ手の届くところまで来ている。世界を代表する科学者が遺伝医療の未来をユーモアたっぷりに解き明かす、希望にあふれたサイエンス書。

 

 

さて、こうした遺伝子解析とそれに基づく医療と聞いて思い起こすのが、アンジェリーナ・ジョリーが将来の乳がん予防のために、両乳房を切除した手術のことである。癌が見つかってさえいない段階での「予防的手術」というものに我々がまだ馴染みがなく、かつ有名女優がその手術を決断したこともあって各紙で大きく報道されたのはまだ記憶に新しい。

 

credit: kevin dooley via FindCC

credit: kevin dooley via FindCC

 

 

ジョリーの場合は母親を癌で亡くしており、ジョリー自身も「BRCA1」という遺伝子に変異が見つかり、それにより今後乳がんを発症する確率が87%と医師に診断されていたということだ。そして、その確率を5%以下に下げるために、今回の両乳房切除という大手術を決断している。

 

なぜ僕がここまで彼女の手術に注目しているかといえば、それはもちろん僕がアンジーの大ファンだから、ということではない。そうではなく、僕の友人がこれと全く同じ手術を受けたからに他ならないのだ。しかも姉妹二人がそろって、このジョリーの1年前にその手術を行っているのだ。「アンジェリーナ・ジョリーと乳がん予防とリスク観」に詳しく書いたように、それは僕にとってものすごく驚くことだったのである。

 

予防的手術というものが、しかも乳房切除という決断を、僕の身近にいた姉妹がしたことに、こうした遺伝子解析等にまったく馴染みのなかった僕が当時衝撃を受けたことに対しては、何ら不思議なことはない。ただ、いま改めて思い返すならば、こういう医療がハリウッド・セレブ達の間だけのものではなく、それこそ普通の庶民にまで普及しているということが、現代の米国医療の姿として強烈な印象を与えてくる。

 

全く門外漢ではあるものの、こんな身近なところに二人も経験者がいたということで、僕はもう少しこの新たな医療と、それが起こしつつある革命、そして米国の最先端事情をきちんと知っておきたくなったのである。そんな背景があるからこそ、この一冊『遺伝子医療革命』を手にとってみたわけなのだ。その米国友人が受けた診察や手術については大まかなところは色々と教えてくれたのだけれども、次回彼女らを訪ねる際には、もう少し詳しく聞いてみたいと思う。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

経済学Ph.D.のアカデミック・ジョブマーケット|AEA年次総会がシカゴで閉幕

1月の最初の週末、日本ではまだお正月気分が残っている頃に開催されるのが The American E

記事を読む

越後長岡藩の熱い夏|最後のサムライの夢の跡

新潟の長岡はこの夏おおいに盛り上がってます。一つ目の理由は、なんといっても映画『峠』がついに公開され

記事を読む

フェイスブック・データでみるバレンタインデー|世界中が愛を込めて

いつの間にかバレンタインじゃないですか、諸兄の皆様方、心の準備はOK? さて、昨年のこの時期にも「バ

記事を読む

中央アジア訪問記:シルクロードの要衝ウズベキスタン

報道の通り、先週から安倍首相がモンゴルおよび中央アジア5ヶ国を訪問している(NHKニュース)。しかし

記事を読む

岡崎所属のレスターシティ奇跡の優勝と、これからのサッカー・データ革命

プレミアリーグ大番狂わせのレスターシティ優勝 ご存知のように、今年の英国プレミアリーグでは、岡崎が

記事を読む

2018年ノーベル経済学賞はノードハウスとローマーに|著書が半額セール中

今年のノーベル経済学賞が先日発表され、受賞者はイェール大学のウィリアム・ノードハウス教授と、ニューヨ

記事を読む

連邦最高裁判事9人が形づくるアメリカの歴史

下の写真がアメリカ連邦最高裁判所だ。各種ニュース等での報道の通り、今回はこの最高裁が、これまで人工妊

記事を読む

捏造と背信の科学者:繰り返される不正と、研究者の責任ある行動

STAP細胞の件で改めて考えさせられたのは、なぜこの一件だけではなく、研究不正・論文捏造がこれほどま

記事を読む

第69期将棋タイトル王座戦五番勝負最終第5局、新潟県南魚沼市で開幕せず!

さてさて、永瀬拓矢王座に木村一基九段が挑戦する第69期王座戦五番勝負、ご覧になってますか? 現在の四

記事を読む

選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語

もうすぐ14年ぶりの宇宙飛行士が決まるって知ってましたか? いや、知っているどころか応募しましたよね

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑