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英語をイメージと塊で捉える『英会話イメージリンク習得法』

公開日: : 英語

『英会話イメージリンク習得法』のKindle版が、現在なんと90%オフという超大幅値引き中。非常にお買い得の本書を僕は先日読んだところなのだが、なかなかユニークな英語学習本だったので、簡単に紹介しておすすめしたい。

 

本書ではまず初めに、文化的背景も含めた英語と日本語のギャップを指摘する。そしてそのギャップをブリッジすることの難しさ、つまり英語→日本語への変換が困難であることに着目し、英語を英語のまま理解しようと提唱する。その際に重要になるのが、英語が持つ「イメージ」を共有すること、そして語順も含めて英語を「ひと塊」で消化することなのである。

 

 

序盤では、get や take といった英単語と一つの日本語に押し込めることの難しさを例に取り、「日本語の網」と「英語の網」が大きく異なっていることから解説を始める。だから、まずは英語の頭に切り替えることが大事なのである。そしてその理解の助けとして「イメージ」を挙げる。get はモノやコトに対しどういう行為なのか、take はヒトに対しどういう行動なのか、英語が備えるこうした「イメージ」を持つことで、英語のニュアンスのままに(日本語訳に結びつけることなく)理解することが可能になるのだ。

 

本書の中で僕が個人的に気に入っているのは、英語がもつ距離「感」と時制「感」について。この「感覚」が英語を理解する上で、もっと言えば相手の言動の中に隠れたニュアンスをきちんと理解する上でとても大事になる。例えば、相手にどう話しかけ、呼びかけるか。その際に重要になるのが自分と相手との距離感であり、その親しさの度合いによって、話しかけるトーンが変わってくる。

 

それ自体の解説はとくに目新しくはないだろうが、こうした距離「感」が他の様々な場面でも登場するというのが、僕にとっては新鮮だったのである。こういうことを解説した英語テキストはそう多くはないのではないだろうか。例えば、”It will rain tomorrow.” と “It is going to rain.” 日本語に訳すと一見同じように見えるこの文章だが、しかしながらそのセンテンスが内包するニュアンスは驚くほど異なる。気象予報士がお天気ニュースの中で使うのはどちらか、近所のおばさんとの会話で使うのはどちらか、という明確な違いがそこに存在しているのだ。

 

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もう一つの距離感は、時制と関連する。過去・現在・未来の時制を「イメージ」した際、過去形は現在から遠ざかるという点で距離があり、その距離感が丁寧な物言いに繋がっているのである。日本の中学校では、”Will you go to the supermarket for me?” に対し、”Would you go to the supermarket for me?” はより丁寧な言い方だとは教えるが、なぜそうなのかを教えてはいないのではないか。でも、この距離を取って婉曲するという考え方は、英語理解に欠かせない非常に重要なイメージだと思う。

 

英語学習の難関の一つに仮定法がある。日本語に訳しにくいことから多くの英語学習者にとっての鬼門となっているわけだが、その際も上記の距離感とイメージがあれば、随分と理解の助けになるのではないだろうか。なぜ仮定法で過去形が用いられるのか?本書では “You could study.” というシンプルな例文を題材に、(1)過去形を使うことで現実から距離を取り、(2)そのことによって過去と現在の間に余白を生み出し、(3)その余白に「現実にはありえないことだけど」という少々嫌味っぽい気持ちを込めている、と解説する。そういう説明の仕方をする英語テキストは決して多くはなく、その点で本書は非常にユニークかつ役立つ一冊となっているのだ。

 

 

 

僕がこれまで読んで使って役立ててきた英語テキストの中でも、本書はとても鋭い視点でアプローチしている良書だ。それ以外にオススメしてきたテキストも、「リズム・トーン・メロディの強弱と切替で考える英語スピーキング」 や、「Kindle 版がいま大幅値下げ中の、おすすめ英語テキストまとめ」で詳しく解説したように、英語を英語のまま吸収し、リズムや塊として捉えるようアドバイスするものが多かった。具体的には以下のような参考書が大変役立ったのだが、もしも英語学習に王道というものが存在するのならば、こうしたアプローチなのではないかと僕は思う。

 

ドクターヴァンスの以下の2冊は、「英語で考えるスピーキング」でまさに紹介したように、『英会話イメージリンク習得法』と同様に、英語→日本語へと変換せず、英語を英語のままに理解することを勧めている。

 

 

一方「英文ライティングおすすめ参考書」の中の一冊として推奨した以下の”Understanding Style” は、よい文章というものを sound & voice という観点から捉え直すという優れてユニークなアプローチを採用しているテキストだ。文章を読む際に、どの名詞・動詞・接続詞を強調して読んでいるか、そしてどこで息継ぎをして読んでいるかという「読み手側の論理」からの解説は、とくに英語ノンネイティブにとって役立つものだと言えるだろう。英語で考えるライティングとして推奨できる一冊だ。

 

Understanding Style: Practical Ways to Improve Your Writing

 

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