*

マッサン・ブームに乗っかって、ウィスキー「余市」を飲んでみた:今まで飲まず嫌いでごめんなさい

公開日: : 最終更新日:2015/08/20 オススメ, オススメ書籍

ニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝と、その妻リタをモデルとしたNHKの朝ドラ「マッサン」が面白い。いままで朝ドラなんて全然見たことなかったのだけれども、アメリカで「あまちゃん」を見てからすっかりはまってしまい、その後も「ごちそうさん」に「花子とアン」を経て現在の「マッサン」まで見続けているというわけなのだ。

 

その「マッサン」を見て、いまウィスキーが一大ブームとなっているらしい。とくにニッカでは生産が追いつかないほど注文が入っているほか、競合のサントリーも大幅増産の予定だという(産経新聞)。しかしながら、以前にも書いたように、僕はどちらかというとビールと日本酒を好んで飲んできたため、今までウイスキーなんて飲んだことがなかったのである。

 

だがしかし、このドラマ「マッサン」の面白さと、それが生み出した現在のウィスキー・ブームは見過ごせない。というわけで、そんな空気に思い切り乗っかって、僕もウィスキーを飲んでみようと思うに至ったのである。

 

photo credit: djwtwo via photopin cc

photo credit: djwtwo via photopin cc

 

そしてさっそく読んでみた(注:飲んでみた、ではない)。まずはニッカ創業者の竹鶴政孝の著書『ウイスキーと私』(現在Kindle版セール中)を読み、その魂に触れると同時に、今まで飲もうとも思わずにごめんなさいと謝罪する。ちなみに本書は竹鶴政孝の自伝であるが、これまではニッカウヰスキー株式会社が発行した単行本(非売品)としてしか存在していなかった著書を、今回のドラマ放送に合わせてNHK出版が改訂復刻したもの。グッジョブ!

 

 

本書『ウイスキーと私』の中では竹鶴政孝の宿命的なウイスキー人生が実に気持ちよく語られる。ウイスキーとの遭遇に始まり、スコットランド留学という幸運、そして妻となる女性リタとの運命的な出会いと湖畔で誓い合った二人の将来。帰国後は寿屋(後のサントリー)の山崎工場長として日本初のウイスキーづくりに腕を振るうが、やはり自分が信じる最高品質のものをつくりたいという思いは抑えられずに寿屋を退社する。そして北海道余市に大日本果汁(後のニッカ)を立ち上げ、当初のジュース生産販売を経て、ついにニッカウヰスキーを世に送り出す。

 

苦労と努力の物語なのに、それが全く悲壮さを漂わせていないのは、竹鶴政孝が持つ陽気で豪放磊落な性格のためであろう。北海道でも自ら野菜をつくり、山に出ては熊を狩り、海に出ては大魚オウヨを釣り上げる。実に楽しそうに人生を送っている姿に、読んでいるこちらの気持ちまでぐっと明るくなってくる。ニッカウヰスキーを飲む前に、いやもちろん飲んだ後にでも、ぜひとも読んで欲しいと思えるほどに、本書『ウイスキーと私』は素晴らしい創業者自伝となっている。書籍版は現在のブームで早くも在庫切れとなっているのだが、こういうときにこそ、品切れなどせず価格も安い電子書籍の便利さと優位性を改めて感じるというものだ。

 

 

そしてもう一冊読んでみた(注:まだ飲んでいない)。それが、創業者・竹鶴政孝の孫にあたる竹鶴孝太郎による『ウイスキーとダンディズム:祖父・竹鶴政孝の美意識と暮らし方』だ。孫の目から見て、竹鶴政孝とはどのような人物だったのかが語られるというのは、それだけで大変に興味深い。自伝と読み合わせることでより立体的に、政孝の姿が浮かび上がってくる。

 

 

本書を読んで個人的に印象に残ったことが二つある。1つ目は、「ダンディな人たらし」と孫が述べるように、竹鶴政孝の周囲からの愛され方である。しかし政孝の自伝を読んでも分かるように、こんな人物に惚れるなという方が無理な注文であろう。それくらい魅力的な人物だったのだ。そして2つ目は、竹鶴政孝と白洲次郎を並べて語っているところ。この二人に交流はなかったようだが、ほぼ同時期にイギリスに留学し、そして両者ともにダンディズムとプリンシプルの人であった。孫の竹鶴孝太郎でなくとも、この二人が直接会うシーンなどは誰もが想像してみたくなる光景なのである。

 

ただし、僕個人としては、白洲次郎とではなく、星一と竹鶴政孝を並べてみたくなった。「若き起業家のアメリカ」や、「明治の国づくりと人づくり」でも書いたように、星製薬の創業者(にしてSF作家・星新一の父)である星一も、明治の時代に海外へ出て、そして帰国後は自分が信じる事業に邁進した。その星一の猪突猛進な姿勢と、周囲から大いに愛された人柄、そして何よりも自分の事業を通じて国をそして人びとの暮らしを豊かにしたいと願ったその気持ちは、ウイスキーづくりに一生をかけた竹鶴政孝と相通づるものがあると言えるだろう。

 

 

というわけでここまで来るのに思わず時間がかかったが、上記二冊を読み終えて今ようやく、ようやくそのシングルモルトウイスキー「余市」に口をつけることになりました!結果、リーズナブルな価格で旨いじゃあないか。竹鶴さん、今まで飲まず嫌いで本当にごめんなさい。

 

nikka-yoichi

 

 

こうして僕は、NHK朝ドラ「マッサン」のブームに便乗してニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝の物語を読み、そして口にした初めてのウイスキーで、きっちりファンになってしまったのである。駆け出し初心者ではあるものの、次はぜひ「竹鶴ピュアモルト」を頂いてみたいと思う。そして続けて、竹鶴政孝が初代工場長として手腕を発揮したサントリー「山崎」へと飲み進めていこう。しかもタイミングよく先日は、サントリーの「山崎」が世界最高のウィスキーと評価されたというニュース(朝日新聞)。いまウイスキー業界がものすごく盛り上がっているようだ。ぜひ飲もうじゃないか。

 


 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

錦織圭の全米オープンテニスをデータ生中継で応援しよう|初のグランドスラム優勝を目指して

全米オープンテニスに出場している錦織圭が見事に4回戦を突破し、2年ぶりのベスト8進出を決めた。ビッグ

記事を読む

越後妻有アートトリエンナーレ「大地の芸術祭」|おすすめの読むべき4冊と訪れるべき5ヶ所

「今年の夏は「大地の芸術祭」越後妻有アートトリエンナーレへようこそ!」で紹介したように、今年は3年に

記事を読む

綻びゆくアメリカと繁栄から取り残された白人たち

2014年に翻訳出版された『綻びゆくアメリカ―歴史の転換点に生きる人々の物語』に今また注目が集まって

記事を読む

ニューヨーク・タイムズが選ぶ、今年絶対に行きたい世界52ヶ所:2016年版

さて今年もこのシーズンがやってきましたね。ニューヨーク・タイムズ紙が発表する「今年絶対に行きたい世界

記事を読む

puma

スポーツの統計学|データ・サイエンティストたちのゲーム分析

スポーツ界に広がるデータ革命 これまで何度か書いてきたように、スポーツとデータというのはとても相性

記事を読む

秘境・辺境探検家の高野秀行はセンス抜群の海外放浪ノンフィクション作家

世界の秘境・辺境探検家である高野秀行の作品はどれも類例のない傑作ノンフィクションばかりなのだが、本書

記事を読む

春の一大イベント・新潟淡麗「酒の陣」が今年も開幕|県内90の蔵元と500種類の日本酒が勢揃い

今週の土曜と日曜日の二日間は、いよいよ日本酒党が待ちに待った年に一度のお祭り「酒の陣」ですよ!200

記事を読む

NHK探検バクモン「激闘!将棋会館」が面白かった|人工知能時代の天才棋士たち

先日NHKで放送された「探検バクモン」をご覧になっただろうか?「激闘!将棋会館」と題された今回は、東

記事を読む

人はなぜ走るのか?を問う『Born to Run~走るために生まれた』は、米国ランナーのバイブル

米国で異例のベストセラーとなり、何度目かのランニング・ブームを引き起こした一冊『Born to Ru

記事を読む

論文捏造はなぜ繰り返されるのか?科学者の楽園と、背信の科学者たち

先週は、小保方晴子氏の論文「学位取り消しに当たらず」(NHK)との報道が新たな議論を引き起こしている

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

あまりにも残酷なプロテニス選手の実生活|世界ランキングと超格差社会

今年の全仏オープンテニスは、優位と見られていたナダルが、予想以上に周り

全仏オープンテニス2019|グランドスラム初制覇を目指す錦織圭の戦い

錦織圭、昨日のベスト16の試合では、雨天順延2日間に渡るフルセットの末

ヒマラヤ山脈でイエティの足跡を発見|雪男は向こうからやって来た

ヒマラヤ山中で伝説の雪男「イエティ」の足跡を発見したと、インド軍が公式

今年の科研費採択者におすすめ|研究関連事務を劇的に効率化するクラウドサービス

さて、先日は今年度の科学研究費助成事業(科研費)の採択者が発表された。

日本に残る最後の秘境へようこそ|東京藝術大学のアートでカオスな毎日

いよいよこの書籍が文庫化されましたね。そう、2016年に出版され大きな

春になり大人になったら辞書を買おう|これがいま日本で最も売れている国語辞典だ

さて今年も4月になり、進級・入学・入社とおめでたいイベントが相次いだ。

ブラックホールを初めて写真撮影|いまこそ宇宙論がおもしろい

さて先日は、人類史上初めてブラックホールの撮影に成功したという記者会見

japanese dictionaries 1
卒業・進級・入学のお祝いに|今も昔も定番の国語辞書をプレゼント

いよいよ春も近い。それはすなわち、卒業シーズンを迎え、そして進級・入学

PAGE TOP ↑