英語アカデミック・ライティング最高の一冊に日本語版が登場
英語のアカデミック・ライティングの書籍は数多くあれど、いやだからこそ、どの一冊を選べばよいか、悩んでいる人も多いことだろう。僕自身、これまで大いに悩み、そして様々なテキストを手に取りながら、今もよりよいものがないか、常に考えているところである。そんな自分自身の実体験から、自信をもっておすすめできる英語ライティング書籍をまとめて解説したのが、以下の4回の連続エントリだ。ぜひ参考にして頂きたい。
photo credit: Unhindered by Talent via photopin cc
そして数多くのラインナップの中から、これぞ決定版としておすすめしたのが、Adrian Wallwork による素晴らしい一冊 “English for Writing Research Papers” だ。著者がこれまで、英語ノンネイティブの学生の論文執筆を指導してきた豊富な実勢から、ノンネイティブだからこそやってしまいがちな、分かりにくい英語・読みにくい英語を、それではどう修正していけばよいのか、を懇切丁寧に指導する。そんなアプローチだからこそ、僕らにとっては大変に役立つ、それこそ目からウロコな指摘が盛りだくさんなのだ。英語アカデミック・ライティングの本を一冊選ぶなら、個人的見解では、これで決まりです。
英語論文執筆やプレゼンテーションをサポートするブックシリーズEnglish for Academic Research Series所収の一冊。本改定版は、論文執筆サポートをテーマとして好評な初版に、新たな章を追加して出版された。国際的な雑誌での発表は、学界で成功するうえで鍵となる。本書は、英語が母国語ではない研究者が執筆した論文が、英語の語法の問題や構成の不備、内容の不十分さゆえに雑誌への掲載をしばしばリジェクトされることを明らかにした査読者のレポートと、1000件を超える原稿調査に基づくガイドブックである。発表済み論文や未発表論文を例にあげて、以下のトピックについてわかりやすいルールやコツを伝授。
• 原稿の準備と構成
• 読みやすさの向上と、冗長さやあいまいさをなくし、簡潔に書くことで英語のミスを減らす
• 査読者の関心を惹くタイトルと抄録の書き方
• 論文の各部分(緒言、方法、考察等)に何を盛り込むか
• 特許申請や寄稿文を際立たせるには
• 盗用を避ける
• 研究の限界を検討
• 正しい時制や文体の選択
• 編集者や査読者の要求を満たすこの新版には40%を超える新たな資料を収載し、さらに2つの章を追加し、独習や授業向けの興味をそそる記事や考察ポイントを盛り込んだ。本書は生徒のトレーニングや、有益で関心の高い授業を準備するコツが満載のすぐれた一冊である。
そして、そんなベストの一冊と言える本書に、ついに日本語版が『ネイティブが教える 日本人研究者のための論文の書き方・アクセプト術』として登場したのである。英語論文を書くためのテキストなら、やっぱり英語で読んだ方がよいのでは、という疑問はもっともだ。そして、問題ないなら上記の英語版テキストにあたればよいと思う。だけどしかし、もしも日本語で丁寧な説明を読みたいという思いを抱いているなら、そこはやっぱり日本語訳にあたればよいだろう。こうしたニーズが確実にあるからこその日本語訳出版なのだと思うし、これを機にさらに読者層が広がっていくことを期待したい。
また本書は、著者ウォールワークによる一連の英語学術研究シリーズの第1作であり、その他続編も素晴らしい出来となっているので、ぜひそれらも合わせてご覧頂きたい。いずれにしろ、英語で論文を書くという作業を前にして、これほど有用なガイドブックを僕は他に見たことがない。自信をもって力強くおすすめしたい、本当に優れたテキストなんです。ただし、日本語版は原著第1版をもとにした翻訳のため、最新版に興味があるなら、やはり上記の原著最新第2版を手にすることをおすすめしたい。
世界中で使われているノンネイティブのバイブル “Adrian Wallwork: English for Writing Research Papers 2nd ed.(English for Academic Research), Springer, 2016” が待望の邦訳!
・これほど網羅的で深い示唆を与えてくれる指南書はほかにない!
・ネイティブの思考・語感で、ワンランク上の論文に!
・そのまま使える論文英語表現を580例も掲載!【本書「日本の科学者の皆さんへ」より】
本書は3つの基本的ガイドラインに基づいて構成されています。
1.原稿は常に査読者と読者を念頭に置いてその期待に沿うように書く
2.模範的な論文を読み、よく使われる表現を学び、また雛形として利用する
3.冗長さやあいまいさを省いて簡潔に書けば、読みやすさは高まる【主な内容】
第1部 英文ライティングのテクニック
第1章 論文執筆の計画と準備
第2章 センテンスの構造:語順
第3章 パラグラフの構成
第4章 長いセンテンスを分割するテクニック
第5章 簡潔で無駄のないセンテンスの作り方
第6章 あいまいな言葉、表現、繰り返しを避ける
第7章 [Who+Did+What]の構造を明確にする
第8章 研究結果を強調するテクニック
第9章 研究の限界の書き方のテクニック
第10章 他人の研究を建設的に批評する方法
第11章 プレイジャリズム(剽窃)とパラフレージング(置き換え)第2部 論文構成のテクニック
第12章 論文タイトルのつけ方
第13章 要旨(Abstract)の書き方
第14章 序論(Introduction)の書き方
第15章 文献レビューの書き方
第16章 方法(Methods)の書き方
第17章 結果(Results)の書き方
第18章 考察(Discussion)の書き方
第19章 結論(Conclusions)の書き方
第20章 投稿前の最終チェック
第21章 ネイティブが教える論文英語表現
Amazon Campaign

関連記事
-
-
待望のシリーズ最新刊|『英熟語図鑑』で学ぶ基本動詞を使った自然で豊かな英語表現
以前に「効果抜群おすすめ英単語超学習法|語源から理解して飛躍的に語彙を広げる」でもおススメした、『英
-
-
春の卒業・入学シーズンを前に国語辞典をしっかり選ぼう|やはりオススメの定番4冊
さていよいよ3月となり、入試の合格発表から卒業式・入学式の季節となった。素敵なサクラが咲くよう期待し
-
-
超ヤバい経済学者のゼロベース思考—どんな難問もシンプルに解決できる
『ヤバい経済学』が世界中で大ベストセラーとなったばかりか、その続編『超ヤバい経済学』もヒットさせた売
-
-
心を打つ名言、心を挫く駄言|絶版を目指した出版「駄言辞典」がおもしろい
今年出版された「駄言辞典」をご存知ですか?こんな本、知らなくてよいのかも知れない。なぜなら、最初から
-
-
いまこそ将棋がおもしろい|人工知能と不屈の棋士
先月出版されたばかりの『不屈の棋士』を読み終えたところなのだが、これが実に読み応えのある一冊だった。
-
-
出版不況なのに「TikTok売れ」で緊急重版|あの実験的小説の新しい売り方・売れ方
先日紹介した書籍『10代のための読書地図』は、本当におすすめなので、ぜひまだの方には読んでみて欲しい
-
-
アメリカ連邦最高裁判事9人<ザ・ナイン>が歴史をつくる「この国のかたち」
米連邦最高裁判事ギンズバーグの死去とその後任選びで、目前に控える米国大統領選挙がさらに混沌としてきた
-
-
[おすすめ数学テキスト]政治学・社会学のための数学基礎講座
経済学Ph.D.課程の多くでは、夏の間に新入生向け の数学基礎講座(通称 Math camp)を開講
-
-
町山智浩の『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』と、ハズレのない現代米国社会批評シリーズ
「教科書に載っていないし、知ってても全く偉くもないUSA語録」でも紹介したように、町山智浩のエッセイ
-
-
NHKの異色数学番組『笑わない数学』第2回は「無限」の魅力と魔力に迫る
さて、初回が放送されたばかりのNHK『笑わない数学』、ご覧になりましたか? 第1回では「素数」の謎に