*

NHK戦争特番:日本とアメリカとその狭間で

公開日: : 最終更新日:2014/10/19 アメリカ, 日本

毎年夏が来る度にテレビ各局、新聞各誌が特集する太平洋戦争と終戦。その中でも個人的に強烈に印象に残っているのが、次の3つだ。

 

いずれも素晴らしい出来のドキュメンタリーなのだが、その『長い旅路』が先週NHK-BSで再放送されたのをご覧になっただろうか?

太平洋戦争が始まったとき、日本には4万人を超える日系アメリカ人がいた。アメリカで生まれ、戦前日本に渡った“日系二世”の多くが、日本軍に徴兵され、母国アメリカと戦った。差別やいじめにあい、スパイ扱いされた者。兄弟で敵味方に分かれて戦った者。通信傍受や宣伝放送の任務につかされた者。日本とアメリカ、2つの国のはざまで苦悩し続けた日系二世の戦争を描く。

 

日本から見た戦争論、アメリカから見た戦争論ではなく、その狭間で引き裂かれた日系アメリカ人という中間の立場に視点を置いたことが、これら一連のドキュメンタリーを類なきものとしているのは明らかだ。そして、これらの特番をアメリカで視聴したことがまた、僕の脳裏に強烈に焼き付いている理由でもある。

 

medium_6840269621photo credit: VinothChandar via photopin cc

 

ともすれば、日本の歴史から抜け落ちてしまいがちな日系人の歴史を再確認するのに、これほど適した番組はないと思う。渡辺謙のシリーズ再放送も願いたい。また、これらドキュメンタリーをきっかけにアメリカ日系人の歴史に関心を持った僕が読んだのが、山崎豊子の『二つの祖国』そして真保裕一の『栄光なき凱旋』だ。どちらも徹底した取材をもとに描き切ったからこそ、リアリティ溢れる小説となっているのだろう。僕はこれらの小説を通じて、「イッセイ」「ニセイ」「キベイ」という言葉と、それらが言外に持つニュアンスを知った。

 

とくに、山崎豊子があるインタビューで答えていたのを思い出す。曰く、小説の良し悪しは題材選びにかかっており、日本とアメリカの間に立たされた日系人という視点を得たとき、この小説(『二つの祖国』)が絶対によいものに仕上がると確信したと。その視点に立った後は、山崎豊子のいつも通りもしくはいつも以上に拘った取材が、本書を物語性が高いながらも現実感に満ちたものとしているのだろう。

 

最後に、上記NHK-BSの『長い旅路~日本兵になったアメリカ人<前後編>』は、そのタイトルにも明示されているように、戦争当時、日本にいた日系アメリカ人に焦点を当てたものである。小説やドキュメントの題材としてはアメリカにいた日系アメリカ人が比較的多く取り上げられる中、もう一方の立場に注目したという点においても、このドキュメンタリーは企画構成が優れていたと思う。先週の再放送を見逃した方のためにも、ぜひこちらも再々放送を願いたい。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

【応募書類受付中】NASAが宇宙飛行士を新規募集|火星に行く大チャンス

もうご存知と思うが、アメリカの National Aeronautics and Space Adm

記事を読む

NHKアニメ『英国一家、日本を食べる』が毎回ハイクオリティで、つい新宿・思い出横丁に飲みに行ってしまった

「大ヒット『英国一家、日本を食べる』がなんとNHKでアニメ化|初回放送が予想以上におもしろかった」で

記事を読む

ハートマウンテン日系人強制収容所の、貴重なプライベート写真集

7月に出版されたエッセイ写真集『コダクロームフィルムで見る ハートマウンテン日系人強制収容所』を読ん

記事を読む

gated community 1

アメリカ地方自治体の分断:富裕層による独立運動

先日のNHKクローズアップ現代を興味深く視た。「“独立”する富裕層 ~アメリカ 深まる社会の分断~」

記事を読む

TSUTAYA運営の市立図書館に続き、今度は学習塾ノウハウを公教育に導入:いま話題の佐賀県武雄市に行ってきた

佐賀県武雄市がまた新しい取り組みを始めたようだ。 (NHKニュース)佐賀県武雄市は、来年の春から公

記事を読む

現代アメリカ社会の象徴:メガチャーチの誕生と新たなコミュニティの創造

毎年クリスマスを迎えるたびに思い出すことがある。それは若い頃の甘酸っぱいデートの記憶、ではもちろんな

記事を読む

人はなぜ走るのか?を問う『Born to Run~走るために生まれた』は、米国ランナーのバイブル

米国で異例のベストセラーとなり、何度目かのランニング・ブームを引き起こした一冊『Born to Ru

記事を読む

shinkansen

なぜ日本の新幹線は世界最高なのか?定刻発車と参勤交代

"Why Japan's high-speed trains are so good" というEco

記事を読む

アメリカで最もお世話になったあの老夫婦が本当にこの夏日本にやって来た

今年の夏は忙しかった。何に忙殺されていたかと言えば、それが実は「アメリカで最もお世話になったあの老夫

記事を読む

町山智浩の『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』と、ハズレのない現代米国社会批評シリーズ

「教科書に載っていないし、知ってても全く偉くもないUSA語録」でも紹介したように、町山智浩のエッセイ

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

NHK「最後の講義」物理学者・村山斉を見逃すな

先日のNHK「最後の講義」みうらじゅんが圧倒的に面白かったのは既にお伝

NHK「最後の講義:みうらじゅんの幸福論」が面白すぎた

2/2(土)に放送されたNHK「最後の講義」に登場した、みうらじゅん。

今年も確定申告の時期がやってきた|便利なクラウド会計で手続きを簡略化

さて、2019年もあっという間に12分の1が過ぎ、早2月を迎えた。それ

錦織圭の死闘|全豪オープンテニスが面白い

今年の全豪オープンテニスがめちゃくちゃ盛り上がってますね。観ましたか、

若き探検作家・角幡唯介の「極夜行」は最悪の旅だからこそ最高のノンフィクション

探検家・角幡唯介のノンフィクション作品を読んだことがある人も多いことだ

箱根駅伝「幻の区間賞」と関東学連チーム出場の是非

来年もまた正月から箱根駅伝にくぎ付けとなってしまう、そんな人も多くいる

打倒青山学院|来年の箱根駅伝をもっと面白くするこの5冊

青山学院の5連覇がかかる来年の箱根駅伝、僕もまた正月の2日間テレビの前

若い読者のための経済学史と哲学史

米国イェール大学出版局の "A Little History" は、歴

PAGE TOP ↑