科学と度量衡の歴史|キログラムの定義が130年ぶりに変更
さて、先日のニュースでも大きく報道された通り、来年から「キログラム」の定義が変更されることとなった。
(毎日新聞)重さを量るときなどに使われる質量の単位「キログラム」の定義が130年ぶりに変わることが、フランスで開かれた国際会議で決まりました。私たちのふだんの生活に影響はありませんが、科学的な分析などをより正確に行うことができるようになると期待されています。
質量の単位「キログラム」の定義は、1889年以降、フランスのパリ近郊に保管されている、「国際キログラム原器」と呼ばれるプラチナとイリジウムを混ぜた合金が基準になってきました。
しかし、汚れや傷などでごくわずかながら変化することがわかり、定義の見直しが検討されてきました。
こうした中、パリ近郊のベルサイユで16日、長さなどの単位の国際的な定義を決めている国際度量衡局が総会を開き、「キログラム」や電流の単位の「アンペア」など4つの単位の定義を変えることを決めました。
このうち「キログラム」は、原子の重さを基準とするものになります。
新しい定義は、世界計量記念日に合わせて来年5月20日から適用され、この結果、「メートル」や時間の「秒」といった、基本的な7つの単位の定義はすべて、理論上変化しないものになります。
科学の歴史は、度量衡を定める歴史でもある。我々が日常生活で、そして科学を発展させるためにも、長さを測ったり、重さを計ったりするモノサシは、それ自体が固定されていなければならない。しかしながら遥か大昔には、いまもなお “feet” の名詞に名残を残すように、王様の手足の長さが基準となったりするなど、極めて主観的なものが使われていた。または地球の長さを基準にしたとしても、その地球の形が長年を経て変化してしまうのも困りものなのである。
だからこそ、近代になってからの科学はこうした主観を排し、自然界にある定数をもとにして、永遠に変化しないモノサシを定めることを大きな目標としてきた。その結果として、長さや重さ、そして時間をはかる単位は次々と、理論的に変化しないものを獲得してきたのだが、そのなかで唯一残っていたのが、この「キログラム」だったのだ。こうした歴史的な背景は、以下のロバート・クリース『世界でもっとも正確な長さと重さの物語』に詳しいので、ぜひ読んでみて欲しい。クリースのこのシリーズは極めて明快かつ知的好奇心を満たす内容であり、本書も強くおすすめしたい一冊だ。
長さや重さの単位をどう決めるかの変遷で知る科学史ストーリーです。『世界でもっとも美しい10の科学実験』『世界でもっとも美しい10の物理方程式』の著者が、科学史(特に物理学)のベースとなる普遍的な単位系に対する模索について、哲学っぽいトリビア的な知識を開陳します。長さと重さの単位となるメートルやキログラムは従来では「原器」と呼ばれる人工物を基準としていましたが、長さの伸縮や重さの増減のために、信頼性が揺らいできました。長さについては光の速度を基準とすることが決まっており、方向性の枠組みはある程度決まっていましたが、2014年11月の国際会議でキログラムを再定義することになりました。これは、原子レベルの測定をベースとするものです。本書の第12章の「さらばキログラム」は、キログラム原器との分離とキログラムの再定義を詳述しています。
また、今回の「キログラム」定義変更に際して、日本代表として国際会議に出席した産業技術総合研究所計量標準総合センターの臼田孝センター長は、以下の新著を出版している。今回の130年ぶりの定義変更という、科学界の一大イベントに関心がある人は、上記クリースの科学の歴史と合わせて、本書で科学の現在と最前線をぜひとも垣間見ていただきたい。
「キログラム原器」がなくなる!? 2019年、質量の単位の定義が130年ぶりに変わります!
1889年のメートル条約決議以来、世界中のあらゆる「重さ」の基準であった「国際キログラム原器」がその役目を終えようとしています。なぜ新しい定義が必要なのか?単位を決めるとはどういうことなのか?数億分の1をめぐる計測の世界で展開されるメトロロジスト(計量学者)の挑戦を追えば、そこには「単位」と「科学」の深い関係が見えてきます。
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