*

若い読者のための経済学史と哲学史

公開日: : オススメ書籍

米国イェール大学出版局の “A Little History” は、歴史や文学そして経済学といった学問分野を丁寧に解説する人気のシリーズだ。ひとつひとつの専門分野の概要やこれまでどのように発展してきたのかといった背景について、コンパクトにまとめた良書であり、学問体系を見通しよく理解するためにとても役立つ内容だ。

 

そんなおススメの一冊である『若い読者のための経済学史』が、現在開催されている「冬のKindle本セール」のおかげで、期間限定ながら何と54%オフという大特価となっているのだ。これは絶対に見逃せない好機だと、声を大にして宣伝したいのである。

 

 

 

この人気シリーズに待望の日本語訳がようやく出版されるようになってきており、その第一作として選ばれたのが経済学編であり、この『若い読者のための経済学史』なのだ。2018年2月に出版された本書はすでに電子書籍化もされており、おすすめの一冊です。

イギリスには子供たちを教育するための建物や本があり、また、教師がいる。それなのに、なぜ、ブルキナファソはそうではないのか。これはとても難しい質問で、だれも原因をつきとめることはできない。だが、経済学はそれを説明しようとする。ここにこそ、わたしたちが経済学に魅了され、そうした問題について考えようとする、より大きな理由がある。

イギリスの経済学者アルフレッド・マーシャルは、経済学者には「冷静な頭脳と温かい心」が必要だ、と言っている。経済学者たちは、経済発展の一方で置き去りにされた人々の苦境を見過ごしてきた、と批判されることもある。21世紀初頭、銀行の無謀な行いのせいで、深刻な経済危機が起こった。それを予測できなかったために、多くの人が経済学者を責めた。経済学者の多くは、金融や巨大銀行が支配する経済で利益を得ている人々から影響を受けている。危機を招いたのはそのせいだ、とも考えられた。

おそらく、経済学者には〝冷静な頭脳と温かい心〟以外に必要なものがあるのだ。それはたとえば、自己批判的な目や、自分の関心や習慣的なものの見方を越えた観点などである。経済の歴史を学ぶことは、その助けになるだろう。過去の経済思想家たちがそれぞれの関心と環境のもとで、どのようにその考えにたどりついたかを知れば、わたしたちの考え方がどうであるかを、より明らかにできる。だからこそ、経済思想を歴史とともに考えるのは興味深いことであるし、それはわたしたちがより豊かに生きることができる世界を創造していくためにも不可欠なのである。

 

 

 

そして、同シリーズ日本語訳第二作となったのが『哲学史』である。そんな人気のシリーズはおそらくは今後も翻訳が継続して出版されることだろう。現在そろっている経済学史・哲学史以外にも期待したい。

哲学は「現実の本質」と、「私たちがいかに生きるべきか」から始まる。これらはソクラテスの懸念だった。古代アテネの市場で厄介な質問をし、人々に人々自身が真に理解したことがほとんどないことを示すことによって、彼は会った人々を困惑させていた。

本書では、ソクラテスやプラトン、アリストテレスから、現代の哲学者ピーター・シンガーまで、平易な文章でわかりやすく、バックグラウンドについても触れながら、西洋哲学史における偉大な思想家たちの、世界と、最良の生き方についての主要なアイデアを案内する。

また、チャールズ・ダーウィンについて扱っていることも本書の特徴のひとつだ。ダーウィンは哲学者ではなく、「進化論」の発見者として著名だが、『種の起源』の発刊によって、神や人間についての思索に大きすぎる転機を与えたことから章をさいて触れている。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

若き研究者フィギュアスケート町田樹のスポーツ文化論

2022年の冬季北京五輪の開幕も近づいてきた。ウィンタースポーツの代表例のひとつが、フィギュアスケー

記事を読む

稲垣栄洋の植物論と生き物の死にざま

稲垣栄洋の植物論は大変におもしろい。例えば、『雑草はなぜそこに生えているのか』であれば、そもそも書名

記事を読む

英国一家、最後に日本を食べる&お正月スペシャル

コアな人気を博していたNHK深夜アニメ「英国一家、日本を食べる」。ベストセラーとなった原作も素晴らし

記事を読む

adidas

絶対に負けられないサッカー・ワールドカップの舞台裏:スポーツブランドのもう一つの闘い

「絶対に負けられない戦い」に直面しているのは、もちろんサッカー選手だけではない。監督やスタッフ等もそ

記事を読む

できる研究者の英語プレゼン術|スライド作成からストーリー展開まで

以前に紹介した、ポール・シルヴィア著の『できる研究者の論文生産術』は素晴らしい一冊である。著者は20

記事を読む

聖の青春|天才・羽生善治を追いつめた伝説の怪童・村山聖

日本の将棋史上最高のプロ棋士・羽生善治の名前を知らぬ人は少ないだろう。だが、「東の羽生、西の村山」と

記事を読む

スコット・ジュレク『EAT & RUN』は、世界各地を走り尽くし、食べ尽くし、そして語り尽くした名著

ベストセラー『EAT & RUN 100マイルを走る僕の旅』は、とくにランナーにはおすすめ。

記事を読む

いま国語辞典がおもしろい|10年ぶりの大幅改訂による最新版あいつぐ

さて、「2020年、本ブログで最も売れたこの1冊」でも紹介したように、昨年の一年間でもっとも売れたの

記事を読む

東京藝大で教わる西洋美術の見かた|基礎から身につく「大人の教養」

2022年1月3日から、BSイレブンで新番組「東京藝大で教わる西洋美術の見かた」が始まる。これはぜひ

記事を読む

春の入学・進級・入社シーズンに絶対おすすめの国語辞典3選

3月は日本全国いたるところで卒業式が行われる。小学校を卒業して中学生になれば電車もバスも大人運賃だ。

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑