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3大学で1か月オンライン授業して気づいた遠隔講義に必要な準備|おすすめのやり方と問題点

公開日: : 大学・授業

本記事の目次

各大学でオンライン授業が始まる

日本でも新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、ニュースで大きく報道されたように、国内の大多数の大学では3月の卒業式や4月の入学式が中止となった。それだけでなく、新学期から始まる授業の開始を延期せざるを得ない大学が大半であり、その多くが4月下旬もしくは5月の連休明けから、教室での授業をスタートさせることを予定していた。しかしながら、感染の広がりはとどまることを知らず、全国に緊急事態宣言が発令されたことを踏まえ、通常の対面授業をあきらめ、現在ではすべての授業をオンラインで実施するよう方針転換した大学が圧倒的に多いのではないだろうか。

 

そんななか、早め早めの対応でオンラインに移行し、4月から始まる新学期を予定通りの日程でスタートさせた大学がいくつかある。その一つが、東京大学である(参考:「新型コロナもなんのその? 東大と早慶が「オンライン授業」に難なく対応できる理由」)。全学的に一斉にオンライン化を進めるというのは、事務的・システム的にも手間ひまかかることであるのみならず、それに対応する教員の準備や、受講する学生の環境整備等々、様々な課題が当初から想定されていたはずである。それでもなお、長引くであろうこの危機に対峙し、先手を打って思い切った対応を取ったことは、いま振り返っても優れた決断だったと言えるだろう。

 

 

 

3大学で1か月教えた僕自身の経験

もちろん、4月から予定通りの新学期開始日程に合わせ、早めのオンライン化に移行できたのは東大だけではない。例えば、立教大学も対応が早かったと言えるだろう。全学的にではないものの、一部の研究科などが先行してオンライン化を決定し、授業日程を後ろ倒しすることなく新学期をぶじにスタートさせることができている。

 

そしてまた、僕が勤務する国際大学も同様だ。学部をもたない大学院大学という小規模組織ということもあり、4月1日から始まった春学期の授業はスムーズにオンラインに移行し、現在もいまのところ大きな問題もなく授業することができている。僕は今学期は、国際大学だけではなく、上記の東京大学および立教大学でも非常勤講師として講義を担当しており、そのためこの3大学で教えてちょうど1か月が経ったところである。通常よりも3倍速でオンライン講義のノウハウを蓄積できているかどうかまだ分からないが、ここで一度僕の経験をまとめておきたい。5月の連休明けからオンライン講義を開始する大学はきわめて多く、その際に参考になれば幸いである。

 

 

 

Zoomを使ったオンライン講義

大学によって、どのようなオンライン講義の形態をとるかは様々であろう。ただ、ご存知のように、極めて多くの大学でZoom が採用されているのが実情であり、また実際に、上記の東京大学・立教大学・国際大学ではいずれもこのZoomを利用しているので、以下にまとめる僕の経験も Zoom がベースになることをあらかじめお伝えしておきたい。ちなみに、最近はセキュリティの欠陥が指摘されたものの、世界中の大学等で一気に導入が進んだZoomは、もちろん株価も急上昇中だ。新型コロナウイルスの感染が爆発的に広がる前と比べ、約2か月程度で2倍以上に株価が伸びている。

 

 

さて、そんなZoomであるが、使ってみた感想をひとことで言うなら、大変に使いやすく初心者でもまったく問題ない、ということだ。これだけ簡単だと、ほんと助かるわー。他のシステムを使ったことがないので比較しようがないのだが、ビギナーでもすぐに使えるようになるというZoomの評判は、僕自身の実体験からも本当だと言える。細かい機能や設定は多々あるが、それは詳細なガイドラインなどでざっと確認する程度で十分だろう(例えば、東大のオンライン授業ポータルサイトなどが参考)。はっきり言って、習うより慣れろ、のマインドで取り組めば、すぐに使いこなせるようになるので、その点は心配ご無用と言えるだろう。だから、オンライン授業にいまなお抵抗感をお持ちの先生であっても、ぜひここは前向きにいちど触ってみて欲しいところだ。きっと、以下に述べるような、オンラインだからこそできるような講義方法や工夫もあり、そして受講生にとっても効果的な学習につなげることが出来るのではないだろうか。

 

 

オンライン授業に必要な環境とは

さて、オンライン授業とひとまとめに言っても、そのやり方にはいくつか細かな違いがある。例えば、自分のオフィスや(履修生がいない)空き教室を使って、黒板やホワイトボードに板書していく内容を、Zoomのカメラで撮影して、動画生配信するというパターンがある。授業はやっぱり手書きで行いたいという場合や、教材をそもそもパワーポイント等のデジタルで用意していない場合には、このように授業風景を撮影して配信することも一つの選択肢として考えられるだろう。

 

しかし、大学キャンパスへの立入が禁止されている大学等も多く、その場合には必然的に自宅からのオンライン授業、というのが現実的だ。そしてその場合には、自宅のどこかのスペースに(書斎がある人はそこで、なければリビングの一角等で)、以下のようなセッティングするところから始めることになるだろう。

 

 

イーサプライのウェブサイトでも詳しくおすすめアイテムが紹介されているが、オンライン授業のために必要な基本環境としては、以下が必須もしくは推奨アイテムとなる。

 

あらかじめ準備・用意しておくべき機材・アイテム

PC

まずは当然、PCである。デスクトップでもノートでも構わないが、自宅で作業する場合には、場所が固定されるデスクトップPCよりも、柔軟に移動できるノートPCの方が便利に使えることが多いだろう。

 

LANケーブル

次に、当然オンライン授業なのだから、ネット接続が不可欠である。そして今どき自宅でWiFi接続が当たり前かも知れないが、ただし、オンラインで講義するにあたっては、強くおすすめしておきたいのだが、LANケーブル接続した方が絶対によい。僕自身も初回講義ではとりあえずいつもどおりのWiFi接続で行ってみたのだが、受講生からはオンライン講義の動画・音声が途切れ途切れとなり安定しない、というコメントをもらった。これは、当然、講師側のネット接続と、受講生側のネット接続の両方ともが安定せねばならないのだが、われわれ講師側の問題でトラブルを招くことは最大限避けねばならない(そうでなくとも、ネット環境に難がある学生は多数いるため)。そのため、僕も初回講義を終え、ソッコーで買ったわけである、LANケーブルを。まさかこの時代に再びケーブルを購入するなんて思わなかったけど、これはもう絶対にね、あった方がよいですよ!

 

 

 

ウェブカメラ

続いては、上記のイラストや以下の写真でも描かれているウェブカメラだ。安いもので数千円、高いもので数万円するが、最低限の機能が備わったもので十分だろう。この分野ではロジクールの商品を選んでおけば間違いないが、ただ、いまは需要増によりしばらくの間は品薄状態が続きそうだ。その場合には、PCにカメラ機能が備わっているのであれば、専用のウェブカメラはなくても大丈夫。大人数の会議等になるのであれば、確かにウェブカメラがあった方がよいだろう。ただし、このカメラで撮影するのが講師であるわれわれ一人であるならば、PC備え付けのカメラでも全く問題ない。

 

 

 

マイク・ヘッドホン(ヘッドセット)

ウェブカメラよりは購入しておいた方がよいのが、このヘッドセットだ。とくに自宅作業にあたっては、まわりに家族がいたりペットがいたり、もろもろの騒音が直接、オンライン講義を邪魔してくる。自分で実際に経験してみて初めて分かったが、予想外のタイミングでやってくる宅配便による、玄関の呼び鈴の音も飛び込んできたりするのだ。。。なるべくそのような雑音を避けるためにも、ヘッドセットを利用するのがのぞましいだろう。もちろんこれもウェブカメラと同様に、PC備え付けのマイク機能が使えるのだが、その場合、どうしてもしゃべる際にPC本体にあるマイクに顔を近づけて話すことになる。そんな体勢を続けるのもシンドイわけだから、やっぱりここはヘッドセットをひとつ用意しておくことをおすすめしたい。これもロジクール製品(数千円)であれば、どれを使っても問題ないと思うが、ただやはり、いまはしばらく品切れ商品も多いので、見つけたら売切れないうちに、早めに買っておくとよいだろう。

 

 

 

 

ペンタブレット

そして、オンライン授業となることが決まって真っ先に、僕が新たに購入したアイテムがこちら、ペンタブレットだ。絶対に必要だと思い、まずはエントリーモデルをと思って買ったこちらの XP-Pen ペンタブ Deco01 だが、これホントに素晴らしいよ!こちらの公式直販サイトで詳しく解説されているように、初心者でもじつに使いやすいのだ。もちろん、ペンタブレット全般に言える課題として、ディスプレイ表示画面と、文字や絵を描く盤面が異なるため、最初にその仕組みに慣れるまで少々時間がかかるのだが(これは説明聞くよりも使ってみて初めて分かる感覚だと思う)、それでもたった6,000円程度で、オンライン授業でも通常の教室授業のように板書ができるようになるのだから、これはもうオンライン授業のマストアイテムですよ!

 

 

 

なにせ、Zoomの「ホワイトボード」機能を用いて文字や数式を描いてみた上の様子を見てもらえば一目瞭然だろうが、一文目はペンタブレットで、二文目はマウスで書いたものだ。ここで明らかなような、マウスで文字や数式や絵やグラフを描くなんて、想像を絶する作業になるワケだ。。。それが、ペンタブレットを使えば一発解決なのである。文系・理解をとわず、どんな授業でも役立つこと間違い、実に素晴らしいアイテムなのである。先日まではこの商品も品切れが続出していたようだが、いまは在庫もそろっている様子なので、次になくならないうちにぜひ、安価なエントリーモデルで構わないので、ペンタブレットを用意しておくことを強くおすすめする。ただし、ペンタブは上記の説明通り、若干使いづらく慣れが必要になるので、より直感的に利用したいというなら、少しばかり高価になるが、液晶画面にダイレクトに絵や文字を書くことができる液晶ペンタブレット(液タブ)を選択した方がよいだろう。

 

 

 

オンライン講義のポイント7つ

さてここからは、僕自身が実際に3大学で1か月教える中で気づいた、こうすればよかった点とか、今はこのように進めている、ということをまとめておきたい。

 

食わず嫌いはやめよう、すぐ慣れるし、オンライン授業のメリットもたくさんある

本音を言えば、僕もオンライン授業なんて、あまり前向きになれなかったのである、最初はね。教室内で受講生の雰囲気をみて、どれくらい授業内容を終えているのか把握したり、学生に質問を振って、さらに別の学生からコメントを求めるようなインタラクティブな授業、そういうことを考えるならば、やっぱり通常の教室内授業がよいと思うのも無理はない。ただ、今回のようなコロナ禍をふまえ、意図せずオンライン授業をすることになって思ったのが、こうした遠隔講義にも良い点、とくに対面授業と比べたメリットもたくさんある、ということだ。ぜひこの機会に、もっと前向きになってオンライン授業のノウハウを蓄積し、スキルを高めていこうと、僕自身が思いを新たにしているところなのだ。

 

学生の受講環境を知っておくのって、ものすごく大事だと思う

どこでオンライン授業を受けているのか?

まず、いきなり授業を始めるのではなく、受講者がいまどのような状況にあるのかを把握しておくことは重要だと思う。なにしろ、オンラインでは画面の向こう側にどんな人が、どんな思いで聴講しているのかも全く分からないのだから。とくに僕自身が最初に聞いてみてよかったと思うのが、いま受講者がどこでこの授業を受けているのか、ということだ。たぶん、予想外のこたえが返ってくるだろうから、オンライン授業の初回ではぜひ一度、この質問をしてみてはどうだろうか。僕の経験では、ひとり暮らしの家や学生寮そして実家に帰省中というのは、当然予想の範囲内だった。だけれども、外だったりカフェということもあるのだ。それに加え、日本にいない場合もあるということも、聞いてみるまで気づかなかったのだ。春休みに母国に帰った留学生が今もそのまま海外の実家にとどまっていること、もしくは4月から入学(留学開始)予定だったところ、日本への渡航に制限が加えられ、まだ来日できていない、といったケースもある。これらはニュースの報道のとおりなのだが、自分の授業を受ける学生のなかにも、こうした困難に直面しているひとたちがいるということは、質問するまで分からなかったのだ。さらに、海外にいる学生も必ずしも中国や韓国など同じ東アジア圏内とは限らない。僕の場合には、いちばん遠いところでは今もヨーロッパの自宅にいる、という学生がいた。こうした場合は、オンライン授業をライブで受ける際に時差の問題が生じる、ということも考えてあげねばならないわけだ。というように、受講者がいまどこにいてこのオンライン授業を取っているのか、ぜひ聞いてみると、自分の講義をする際にも参考になることだろう。

 

どのようにオンライン授業を受けているのか?

もうひとつ、聞いてよかったのは、どんなデバイスでこのオンライン授業を試聴しているのか、という質問だ。そりゃあ、デスクトップPCかノートPCに決まってるでしょ、と思っていた僕は、きっともう古い世代に分類されちゃうんだろうね(苦笑)。タブレットくらいならまだ分かるが、スマホで、という学生も実際にいるのである。となると、あの小さい画面でいま、僕の授業スライドや板書を見ることになるわけであり、だからこそ、文字の大きさなどもいつも以上に気にせずにはいられないのだ。

 

どのようなオンライン環境が整っているのか?

また、学生それぞれが現在、どのような設備環境でオンライン授業を受けているのかも、講師にとっては大事な情報だ。例えば、よく指摘されるようにネット接続の問題がある。僕が自分の授業で聞いてみても、確かにこのトラブルはつきものだ。自宅でのインターネットが遅いので外出先や友人宅など、別の場所でネットへのアクセスを確保しているという場合もある。それ以外にも、プリンタの有無だ。僕が直接聞いてみても、半数以上の学生の手元にはいまプリンタがない。以前であれば大学でプリントアウトすればよかったのだろうが、今はキャンパス立入禁止となっているところも多い。そうであるならば、講師側としては、授業で使う教材を、学生が事前にプリントアウトしてくることを想定するのは現実的ではない。というように、学生側の設備機器面での環境がどれくらい整備されているのかを知っておく必要があるだろうし、十分な準備が出来ていないことも多いだろうから、そこはわれわれ講師側が柔軟に対応していく必要があると思うのだ。

 

 

 

 

画面の向こう側から、積極的参加を促す仕掛けを最大限につかってみる

さて、ここからは授業の進め方について、僕なりにここ1か月いろいろと試行錯誤してきたことをまとめておきたい。まず初めに、オンライン授業というのは、自分が受けてみればすぐに分かることだが(苦笑)、受講者側の集中力が続かないものである。。。これはもう仕方がない。であるならば、なるべく集中力が切れないよう、通常の講義以上に講師側が、学生の授業参加を促していかねばならないと感じた。なにしろ、オンライン画面の向こう側で、いま学生が集中して授業を聞いているのか、真面目にノートを取っているのか、それとも果たしてポップコーンを食べながらフェイスブックに見入っているのか、はたまた単純に眠りに落ちているのか、まったく分からないのだから。もちろん学生側がカメラをオンにしていれば、講師側でその姿を確認することができる。ただ、実際の授業をしてみて分かったのは、大多数がカメラオフにしているのだ。それはそれで全く構わないのだけれども、学生がどのような反応をしながら授業を聞いているのか(聞いていないのか)が分からないのは、教える側としてはなかなかシンドイ。だからこそ、オンラインならではの機能を使って、少しでも受講者のフィードバックを促進して、授業を進めていきたいと思っているのだ。

 

挙手

Zoomには、「手を挙げる」という機能がある。講師側が何か質問をし、それに対する回答を求めるときに使える機能だ。その点では通常の教室内授業と同じような雰囲気と言えるだろう。僕は授業中に出席を取らないのだが、少なくともこの機能を使えば、仮に学生の姿がオンラインでまったく見えていないとしても、どれくらいの人が話を聞いているのかを把握することができる。また手が挙がった学生からひとり選んで、具体的に意見を述べてもらったりと、次のアクションにつながりやすい機能と言えるだろう。

 

質疑応答(チャット)

Zoom画面の横には、文字でコミュニケーションできるチャット機能も付いている。ここには、受講生に質問を書いてもらうといった使い方が合っているだろう。教室内で手を挙げてなにか発言するというのは、それだけの思い切りが必要になることも多い。そしてそれはオンラインでも変わらない。いやむしろ、周りの受講生がどんなひとなのか、学生同士も分からないオンラインの方が、声を出して質問するプレッシャーは大きいかも知れない。だからこそ、文字で質問できるチャット機能なのである。オンライン授業のメリットを学生に聞いてみると、このチャット機能を使って質問しやすい、という意見を聞くように、確かに文字であれば授業の妨げにもならず、気になることをその場で容易に確認できるようなのだ。また、その質問の仕方も、オンライン受講者の全員が見ることのできる書き方だけではなく、講師のみに充てたプライベートメッセージとしても質問できることも、授業中の発言(チャットでの質問)を容易にしているのかも知れない。いずれにしろ、これまでの対面授業にはない、オンラインならではの機能であり、授業の邪魔にならずに、講師と学生との質問等のやりとり、そしてまた学生同士でのコミュニケーション促進につながるものだろう。

 

質疑応答(音声)

オンライン授業では、音声は講師のみがオンにしており、受講生は全員がオフにしておくのが基本的マナーである。そうでないと、よくあるトラブルなのだが、それぞれの音声がすべて拾われて、普通の会話すら成り立たない状態となってしまうので。そのため、講師が誰かに質問するときには、指名されたひとがそのタイミングで音声をオンに切り替えて発言することになる。その場合、もちろん講師と学生との音声コミュニケーションは他の受講生にも伝わっており、この点は通常の対面授業と何ら変わりはない。ただ、学生の姿が見えない場合には、指名されて考えているのか悩んでいるのか困っているのか等々、表情から伺うことができないのが問題点ではあるが。そのうち、声の質やトーンから、自信がありそうな回答だとか、そうでもないのかな、とか推測していくことになるかも知れない。

 

投票

Zoomの投票機能もおもしろい。これはとくにオンラインならではであり、対面授業では経験できないことかも知れない。ようは、簡単なアンケートを作成し、それに回答してもらうということなのだが、匿名回答もできるし、複数選択肢も選べるなど、確かにこうした細かい設定は、教室内授業で手を挙げてもらうような形式では実現することが難しいもんだ。例えば僕のオンライン授業でも、先ほど述べたように、「いまどこで講義を聞いているのか」という設問に、日本国内なのか海外なのかという選択肢を提示して聞くことで、受講者の状況を把握することができた。もちろん、こうした属性を知るためだけではなく、僕もその他、オンライン授業のよい点を聞いてみたり、課題点を教えてもらったり、または簡単な例題を出して授業の理解度を把握したりしており、この投票機能は、なかなか便利なのである。おすすめです。

 

クイズ

もう少し本格的な練習問題を出す場合、どうしようか悩んでいたのだが、いまのところ Google Forms を利用したクイズが、うまく機能しているように思う。これは前回授業の確認テストのような位置づけの小テストをイメージしてもらえると分かりやすいが、きちんと採点しようと思ったり、自由回答を求める場合には、上記のような投票機能はちょっと合わない。そのため、Google Forms で作成した設問群を、受講者のメールアドレスに一斉に送信する。そして回答を時間内に提出してもらう、というものだ。実際に自分の授業で何度か試してみたが、予想以上にうまく出来たとおもう。僕自身、はじめてGoogle Formsを使って設問設計したけど、これも非常に使いやすく何の問題もない。加えて大きなメリットだと感じたのは、提出時間が厳密に記録されることである。そのため、とくに試験などのときには、時間終了のあとも若干続きを書き続ける学生がちらほらいるものだが、オンライン提出となると時間厳守とすることができるのは、デジタルならではだと思う。

 

グループワーク・ディスカッション

Zoomでは、大人数の受講生を小グループに分けて討論させる機能も備わっている。Zoom飲み会をしたことがある人は分かると思うが、ある程度の少人数であれば、全員がマイクをオンにしていても会話が成り立つ。それ以上大きくなると、さすがに大多数はミュート(消音)にしておかないと難しいだろうが。そのように、グループでの討論が成り立つような少人数のグループに分割し、音声会話を通じてディスカッションしてもらったり、グループワークしてもらったり、ということが可能だ。実際の教室でも、それじゃあグループごとに机を集めて議論してー、みたいなシーンはよくあると思うが、あれのオンライン版、というわけであり、この点でもオンラインとオフラインの境界線というのは、それほど明確なものではなく、教室内授業で出来ることのかなりの部分は、オンライン授業でも成立させることができるだろう。

 

 

 

 

 

授業の進度が遅くなるのは仕方ない、でも休憩はしっかり取ろう

学生からのフィードバックで分かったことのひとつに、一日じゅうオンラインでPC画面を見続けると、集中力も続かないし、目が疲れる、ということがある。確かにそのとおりだろう。われわれ講師側は、一日に1コマの授業を担当するだけかも知れない。しかし学生にとっては、それは一日のうちのたった1コマに過ぎず、その前にも後にも別のオンライン授業を受けているわけだ。だから、疲れないわけがないのだ。集中力が切れて眠くならないわけがないのである。だって、飛行機に乗って、あの画面で映画を3本連続で観たりできます? ほとんどの人が、さすがにそれはキツイわー、って言うんじゃないかな、それくらい学生も疲れるわけである、オンライン講義の連続に。ということを考えると、オンライン授業では通常講義以上にきちんとした時間配分で、疲れがたまらないうちに小休止が必要になってくるだろう。一方で、オンラインではどうしても講義の速度が遅くなることが避けられない。それは板書のスピードが遅かったり、学生の反応を受けるのに時間がかかったり、その他もろもろのテクニカル・トラブルがあったりと、どうしても教室内授業のようには進まない。それでもなお、休憩時間を削るのは本末転倒のように感じる。シラバスの内容を決められた講義回数のなかでどう確保していくのか、大きな課題となるが、毎日オンライン授業尽くしで目が充血している(かも知れない)学生を置き去りにするわけにはいかず、そのバランスが求められているのだろう。

 

宿題や試験等、オンライン受験に対応したアップデートは工夫のしどころ

オンライン講義でどの講師にとっても頭を悩ませるのが、今後の中間試験や期末試験だろう。なにしろオンラインなのである。ネット上で回答を探すこともできるし、Wikipediaを参照するのも当たり前だろう。質問・回答サービスを利用して、直接答えを教えてもらうようなケースも出てくるはずだ。この問題は当然、海外の大学でもまったく同様であり、例えばハーバード大学でも様々な方法が議論・検討されている。ネットを活用して試験問題を解いていなはずだ。そうではなく、むしろノートや教科書の利用も自由、ネットの活用もOK、使えるリソースを全て利用したうえでもなお考えさせる問題を出すことが求められているのだとすれば、それは我々講師側の責任と努力であろう。講義のオンライン化は受講生にも多くの負担を強いると同時に、このような形で講師側のアップデートも要求してくるものだ。正解がなにかなど見えない中、それを考えることは大変な作業になるはずだが、それでもなお、今後も大学が提供していく価値というものを真剣に考えるならば、これまでの試験のやり方を抜本的に見直す時期に来ているのかも知れない。いずれにしろ、今回のコロナ禍によって、大学教員ひとりひとりが、新たな大学像、新たな教育方法、を模索する必要に迫られているのは間違いなさそうだ。

 

周囲の先生方と情報共有し、ベストプラクティスを探し続ける

というように、どんな授業方法や教え方がオンラインに相応しいのか、みながみな試行錯誤している段階である。だからこそ、同僚の先生と情報共有・意見交換することがとても大事だと感じた。模索のしかたがそれぞれ異なるから、なるほどそんなやり方もあるのか、じゃあ自分も次回試してみようと思うことが沢山あるのだ。うまくいくものもあれば失敗したな、と思うことも毎回ある。その経験ひとつひとつを多人数で共有することで、スピード感をもってオンライン授業のノウハウを貯め、スキルを高めていきたいと思うのだ。僕自身は今学期、3つの大学でそれぞれ異なるバックグラウンドの受講生を対象に、別々の講義を行っていることで、多くのことを学んでいる。それに加え、他の先生のやり方も学び真似することで、次第に自分の形が出来つつあると感じている。今後いつこのコロナ感染が収まるのか現時点では予想もたたず、今後も夏や秋においても引き続きオンライン授業となる可能性も当然ある。であるならば、今のうちに数をこなし、経験値を高め、そのときに備えておきたいものだ。しかも、現在政府が正式に9月入学への移行を検討しているように、今後日本の教育システムが大きく変わる可能性さえある。先に述べたように、オンラインならではのメリットというもの多々あるため、たとえ今後コロナが収まったとしても、オンライン授業の形態はそのまま残ることも十分考えられるだろう。そうしたシナリオを考えるならなおさら、今回のオンライン授業を今学期だけの緊急措置と考えるのではなく、今後も必要とされるスキルと考え、いまのうちから準備しておいたほうがよいのかも知れない。

 

自分がオンライン授業を受けたこと、ありますか?

最後に、どんなオンライン授業が良いものと言えるのか? それを見つけるには、自分でいくつかのオンライン授業をとってみることが一番の近道だ。画面を見続けることがどれだけシンドイか、いかに集中力を持続させるのが難しいか、講師の説明の聞きづらく分かりづらいこと、といったオンラインならではの問題点は、自分が受講者の立場に立ったときに、最もクリアに理解できるものだ。それと同時に、この授業は面白い、分かりやすい、ためになる、という内容のものも見つかるだろう。そしてその優れた授業は何が違っているのか? そう考えることが、自分の授業を改善することに大いに役立つだろう。ちなみに、オンライン授業のメリットのもう一つに、授業内容を自動で録画できるというものがある。僕自身の経験でも、学生の多くからは、もう一度授業を振り返りたいという声が多かった。きっと、授業内容を聞き逃したり、途中でトイレに立ったり居眠りしたりと、様々な理由があるのだろう。そのため、自分の講義は毎回録画しており、それを授業後にアップロードして学生にシェアしている。だから、自分でもその録画を見返すワケである。しかしその苦痛ったら、地獄だよね(苦笑)。オレのオンライン授業ってこんななの? そりゃ学生さんツライわー、と反省し勉強する次第である。とまあそのように、自分にダメ出しを繰り返し、他人の良い点を真似し、そうやっていくことでしか、オンラインならではのスキルは身につかないと思うところだ。

 

 

 

 

オンライン講義という新たな教育システムの確立とその可能性

というように、3大学で1か月オンライン講義してみて、個人的に感じたこと気づいたことを、思いつくままに書いてみた。新しいやり方に当然面白さと可能性を感じる一方で、受講者同士がコミュニティを築き勉強仲間を見つけることの難しさなどにも直面している。それでも、このオンライン講義がきっと新たな教育方法として今後確立されていくのだろうと考えるのならば、自分自身もそれに合わせてアップデートしていくべきだろうし、そのためになるべく前向きに、できるだけ積極的に、その新たなノウハウを吸収していきたいと思うのだ。僕自身、いまから2か月目に突入するオンライン講義では、先に述べたように試験の実施が大きな山場となる。これをどう乗り越えるのか、いまいくつかの方法を検討中であり、その成果や課題などについては、また後日この場で報告したいと思っている。

 

とくにこの春入学を迎えた新入生のみなさん、大変な時期ですがオンライン授業でぜひ前向きに勉強してください。僕らも一生懸命まなんで対応します。講師のみなさまがた、お互い頑張っていきましょう。引き続きよろしくお願いいたします。

 

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