*

[おすすめ数学テキスト]政治学・社会学のための数学基礎講座

公開日: : 最終更新日:2014/09/28 オススメ書籍, 大学・授業

経済学Ph.D.課程の多くでは、夏の間に新入生向け の数学基礎講座(通称 Math camp)を開講することが多い。その際の定番テキストが、Simon & Blume の “Mathematics for Economists” である。

 

そして、今月9月から新学年度が始まった国際大学でも同様に、新入生向けの数学講座を開いており、今年は先日まで僕もその授業を担当してきたところなのだ。今回初めて数学を教えるにあたって考えたのが、どのテキストを使おうかということ。上述の Simon & Blume は確かに定番なのだが、それは経済学のPh.D.生を対象とした場合のこと。

 

前回「国際大学の新しいアカデミック・イヤー始まる」であらためて紹介したように、本学のように政府派遣の修士課程留学生が対象となる場合には、もう少し数学の応用面を重視した講義内容にした方がよいのではないかと考えて選んだのが、以下のテキスト “A Mathematics Course for Political and Social Research” だった。

 

medium_4257452000photo credit: Peter Rosbjerg via photopin cc

 

結論から申し上げるならば、このテキストが非常に素晴らしかった。米国Amazonのカスタマーレビューに “A book that political scientists waited 20 years for” とあるのも納得の内容だ。代数から微積分そして確率統計までひと通りカバーしているのはもちろん(目次はこちら)、政治学や社会学からの事例を数多く掲載していることもプラス。だがそれ以上に優れていると個人的に感じたのが、各章末に用意された “Why Should I Care?” の項目。新しいトピックを学ぶたびに、章末にはこのセクションが設けられており、なぜこの数学コンセプトを学んでいるのか、それが今後どのような場面で活かされるのか、が解説されるのである。

 

もともと数学好きであったり、はじめから経済学Ph.D.課程に学んでいるならば不要かも知れないが、そうではなく今まで数学を少々敬遠してきた人や、より政策研究寄りの Public Policy や Public Management を専攻する人にとっては、まさにうってつけのテキストに仕上がっているのである。(国際大学では、MA in Economics の他、MA in Public Management 等の修士号学位も授与している)

 

その意味で、今年の夏の数学集中講座を教えるのに、このテキストが極めて役立ったのは言うまでもない。本書に関連して、章末問題の回答や、それ以外の problem sets & solutions、そして講義の動画まで、著者ウェブサイトには付随する教材が豊富に用意されている。書名こそ「政治学・社会学研究のための数学講座」となっているが、経済学や経営学等も含めた社会科学専攻全般に渡って、もっと幅広く読まれるべき良質のテキストと言える。昨年出版されたばかりということで僕自身も今まで全く知らなかったのだが、自分で読んで使ってみて、自信を持ってオススメしたいテキストである。新たな定番となる一冊だと思う。

 

 

Political science and sociology increasingly rely on mathematical modeling and sophisticated data analysis, and many graduate programs in these fields now require students to take a “math camp” or a semester-long or yearlong course to acquire the necessary skills. The problem is that most available textbooks are written for mathematics or economics majors, and fail to convey to students of political science and sociology the reasons for learning often-abstract mathematical concepts. A Mathematics Course for Political and Social Research fills this gap, providing both a primer for math novices and a handy reference for seasoned researchers.

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

three main dictionaries

国語辞典を選ぶならこの3冊がおすすめ:現代語に強い三省堂・豊かな語釈の新明解・安定と安心の岩波

目的と用途に合わせてベストの国語辞典を見つけよう 卒業・入学シーズンなので、そのお祝いとして国語辞

記事を読む

takoyaki

米国人一家と英国一家が美味しい日本を食べ尽くす

ちょっぴり巷で評判の『米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす』を読んでみたら、これが思いの外おもしろか

記事を読む

工学部助教授にしてベストセラー作家・森博嗣の『作家の収支』|論文執筆スキルを応用してミステリを量産する

先日は多数の電子書籍が期間限定で大幅値下げされており、僕自身も随分と買い込んでしまった。その中でも個

記事を読む

Wall Street Journal 125周年と、アメリカ現代史

ちょうど昨年、「フィナンシャル・タイムズ(FT)とウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」で書い

記事を読む

英国一家、最後に日本を食べる&お正月スペシャル

コアな人気を博していたNHK深夜アニメ「英国一家、日本を食べる」。ベストセラーとなった原作も素晴らし

記事を読む

林業男子と林業女子:Wood Jobs!

「少年よ、大木を抱け。WOOD JOB!」で書いたように、『舟を編む』の著者三浦しをんによる『神去な

記事を読む

申請者必携のハンドブック『科研費獲得の方法とコツ』に最新第4版が登場|採択率を上げる書き方

今年もまた科学研究費助成事業(科研費)の締切が近づいてきた。多くの研究者が申請するこの科研費だが、も

記事を読む

若い読者のための経済学史と哲学史

米国イェール大学出版局の "A Little History" は、歴史や文学そして経済学といった学

記事を読む

クラウドソーシングの衝撃:世界最大手Freelancer.comの上場と業界再編

「クラウドソーシング・サービスの使い方: 世界最大の Freelancer.com が早くて安くて素

記事を読む

統計学と経済学をまる裸にする

ついにあの "Naked Statistics" に、待望の翻訳が登場。そしてあの "Naked E

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

米国Amazonの第2本社候補地選びがついに決着

1年以上に渡って注目を集めてきた、米国アマゾンの第2本社候補地選び。5

オークション落札のバンクシー作品をシュレッダーで刻むという現代アート

先日は現代アートをめぐる大事件が発生した。こちらの記事等でも解説されて

若い読者のための経済学史と哲学史

米国イェール大学出版局の "A Little History" は、歴

「お茶」が教えてくれる日々のしあわせ

10/13(土) から上映が始まった『日日是好日』。樹木希林の遺作とな

日本美術展史上最大のフェルメール展ついに始まる|事前に読んでおきたいおすすめ5冊

さて、先週からいよいよ上野の森美術館で「フェルメール展」が始まった。現

2018年ノーベル経済学賞はノードハウスとローマーに|著書が半額セール中

今年のノーベル経済学賞が先日発表され、受賞者はイェール大学のウィリアム

japanese dictionaries 1
三省堂『辞書を編む人』が、今年の新語を募集中

時を経て社会は変容し、そして言葉も変遷する。いつの時代もワカモノの言葉

レギュラー化決定NHKの新番組「ろんぶ~ん」は最高のアカデミック・エンターテインメント

さて先週から始まったNHK-Eテレの新番組「ろんぶ~ん」をご覧になりま

PAGE TOP ↑