将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた
最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、毎度新聞やニュース等でも大々的に報じられるので、将棋に詳しくない人でもよくご存じのことだろう。その藤井五冠は昨日、対羽生九段とのタイトル王将戦第6局を制し見事に防衛を果たしたばかりだ。令和の大天才と平成の大天才、最高峰の頭脳対決として注目されたこの王将戦では、これまでのタイトル戦にないほどに白熱したシーソーゲームが続いたが、最後は藤井五冠が寄り切って4勝2敗という結果となった。
こうして王将タイトルホルダーとして見事な防衛を飾った藤井五冠だが、一方ではこの冬は挑戦者として棋王戦にも臨んでいるのである。相手は、名人位ももつ渡辺二冠であり、まさに頂上決戦と言える戦いだ。しかも、4月から始まる名人戦では、これまた藤井五冠が挑戦者として名乗りを上げたところであり、渡辺二冠としては名人位と同時にこの棋王位も合わせて、対藤井五冠との12番勝負となるのだ。
さて、この棋王戦だが、第1局から藤井五冠が連勝し、渡辺棋王としては早くもカド番と後がない状況の中、先週末の第3局を迎えることとなった。もちろんストレートで敗れてタイトルを失うわけにはいかず、だからこそ渡辺棋王も最大限の準備をしてこの一戦に臨んだことだろう。結果的には、後手番の渡辺棋王が激闘を制して見事勝利、まずは一勝を挙げたところだ。
その棋王戦第3局の当日、対局の場となった新潟グランドホテルに僕はいた。そう、大盤解説会のプラチナチケットを競争の末にラッキーにも獲得できたため、鼻息も荒く、その決戦の場へと向かったのだ。当日の朝、信濃川にかかる萬代橋からは、下の写真右手にあるピンク色の新潟グランドホテルが綺麗に見えた。さあ、いよいよ勝負開始だ!
しかし、それにしても、本当にいまの藤井聡太人気はすさまじいな。朝一番で席取りにやってきた僕なのに、すでにホテル内には列ができているじゃないか!しかも皆さん、新潟県外からもやってきている様子。いつも対局中のおやつや銘菓、そして勝負メシ等が話題になるし、しかもそれが報じられるとすぐに売れ切れるほどの人気であり、さらにこれだけ数多くのファンが観戦にやってくるのだから、その経済効果は本当に測り知れないほどだ。
さて、いよいよ始まった大盤解説会。今回の解説は高見七段に聞き手は山口女流と人気のおふたりのコンビである。高見七段の解説は、僕のようなヘボの将棋指しにも大変分かりやすくとても有難い。山口女流も新婚ネタをいじられながらも、やはり人気聞き手として話が面白く、長い長い対局中も飽きさせないトークが素晴らしい。ちなみに高見七段は当日の大盤解説を終えた後、まさに疲労困憊で、今までの解説で一番疲れたと告白するほどに、この一局は逆転に次ぐ逆転のドラマチックな名勝負となったのである。ぜひその様子を記録した、以下の雑誌Numberの記事も合わせて読んでみて欲しい。
(Number)
名局続きの将棋界。3月5日に行われた渡辺明棋王-藤井聡太五冠の対局は壮絶な“神局”となった。現場取材で見た衝撃的な場面、高見泰地七段に熱気を聞いた。
また、今回の対局では、深浦九段が立会人をつとめた。藤井五冠や羽生九段といった「将棋星人」に対し、地球を代表するならこの人と言われるほどのガッツと粘りで宇宙人にも負けない戦いをみせてくれる。実際、藤井五冠が公式戦で負け越している相手は今や数少ないのだが、その中の一人がこの深浦九段なのである。そんな強豪棋士ではあるものの、実に気さくなおじさんといった体で、その解説は人気であり、実際にここ大盤解説会でも、ふだんこんなに長時間も立会人が顔を出してくれるなんてあり得ないよなあ、と思うほどにファンサービスも旺盛で感謝しきりである。
そして、お互いに一分将棋となる白熱した対局、その最終盤ではそれぞれに詰み筋があったようだが、残念ながら僅かな時間ではその正解にたどりつくことはできず、逆転につぐ逆転にして、大盤解説会場でも歓声と悲鳴と溜息が漏れる、そんな目まぐるしい大接戦を最後に制したのは、渡辺棋王だった。終局を迎え、簡単な会話を交わした後、両対局者が恒例の挨拶として大盤解説会場に顔を出してくれた。あの熱戦を終えたばかりで、まだ熱気と興奮冷めやらぬ中だろうが、それぞれにファンに向けて、そして次局に向けてコメントしてくださり、この場に居合わせることができて幸運に感謝しきりであった。
というように、日曜日まるいちにちを過ごした新潟市。朝からホテルで並んで陣取り、昼は市場で旨い魚と酒に舌鼓。そして午後からはいよいよ大盤解説が始まってと、大変充実した一日だった。今回は日帰りでかえってしまったのが少し残念だったが、次回はぜひ泊りがけで新潟の夜も楽しみにきたいと思う。藤井五冠と渡辺二冠には、こんなにも素晴らしい名局を残してくれたことに、そして最高にエキサイティングな対局を見せてくれたことに、改めて感謝。
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