初タイトル目指す藤井聡太七段の連勝と、将棋棋士の獲得賞金・対局料
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先日も書いたけど、いま将棋がめちゃくちゃ面白いね。コロナ禍で約2ヵ月間の対局中止が終わり、6月からは熱戦が相次いでいる。ABEMAで生中継してくれるのは有難いのだが、毎週のように、いやそれどころか週に複数の重要対決があったりして、見る側も嬉しい悲鳴をあげているところなのである。
もちろん注目は、弱冠17歳にして快進撃を続け、いまや初タイトルどころか二冠獲得を伺うほどの圧倒的強さを見せている、藤井聡太七段だ。現役最強と呼ばれる渡辺明三冠を相手にした棋聖戦では2連勝と、初タイトル棋聖獲得に王手をかけた。もうひとつのタイトル戦では、史上最年少VS史上最年長対決として注目を集めている、木村一基王位との初戦で圧倒するなど、タイトルホルダーでさえこの若武者を止めることができないのかと、感嘆するほかない。
さて、ここまで活躍を続ける若きプロ棋士・藤井聡太だが、いったいどれくらい稼いでいるのか、ご存知だろうか? じつはプロ棋士の獲得賞金・対局料は、日本将棋連盟が毎年公表しているのだ。下表が2019年のトップ10の顔ぶれであり、藤井聡太七段は第9位に、2,108万円でランクインしている。

その2,108万円を高いとみるか安いとみるか? もちろん高校生にして2,000万円超の年収とはなんとも高いことよ! という人がいる一方で、トップの豊島将之竜王名人でさえ、7,000万円程度というのは、野球やサッカーなどの他のプロ競技と比べて、将棋全体が安過ぎるのでは、という向きもあるだろう。ちなみに、過去にさかのぼってこの年収ランキングを見ても、勝ちまくっていた羽生善治九段の全盛期でも、約1億2,000万円である。
個人的にも、プロ棋士の年収はもっと高く、より夢のある職業であって欲しいと思うところだ。ただ、もちろんスポンサーによるタイトル賞金額の制約であったり、各種スポーツのようなファンの観戦料があるわけでもなく、いろいろと難しい業界ではあるのだと思う。
それでも、プロ棋士って、四段以上のことを指すから、たったこれだけの人数しかいないんですよ。それでいて、この四段になるために、「奨励会三段リーグ|天才少年棋士からプロへの最後の関門」で書いたように、鬼門の奨励会三段リーグを勝ち抜けねばならないのだ。それがいかに厳しく苦しい闘いであるのか、そしてそこに挑み、高い壁に跳ね返され、挫折して去っていく青年がいかに多いことか。それだけ若い頃に人生を賭けて勝負にのぞむプロ棋士の卵たちにとっての夢ある職であり続けるためにも、それこそ桁違いの年収を稼ぐスーパー将棋棋士のような存在があればなあと思うところもあるのだ。
そんなことを、最年少プロ棋士・藤井聡太のいまの活躍を見ながら、そして彼の元同僚であり今も奨励会三段リーグで生き残りをかけて日々命を削るような戦いを続ける若者たちに思いを馳せざるを得ない。そんな奨励会の過酷な生活は、大崎善生の『将棋の子』に詳しく、将棋の世界に挑む全国の天才少年たちのことをもう少し詳しく知ってもらうためにも、ぜひこの名著はもっと多くの人に読んでもらいたいと願っている。
奨励会……。そこは将棋の天才少年たちがプロ棋士を目指して、しのぎを削る“トラの穴”だ。しかし大多数はわずか一手の差で、青春のすべてをかけた夢が叶わず退会していく。途方もない挫折の先に待ちかまえている厳しく非情な生活を、優しく温かく見守る感動の1冊。
未来の名人を夢見る天才少年達が熾烈な競争を繰り広げる奨励会。青春のすべてをかけた彼らの代償とは何か。彼らの戦いはなぜこんなにもせつなく胸に迫ってくるのだろう―ベストセラー『聖の青春』著者が放つ感動のドラマ!!夢と挫折の奨励会物語。
第23回講談社ノンフィクション賞受賞作。
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