将棋竜王戦ランキング戦決勝|杉本八段と藤井七段の師弟対決が素晴らしかった
前回、「藤井聡太七段が先勝|現役最強棋士・渡辺棋聖とのタイトル戦」でも書いたように、いま将棋がむちゃくちゃ面白いんです。コロナウィルスの影響で2か月ほど対局スケジュールが遅れてしまった結果、今月からものすごい密度の日程で、重要な対戦がいくつも組まれているのである。
そんな過密スケジュールをやり繰りする棋士にとっては大変な毎日の連続だろうが、われわれ将棋ファンからすれば熱戦に目が釘付けとなる日々なのである。そしてその中心にいるのは、やはりこの若き天才・藤井聡太七段である。渡辺棋聖とのタイトル戦に将棋史上最年少記録で挑戦しているほか、先日は竜王挑戦の決勝トーナメント出場をかけ、なんと師匠である杉本昌隆八段との対決だったのである。
プロスポーツを含め、数多く存在するプロ競技のなかにあって、現役で師匠と弟子が対決するというのは極めて珍しい。例えば、野球で、野村克也監督の愛弟子と言えば古田敦也が思いつくだろうが、ふたりが同時に選手としてプレイすることなんてあるわけがないのだ。テニスも同様に、錦織圭がマイケル・チャンと対戦するなんて、ありえないのだ。そう考えると、将棋がいかに特殊であり、かつプロ生命の長いものであるかが分かるというものだ。
いずれにしろ、そんな師弟対決は、タイトル戦さながらに和服で臨み気合十分だった師匠の杉本八段だが、残念ながら自慢の弟子・藤井聡太の前に終盤寄り切られ、無念の敗北。この大舞台で弟子を倒すことを目標にしてきた杉本八段だが、逆に弟子に敗北を喫する「恩返し」を受けた形だ。
- 参考:藤井聡太七段、史上初4期連続優勝 師匠・杉本昌隆八段下し今期も本戦出場/竜王戦・3組ランキング戦決勝(ABEMA TIMES)
しかし、それにしても、今回の対戦を見て改めて感じた人が多いことだろう。この師弟ふたりの素晴らしさに。この師匠にしてこの弟子あり、その二人が大舞台で相まみえるこの奇跡は、将棋の世界でしか起こりえない僥倖と言えよう。そんな若き天才棋士をどう育てたのか、いやどう勝手に、強くたくましく育つよう仕向けたのか。そんな二人の関係は、従来の伝統的な師弟関係とはちょっと異なる、だからこそ現代の子育てにおいてもヒントとなるようなエピソードが多いのではないだろうか。下記の2冊はどちらもおススメの内容だ。藤井七段の快進撃がまだまだ続く今だからこそ、そしてコロナ明けの過密日程のもと、大勝負が毎日のように見られる今こそ、改めて読み返したい書籍なのである。
師匠から見た弟子・藤井聡太の「学び方」とは!! 将棋盤を抱きかかえて号泣していた子どもは、中学生でプロ棋士になった。「将棋に関しては、師匠に自由に反論していい」と言う著者は、いかにして弟子・藤井聡太を導いたのか。内容例を挙げると、 ◎七割以上を目指すには、自分で考えなければならない ◎悔しさが才能を伸ばすエネルギーになる ◎対局の機会の少なさが集中力を鍛える ◎コンピュータが選ばない勝負手を指す ◎学ぶ側には信念、指導者には柔軟性 等々。「思考力」「集中力」「忍耐力」「想像力」「自立心」「平常心」……将棋に強くなるために要するこれらはすべて、私たちが人生をより豊かに生きていくうえで必要な学びである。本書では、藤井聡太という才能、兄弟弟子との交流、師弟関係の源流ともいえる、著者・杉本昌隆の師匠・板谷進との師弟関係から、「真に学ぶこと」とは何かを明らかにする。
藤井七段は、幼いころ、将棋で負けると盤を抱えて泣きじゃくっていたそうです。今の時代「悔しい」と口に出すことや、実現できないことにいつまでもこだわる「あきらめない」気持ちは流行りません。しかし、各界で活躍される著名人の方々は総じて「悔しがり」であり、その「悔しさ」をバネにして活躍されている方ばかりです。その「悔しさ」を力に変えて前に進む方法を師弟の体験を交えつつ、本書で著してもらいました。藤井七段が、いかにしてたゆまぬ努力を楽しんでいるかを師匠の視点で明らかにします。内容例を挙げると ◎デジタル信号だけで判断できる頭脳 ◎悔しがるのも全力の藤井 ◎シンプルな思考力には遠回りがない ◎将棋修行を生かして一流大学に進んだ若者たち 等々 杉本さん主宰の将棋研究会からは、棋士になることに挫折したとしても「悔しがる力」を携えた結果、東大生や医大生も生まれているとのこと。ビジネスパーソン、親世代必読の一冊です。
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