震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える
新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年10月に起こった中越地震に関してだろう。最大震度7の大きな揺れを受け、避難者は最大12万人にのぼった。そのなかでも山古志村は、震災二日後に全村避難を決定するなど甚大な被害を受けた。とくにその際、村民だけでなく、飼われていた牛たちもまたヘリコプターで運ばれているニュース映像は全国に衝撃を与えるものでもあった(朝日新聞記事参照)
なにしろ山古志村は、 伝統行事「牛の角突き」として知られる闘牛の村でもあるのだ。だからこそ、自分たちの避難と同時に、大事な家族でもあり資産でもあり牛たちもまた同じ歩みをともにすべき存在であったのだ(日本経済新聞参照)
さて、そんな山古志村で先週行われたのが、「古志の火まつり」なる祭りだ。豪雪地帯である新潟県長岡市に数ある冬のイベント最期を飾るのが、この火祭りだ。コロナ禍で4年ぶりの開催となったが、実はこの祭りは今年が最後となることが決まっているのだ。 過疎化による人口減少そして高齢化の影響で「さいの神」をつくる萱を集めることさえ困難となり、継続が難しいと断念せざるを得ななかったのである (NHKニュース)
高さ25mの「日本一のさいの神」にその年の新成人等が点火を行い、一年の無病息災・五穀豊穣・震災からの復興等、皆様の願いを祈願するお祭りです。点火後は、真っ白な雪原に舞い昇る50mにも届く火柱は幻想的な世界を映し出します。
(にいがた観光なび)
もちろん、過疎が進んでいるのは新潟県の山古志村だけではない。いまや日本全国の地方自治体は同じような悩みを抱えている。そしてそれはつまり、こうした地域の伝統的な祭りや文化や歴史や風習が、少しずつだが確実に失われていくことを意味しているのだと思う。もしもこうした地元に根付いた風土を残していきたいと思うのなら、僕らに残された時間は決して多くはないと思わざるを得ない、今年の山古志火まつりファイナルの火柱を見ながら、そう改めて感じた。
Amazon Campaign
関連記事
-
-
将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた
最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、毎度新聞やニュース等でも大々的
-
-
裸の男衆がつくる厳寒の異空間|越後浦佐毘沙門堂裸押合大祭に行ってきた
ご存じの方は皆無だと思うが、越後浦佐毘沙門堂裸押合大祭という祭りがある。上半身裸の男衆が「サンヨ!」
-
-
連邦最高裁判事9人が形づくるアメリカの歴史
下の写真がアメリカ連邦最高裁判所だ。各種ニュース等での報道の通り、今回はこの最高裁が、これまで人工妊
-
-
捏造と背信の科学者:繰り返される不正と、研究者の責任ある行動
STAP細胞の件で改めて考えさせられたのは、なぜこの一件だけではなく、研究不正・論文捏造がこれほどま
-
-
そして誰もいなくなった東京|中野正貴の TOKYO NOBODY の世界
緊急事態宣言が発令され、そして街から人が消えた。以下の写真は新宿駅南口、いつもならどの時間帯でも人混
-
-
シンガポール初のリベラルアーツ・カレッジYale-NUSが閉校
シンガポール国立大学と米国イェール大学の提携で始まり、2013年に最初の新入生を迎えたYale-NU
-
-
ニューヨーク・タイムズが選ぶ、今年絶対に行きたい世界52ヶ所:2016年版
さて今年もこのシーズンがやってきましたね。ニューヨーク・タイムズ紙が発表する「今年絶対に行きたい世界
-
-
シンガポール建国50周年|エリート開発主義国家の光と影の200年
先日で建国50周年を迎えたシンガポール。Economist や、Wall Street Journa
-
-
ニューヨーク・タイムズが選ぶ、今年絶対に行きたい世界52ヶ所
毎年1月恒例のニューヨーク・タイムズ紙の特集。昨年第1位に輝いたのはリオ・デ・ジャネイロだったが、今
-
-
世界大学ランキング最新版発表|英国オックスフォード大学が初のトップに
"Oxford Tops List of World’s Best Universities" とい
