*

10代の母:アメリカと日本のテレビの影響

公開日: : 最終更新日:2017/09/19 研究・論文, 経済学・統計学

National Bureau of Economic Research (NBER) の最新のワーキングペーパーの一つ、“Media Influences on Social Outcomes: The Impact of MTV’s 16 and Pregnant on Teen Childbearing”。アメリカで人気のテレビ番組が、10代女性の妊娠・出産を抑制する効果があったという内容だ。

This paper explores how specific media images affect adolescent attitudes and outcomes. The specific context examined is the widely viewed MTV franchise, 16 and Pregnant, a series of reality TV shows including the Teen Mom sequels, which follow the lives of pregnant teenagers during the end of their pregnancy and early days of motherhood. We investigate whether the show influenced teens’ interest in contraceptive use or abortion, and whether it ultimately altered teen childbearing outcomes. We use data from Google Trends and Twitter to document changes in searches and tweets resulting from the show, Nielsen ratings data to capture geographic variation in viewership, and Vital Statistics birth data to measure changes in teen birth rates. We find that 16 and Pregnant led to more searches and tweets regarding birth control and abortion, and ultimately led to a 5.7 percent reduction in teen births in the 18 months following its introduction. This accounts for around one-third of the overall decline in teen births in the United States during that period.

medium_2685229458photo credit: zerok via photopin cc

 

 

10代の妊娠というトピックと、Google Trends や Twitter を利用したデータ収集というキャッチーな手法もあってか、各種メディアでも大きく取り上げられている。例えば、Economist の “Tuned in, turned off: Watching reality TV may deter teens from becoming moms” や New York Times の “MTV’s ‘16 and Pregnant,’ Derided by Some, May Resonate as a Cautionary Tale”、そして CNN の “Study: MTV’s ’16 and Pregnant’ led to fewer teen births” といった具合だ。

 

さて、MTVのこの番組 ’16 and Pregnant’ 、僕は一度だけ観たことがあるのだが、正直なところ一度でもう十分過ぎるという内容なのである。この番組は、実際に妊娠した10代の女の子をカメラが密着撮影して、妊娠から出産後までの日常生活を追いかけるという「リアリティショー」である。ボーイフレンドや友達や家族だけでなく、学校や地域までを巻き込んで繰り広げられる騒動と修羅場を、視聴者がお茶の間でテレビ鑑賞するという、大変にアメリカ的で品のない番組だ。

 

それなのに、いやそれだからこそなのか、結構な視聴率を取っているらしい。その結果、この番組であまりにも生々しく描写される10代の母の現状が、同番組の視聴者である未成年に対しある種の警告となって、10代での出産減少につながったというのは、それはひとつ納得できるストーリーだとは感じる。

 

medium_2446252391photo credit: jeredb via photopin cc

 

このテレビ番組と同様に、先日「アメリカと日本と国際養子縁組でも書いた僕の知人夫婦が引き取った養子の産みの親も、まだ14歳の少女だった。彼女は周りの説得もあって産んだばかりの赤ちゃんを養子に出すことに決めたのだと想像するが、もしも本人が自分自身で育てるということになっていれば、それこそこのリアリティショーが本当のリアルになる時だったのではないかとも思うのだ。しかし、これも書いたように、彼女はその数年後、高校生の時にまた妊娠し出産する。彼女が ’16 and Pregnant’ を観ていたのかどうか、もちろん知る由もない。

 

一方の日本でも、以前放送された『14才の母』というドラマが相当話題になった。志田未来の熱演とミスチルの主題歌が今も印象に残っているが、果たしてこのドラマは、日本の10代のどんな Social Outcomes に影響を与えた(または与えなかった)のだろうか。ドラマの展開としては、様々な苦労があったけれどもやっぱり産んでよかった、という形で終わっていたが、そういうポジティブなエンディングが、アメリカの(多くの場合ネガティブな)リアリティショーとは逆に、日本の10代女性の妊娠・出産増加につながったという影響も、もしかするとあったりするのだろうか。

 

志田未来 バップ 2007-04-25

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

今年のノーベル経済学賞は「行動経済学」のリチャード・セイラーに

今年のノーベル経済学賞が発表され、行動経済学についての貢献が評価され、シカゴ大学のリチャード・セイラ

記事を読む

行動経済学者ダン・アリエリー|お金と感情と意思決定の白熱教室

NHK『お金と感情と意思決定の白熱教室』再放送決定 先日放送されたNHK『数学ミステリー白熱教室』

記事を読む

writing and editing English

英語論文の書き方:英文ライティングここから始める必読テキスト4選

「あらためて国際大学(IUJ)の紹介:留学生の出身国」で書いたように、国際大学の修士学生の多くは、各

記事を読む

theme park long queue

『ヤバい統計学』とテーマパーク優先パスの価格付け

『ヤバい経済学』の大ヒット以来、『ヤバい社会学』、『ヤバい経営学』と続けてきたこのシリーズ。内容その

記事を読む

research proposal

科研費採択のお知らせ届く

昨秋に応募した科研費の採択通知が届いていた。大変にありがたい。今後一層がんばっていきたいと思います。

記事を読む

英語論文の書き方:よりモダンでクリアな英作文テキスト3選

「英文ライティングここから始める」で書いたように、そこで紹介したテキスト4冊は英文ライティングのため

記事を読む

できる研究者の英語プレゼン術|スライド作成からストーリー展開まで

以前に紹介した、ポール・シルヴィア著の『できる研究者の論文生産術』は素晴らしい一冊である。著者は20

記事を読む

経済学Ph.D.のアカデミック・ジョブマーケット|AEA年次総会がサンフランシスコで開催

1月の第一週、日本ではまだお正月気分の頃に開催されるのが The American Economic

記事を読む

科研費に応募する2|申請書作成に向けてどんな情報を参考にするか?

申請書作成に向けて 今年の科研費に応募しようと考えたとき、とくに初めて申請書を書くとなった場合、ま

記事を読む

科研費に応募する3|研究種目をどう選ぶか?

それでは今年の科研費に応募するときにまず考えるのが、実際に研究計画を提出する「研究種目」である。この

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑