*

サッカー・データ革命の時代に読んでおくべきこの5冊

公開日: : 最終更新日:2016/09/01 オススメ書籍, スポーツ, データ, 経済学・統計学

データ革命が加速する世界最先端の現代サッカー

「ワールドカップの閉幕、そしてデータドリブン・サッカーの開幕」で紹介したように、今回のサッカーW杯ブラジル大会を制したドイツチームを支えたのがビッグ・データ分析だったというのは大変に象徴的だと思う。ナショナルチームレベルでサッカーのデータ分析がこれほど注目されたのは初めてかも知れないが、実際のところ、各クラブチームではもっと先端的な取り組みが進められている。

 

その好例がイングランドのプレミアリーグだ。「英国プレミア・リーグと、リバプールのData-driven football」で紹介したように、マンチェスター・シティやリバプールといったチームが、データ分析に力を入れている最有力のチームであり、昨年リーグ2位と大躍進したリバプールにとっては特に、ようやくこれまでの取り組みの成果が出てきたといったところではないだろうか。。一方で、日本のJリーグに目を転じれば、いま最も注目すべきは間違いなく横浜マリノスであろう。

 

今年5月には、マンチェスター・シティーを傘下に持つシティー・フットボール・グループが横浜F・マリノスに19.95%出資(日経新聞)し、本格的な提携がスタートした。そしてその背景には、週刊ダイヤモンドの関連記事が報じているが、上述したように、マンチェスター・シティが持つ豊富なデータとその分析の蓄積があるのだ。

 

いずれにしろ、W杯ドイツ優勝を機に、サッカーの試合に対するデータ活用が今後一気に加速すると思われる。そんな背景を整理し、データ分析で何ができるのかを理解するには、以下でおすすめする関連書がぴったりだ。どれもエキサイティングに読めるものとして、サッカーを始めとするスポーツファン、そしてデータギークに一読をすすめしたい。

 

 

「ジャパン」はなぜ負けるのか─経済学が解明するサッカーの不条理

本書は、ジャーナリストのクーパーと、ミシガン大学のシマンスキー教授による著作。原題 “Soccernomics” が十二分に表しているように、サッカーを経済学的に分析した画期的な一冊であり、まずはここから読み始めるのが王道だろう。また、「なぜネイマールは右へ蹴ったのか?」でも紹介したように、クーパーはその後もフィナンシャル・タイムズに度々サッカーの話題を寄稿しており、そのいずれも興味深い。ぜひ今後もウォッチしてほしい。

 

 

サッカー・データ革命─ロングボールは時代遅れか

本書は、サッカーのデータ分析に関する最新の一冊。原題 “The Numbers Game: Why Everything You Know About Soccer Is Wrong” が明瞭に伝えるメッセージは、我々の直感は間違える、だからデータ分析が必要なんだ、ということである。例えば、サッカーの試合でコーナーキックの数の多さは、そのチームが優勢な状況にある証だ、と我々は考えがちである。しかし本当にそうなのか?ということを著者はデータから実証していくのだ。

 

本書の特徴として挙げられるのが、第一に、ポアソン分布、ベルヌーイの定理、ベイズ統計といった、統計学のコンセプトを使ってデータの見方を解説している点であろう。そして第二に、American Economic Review や、Quarterly Journal of Economics、Journal of Political Economy といった経済学のトップジャーナルからの引用が多いこと。著者が原論文に当たって議論している点に好感が持てる。そして第三に、上記コーナーキックの話題に以外にも非常に多岐にわたるトピックをカバーしていることであろう。例えば個人的には、サッカーの賭けが他のスポーツよりも著しく難しい理由を説明するくだり等、大変興味深く読んだ。ワールドカップ等も含めて最新のネタで面白く、イチオシの一冊である。

 

 

オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く

本書は、シカゴ大学のモスコウィッツ教授等による一冊。以前にも紹介したものだが、サッカー以外にも様々なスポーツを話題としており興味深い。例えば、ホームチームは本当に有利なのか、バスケでシュートが連続して決まる「ホットハンド」は本当に存在するのか、等々といったテーマに、データ分析で鋭く切り込む。以下は関連エントリ。

 

 

マネー・ボール

本書も、もう何度も紹介してきた名作だ。米国メジャーリーグの戦略を大きく変えたこの「マネー・ボール革命」こそが、今のサッカー界におけるデータ分析のトレンドを形成している。その他スポーツにおいても現在盛んにデータ活用が進められているが、それらも全てこの一冊に凝縮されたアイデアから始まっていると言ってよい。もしも未読なら、ぜひこの機会にこの一冊から読み始めてほしい。

 

 

シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」

本書は、現代の「天才的予測屋」ネイト・シルバーが著した一冊。米国大統領選挙で名を挙げた彼だが、その前から取り組んでいたスポーツ分析こそが本業とも言える。本書ではスポーツを初め、政治から天気そして株価予想まで、ありとあらゆる世界の予想・予測を追いかけたものだ。シルバーをもってしても、今回のサッカーW杯の優勝を当てることはできなかったわけだが、それは逆に言うと、サッカーがそれだけ予想困難な(だからこそ面白い)スポーツであることの証左なのかも知れない。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

flag of bhutan

西水美恵子著『国をつくるという仕事』が称賛する、ブータン国王のリーダーシップ

ブータン訪問記の続き。 ちょっとブータンまで行ってきた。 ブータンではみんな王室と国王と

記事を読む

vermeer blue

アートは小説よりも奇なり:盗作と贋作の歴史、美術ノンフィクションが面白い

なんと、僕が好んで読む美術ノンフィクションの傑作が2冊も文庫版として再登場しているではないか。『ギャ

記事を読む

NHK-ETV特集 将棋電王戦:棋士vsコンピュータの激闘5番勝負

先週末に放送されたNHK-ETV特集の「棋士VS将棋ソフト 激闘5番勝負」をご覧になっただろうか?面

記事を読む

今年のノーベル経済学賞は「行動経済学」のリチャード・セイラーに

今年のノーベル経済学賞が発表され、行動経済学についての貢献が評価され、シカゴ大学のリチャード・セイラ

記事を読む

打倒青山学院|来年の箱根駅伝をもっと面白くするこの5冊

青山学院の5連覇がかかる来年の箱根駅伝、僕もまた正月の2日間テレビの前に釘づけとなってしまうことだろ

記事を読む

conditional probability

今からでも遅くない|しっかり学ぶ統計学おすすめ教科書と関連書15選

今こそしっかり統計学を学ぼう 以前に「統計学が最強の学問である、という愛と幻想」で書いたように、こ

記事を読む

adidas

絶対に負けられないサッカー・ワールドカップの舞台裏:スポーツブランドのもう一つの闘い

「絶対に負けられない戦い」に直面しているのは、もちろんサッカー選手だけではない。監督やスタッフ等もそ

記事を読む

グランドスラム初優勝を目指す錦織圭のテニスをデータ観戦しよう

さあ、いよいよ注目の一戦が始まるぞ。2017年の全豪オープンテニス4回戦で、錦織圭がロジャー・フェデ

記事を読む

ラグビー日本代表が強くなった理由|エディー・ジョーンズのコーチング

冬のスポーツ風物詩と言えば、箱根駅伝に加えて高校サッカー、そして大学ラグビーである。そんなラグビーの

記事を読む

デロイト・フットボール・マネーリーグ最新版:欧州サッカーチームの経営学

デロイトが最新のレポート "Football Money League 2015" を発表した。これ

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

【Kindleセール】高野秀行の傑作ノンフィクション|ミャンマー秘境探検記

本日の Kindle日替りセールに、あの高野秀行の『ミャンマーの柳生一

【Kindleセール】世にも奇妙な論文|知的研究と至高のエンターテインメント

以前に「ヘンな論文を書き続ける動機と勇気」でも紹介した、学者芸人サンキ

長岡の花火大会が今年も素晴らしかった|来年はぜひお越しください

日本三大花火のひとつに数えられる新潟県長岡市の大花火大会。僕は今年も、

【Kindle特大セール】世界トップレベル・プロゲーマーの思考と情熱

現在実施されている【50%ポイント還元】 Kindle本夏のセール が

これは経費で落ちません|経理部が見つめる人間模様

NHKで現在放送中のドラマ「これは経費で落ちません!」が面白い。多部未

歌舞伎町ホストの帝王・ローランドの言葉にみる至極真面目なプロ意識

現代ホスト界における圧倒的カリスマ、歌舞伎町の夜の帝王、そしてこの世に

Kindle半額セール|『実行力』に学ぶ組織と人材のマネジメント

始まったばかりのKindle本夏のセールが、50%ポイント還元と超お買

組織を動かす実行力|結果を出す仕組みの作り方

新刊『実行力』を興味深く読んだ。本書は、ご存知橋下徹が、これまで大阪府

PAGE TOP ↑