*

今こそ再び学ぶ『英語の読み方』|読めるか読めないかそれが問題だ

公開日: : 最終更新日:2021/06/20 オススメ書籍, 英語

英語学習に関する書籍というのは、それこそ書店に溢れていて、玉石混交でどれを選んだらいいのか分からない、そんな人も多いと思う。そのような出版状況のなかにあって、『英語独習法』などの良書が新書で出版されていることに注目していたのだが、また新たにおすすめしたい書籍がやはり新書で登場した。

 

 

それがこの『英語の読み方』である。すでに評判となっている一冊のようなので、僕だけが知らなかったのなら申し訳ない(苦笑)。今さらなのかも知れないが、これが実に素晴らしい内容だったので紹介しておこう。以下にあるような絶賛の声は、宣伝文句なのだから大幅に割り引いていいはずなのに、これが実際に超納得、激推奨、だったのである。

絶賛の声、続々!

「新書でここまでやるか」と驚愕した。英語本市場の眠りを覚ます黒船本
――読書猿さん

ビジネスにも趣味の読書にも活用できる、本物の英語力を築くための一冊
――越前敏弥さん

北村さんのせいでむずむずと英語を読みたくなった
――阿部公彦さん

特殊な言い回し、強調・省略の表現、見出し言語、Whole Part法……洋書やネットの英文を「読みこなす」ためのレッスン。

〈内容紹介〉
ネット上で海外発の情報に接する機会が増えた昨今、英語を読む力の重要性はますます高まっている。本書では、ニュース記事や論文、SNS、小説など、幅広いタイプの英文の読み方を指南。論理的な読み解きのセオリーを解説する。独学者にとって宝の山である各種サイトの活用法や、ネイティブでも間違えやすい表現など、「さらに上」を目指す人へのガイドも満載。巻末に、重要語彙・文法が身につく60の厳選例文を収録。

 

 

著者の北村一真は、現在は大学教員として教壇に立っているが、以前には学習塾・予備校で英語講師を務めていた経験をもつ。だからこそ、現在の日本の英語教育のなかで考えられている「使える英語」というものに、大きな違和感を持っていたのだという。つまり、聞いたり話したりと外国人とのコミュニケーションを図るための「使える英語」という考え方からは、英語の読み書きがすっぽり抜け落ちてしまっているという指摘だ。しかしながら著者は断言する。海外の多様なニュースサイトから情報を得て「読む」力や、SNSを通じて自分から情報発信したり交換したりするための「書く」力は、このような現代だからこそ実用的で必須のスキルなのだと。大いに納得だ。

 

 

 

 

 

加えて、より重要な指摘は、このように能動的に英語情報にアクセスし、ネットで日常的に使われている英語を問題なく読めるかどうかが、自分の能力を自ら高めていける人と、そうでない人との、大きな分水嶺となっている、という事実だ。まさにその通りで、英語がデキるデキない、よりも、デキるようになるために自分で頑張れるかどうかが、将来の大きな格差となるのは間違いない。そんな学生・予備校生・受験生を数多く見てきて著者だからこその、極めてリアルで生々しい指摘、それが本書を書く大きなモチベーションとなっており、数多の類書と一線を画す、ユニークな視点となっているのだ。

 

本書ではより具体的に、英語読解力の向上に役立つニュースサイトの紹介から、YouTubeやTED talks のおすすめ活用方法など、現代にマッチした学習方法が提案される。さらには、新聞・ニュース等で時事英文を読む訓練、そしてより論理的な文章を読むための論文読解まで、少しずつレベルを高めながら、「使える英語が身につく」とは一体どういうことなのか、を実感してもらえるような構成となっている。著者の願いは、本書を読み終えた人たちが、ここで展開された方法やアイデアを使って、自ら積極的に英語のネット記事を読んだり、英語のニュースや動画などを楽しんでいけるようになることなのだ。

 

素晴らしいタイミングで出版された本書は、現代を生きる人にとって、そしてこれから英語を特別なこととしてではなく普通のこととして使っていくためにも、必須の基礎スキルなのだと改めて実感させてくれる、とてもよくできた良書なのである。学生だけでなく、もちろん新社会人にとっても、そしてこれから大人の学び直しをしたいと思っている人にもおすすめできる一冊だ。ぜひ多くの人に読まれることを願っている。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

NHK-ETV特集 将棋電王戦:棋士vsコンピュータの激闘5番勝負

先週末に放送されたNHK-ETV特集の「棋士VS将棋ソフト 激闘5番勝負」をご覧になっただろうか?面

記事を読む

できる研究者の論文執筆術:Write It Up

前回「できる研究者の論文生産術:How to Write a Lot」で紹介したように、英語ライティ

記事を読む

捏造と背信の科学者:繰り返される不正と、研究者の責任ある行動

STAP細胞の件で改めて考えさせられたのは、なぜこの一件だけではなく、研究不正・論文捏造がこれほどま

記事を読む

岸田奈美のエッセイが好きだ

普段は見ていなくとも、12月6日の「サンデーステーション(テレビ朝日)」だけは見た方がよいかも、そう

記事を読む

申請者必携のハンドブック『科研費獲得の方法とコツ』に最新第4版が登場|採択率を上げる書き方

今年もまた科学研究費助成事業(科研費)の締切が近づいてきた。多くの研究者が申請するこの科研費だが、も

記事を読む

辞書編纂者・飯間浩明の仕事の流儀プロフェッショナル

先日NHKで再放送された「プロフェッショナル仕事の流儀」をご覧になっただろうか。「言葉の海で、心を編

記事を読む

行動経済学者ダン・アリエリー|お金と感情と意思決定の白熱教室

NHK『お金と感情と意思決定の白熱教室』再放送決定 先日放送されたNHK『数学ミステリー白熱教室』

記事を読む

japanese dictionaries 1

国語辞典業界最大の謎がいま明らかにされる|辞書になった男ケンボー先生と山田先生

近年まれにみるほどの傑作ノンフィクション『辞書になった男 ケンボー先生と山田先生』が、待望の文庫化・

記事を読む

【超おすすめ】サンキュータツオの名著『学校では教えてくれない!国語辞典の遊び方』がキャンペーン中

あのサンキュータツオをご存知だろうか?早稲田大学大学院文学研究科の博士課程に学び、一橋大学で非常勤講

記事を読む

闘う頭脳|将棋棋士・羽生善治VSチェス棋士ガルリ・カスパロフ

今年3月にNHKーETV特集で放送された「激突!東西の天才 将棋名人羽生善治 伝説のチェスチャンピオ

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑