夏休みに素敵な1冊を探そう|知的好奇心旺盛な10代のための読書地図
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最終更新日:2021/08/02
オススメ書籍
いまどき新聞なんてほとんど読まない、そんな人が増えてきた現代である。しかしながら、書評欄を楽しみに週末の新聞だけには目を通すという人は、意外と多かったりするのではないだろうか。僕もそんなひとりである。
書評欄と同じく面白く読むのが、いわゆるブックガイドである。最近出版されたばかりの『10代のための読書地図』は、書評誌「本の雑誌」による10代向けのブックガイドだ。これが実に面白かったので、ぜひとも紹介しておきたい。10代向けということで、夏休みの課題図書みたいな世界的名作ばかりなんじゃない、と思っていたらこれがまったく違った。大人から子供へ説教たれるような、気分のよいものではないのでは、いやそんなこと全然なかった。
これはむしろ、今こそ大人が読むべきブックガイドなのかもしれない。とくに興味深く読んだのが、全国の書店員さんたちが選ぶ「10代のときに読んでおけばよかったと後悔した本」である。じつに面白い。だいたいにおいて、おすすめする本というのは、どうしても似通ってくる。なんとなく誰もが名著と称賛するものがどうしても選ばれがちである。しかし、「読まなくて後悔した本」というのは、自分の過去を振り返ってみればわかるように、じつにパーソナルなものである。例えば、あのころ、親友や彼女彼氏にすすめられたのに結局読まなかったあの一冊とか、大人になってたまたま手にしたこの一冊が当時の自分の心象をずばり描いていたとか。
そんなふうにして、「10代に読まずに後悔した本」とは、それを選ぶ人に十人十色の人生があり、逆説的には、あのとき読まなかったからこそ、そしてそれを後悔しているからこそ、今があるのである。本書を読む人はぜひそんな、あのときの自分を思い起こしながら、自分にとっての「読まずに後悔した本」を探してみて欲しい。それ以外にも本書には、TikTok がきっかけとなって生まれたベストセラーや、ぼくらが思っているよりもずっと、いまの10代が読書時間をとっている様子、そしてコロナ禍とステイホームで大きく事情が変わったことなどについても述べられており、現在の出版・読書環境を知る上でも大いに参考になったのである。あの頃の自分を振り返るという意味でも、やっぱり大人にこそ読んで欲しい一冊なのかもしれない。
つらいときも さびしいときも
たのしいときも どんなときも
本がある。書評誌「本の雑誌」初の10代向けのブックガイド。「朝の読書」や「夏休みの読書感想文」対応の「本の雑誌が選ぶ10代におすすめする100冊座談会」から「ジャンル別10代おすすめ本ガイド」、全国書店員さんがおすすめする10代に読んでほしい本&10代のときに読んでおきたかったと後悔した本など、興味を引きやすい角度から本を紹介。
また本屋さんでの本の買い方・探し方ガイドや本好きのためのハローワークなどなど、「本の雑誌」ならではの切り口で、10代の読書に迫る。
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