明鏡国語辞典の最大の特徴は「問題な日本語」に対する答え
公開日:
:
最終更新日:2016/11/27
オススメ書籍
国語辞典編纂という仕事は、とても重要なものなのに一般に知られることがほとんどない。その職務内容やそこに携わる人物を鮮やかに描いた三浦しをんの『舟を編む』は、だからこそとても興味深く読んだ。なにしろ僕自身もこれをきっかけにして、国語辞典には編纂者のキャラクターが色濃く反映された「個性」があることを知り、思わず各種辞典を買い揃えてしまい、今ではその違いを味わい楽しむことの面白さを知ってしまったのだ。そして、その際に大いに参考になったのが、国語辞典芸人にして一橋大学非常勤講師の肩書も持つサンキュータツオだった。
彼の著書『学校では教えてくれない!国語辞典の遊び方』は、薀蓄とユーモアにあふれたとても素敵な一冊だ。その他にも辞書関連本には実に興味深い内容が多く、これらを契機にぜひ一人でも国語辞典ファンが増えてほしいものだ。

そんなサンキュータツオ氏が先日の新聞紙上コラムで紹介していたのが、大修館書店の『明鏡国語辞典』だ。数多くの辞書が鎬を削る業界において、この辞典は最後発に部類されるものである。だからこそ、他の辞書にはないキョーレツなセールスポイントが必要になるわけであり、それが「日本語の使い方」なのである。とくに、誤用と敬語がわかる別冊「明鏡 問題なことば索引」は、これだけでも売って欲しいという声があがるほどの人気ある内容となっている。
サンキュータツオ氏が解説するように、この辞典のポイントは日本語の使い方と誤用に相当のページを割いている点だ。例えば、「正式の会員」「正式な会員」のどちらが正しいのか?どちらとも正しいのならば、どう使い分けるのか?「自然の変化」と「自然な変化」の違いは?といった具合に、「の」と「な」の用法に詳細な解説を加えているのは、他の辞典には見られない大きな特徴であり、困ったときの相談相手としてこれほどふさわしい辞書もないだろう。
そして、明鏡国語辞典のこの特徴がどこに起因しているかと言えば、それはもちろん辞書編纂者の問題意識と個性なのである。今回の場合には、北原保雄氏が編纂を務めており、同氏があのベストセラー『問題な日本語』の著者だと知ったら、同辞典のこの編纂視点にも大いに納得するのではないだろうか。
というように、大変な個性の持ち主である明鏡国語辞典。三省堂の新明解や岩波国語辞典といった超ベストセラーの影に隠れてはいるものの、明鏡のキラリと光る視点は見逃せない。だから、国語辞典は一冊ではだめなのである。最低3冊、できれば5冊、10冊と揃え、目的に合わせ辞書を使い分けていくべきなのである。
Amazon Campaign
関連記事
-
-
英語論文アカデミック・ライティング絶対おすすめできる18冊
以下のエントリ・シリーズで詳述しているように、これまで僕自身が多種多様の英語ライティングテキストを読
-
-
歌舞伎町ホストの帝王・ローランドの言葉にみる至極真面目なプロ意識
現代ホスト界における圧倒的カリスマ、歌舞伎町の夜の帝王、そしてこの世には二種類の男(自分かそれ以外)
-
-
『シグナル&ノイズ 天才データアナリストの予測学』のネイト・シルバーがおすすめする2冊の絵本がステキ
「今年続けて読みたい統計学オススメ関連書と教科書15冊」で紹介したうちの一冊が、ネイト・シルバーの『
-
-
君はスポーツとしての将棋をみたか?藤井聡太とナンバー大特集
先日発売された総合スポーツ雑誌『Number』が大変な売れ行きとなっている。その理由はズバリ、藤井聡
-
-
2015年ことしのベストセラー|紙書籍編
先日の「ベストセラー電子書籍編」に続き、今回は本ブログ経由でよく読まれた紙の書籍編を紹介しよう。以下
-
-
【おすすめ書籍】ハーバード数学科のデータサイエンティストが明かす恋愛ビッグデータの残酷な現実
アメリカでベストセラーとなった一冊 "Dataclysm" がようやく翻訳出版された。これは人気出会
-
-
これは経費で落ちません|経理部が見つめる人間模様
NHKで現在放送中のドラマ「これは経費で落ちません!」が面白い。多部未華子が演じるアラサー独身女子・
-
-
「お茶」が教えてくれる日々のしあわせ
10/13(土) から上映が始まった『日日是好日』。樹木希林の遺作となったこの映画、もちろん僕も見に
-
-
今からでも遅くない「行動経済学がわかるフェア」
「今年のノーベル経済学賞は『行動経済学』のリチャード・セイラーに」でも書いたように、2017年の受賞
-
-
『ヤバい統計学』他で学ぶ数字のセンス|統計リテラシー入門におすすめの4冊
以前にも「『ヤバい統計学』とテーマパーク優先パスの価格付け」で紹介したように、カイザー・ファング著『



