稀代の絵師・伊藤若冲の作品群が日本に里帰り
ここ数年、日本美術がもの凄いブームと言ってよいほどの盛り上がりを見せているのはご存知の通りだ。そしてその人気を牽引してきたのが、江戸時代の奇想の絵師・伊藤若冲である。僕も若冲展には何度も足を運んでいるのだが、毎回大行列を経験し、あらためてその人気ぶりを実感するのである。
そんな若冲美術の収集家と知られるエツコ&ジョー・プライス夫妻のコレクションを、出光美術館が購入したと発表した(日本経済新聞)。一部とは約190点もの数であり、その中にはあの鳥獣花木図屏風も含まれており、これは同美術館にとって素晴らしいラインナップとなったことと思う。2020年から公開される特別展が今から楽しみで仕方ない。
それにしても、1960年代に初来日して以降、江戸絵画を収集してきたプライス氏だが、その当時は殆どの日本人が自分たちの国にある美術作品の芸術的価値に気づけていなかった。その中で唯一とも言えるべき存在だったのが辻惟雄であり、近年の若冲再発見・再評価と爆発的ブームは、彼の名著『奇想の系譜』によるところが極めて大きい。
いずれにしろ、今回の出光美術館の若冲作品購入を機に、また大きな注目が集まることだろう。来年の展覧会にはまた長い長い行列が出来ることだろうが、それはこの作品群が日本に里帰りしてきたというグッドニュースならではだと納得し、喜んで並ぼうではないか。
Amazon Campaign
関連記事
-
東京五輪と同時開催していた「数学オリンピック」でも日本代表がゴールドメダル|この漫画がスゴい
東京オリンピックが閉会した。日本代表選手が獲得したメダルの数や色に一喜一憂するのは当然かも知れないが
-
将棋マネーリーグ|藤井聡太竜王が2021年賞金ランキング3位に
今年もこれまで通り、昨年の将棋棋士の賞金獲得ランキングが発表されたぞ(ランキング表)。上位陣に大きな
-
論文捏造はなぜ繰り返されるのか?科学者の楽園と、背信の科学者たち
先週は、小保方晴子氏の論文「学位取り消しに当たらず」(NHK)との報道が新たな議論を引き起こしている
-
美術大学青春グラフィティーと漫画ブルーピリオド
先日放送されたNHKの番組「ドキュメント72時間」をご覧になっただろうか?個人的に好きな番組のひとつ
-
アメリカ地方自治体の分断:富裕層による独立運動
先日のNHKクローズアップ現代を興味深く視た。「“独立”する富裕層 ~アメリカ 深まる社会の分断~」
-
夏本番。今年はぜひ美味しいクラフトビールを飲もう!
アメリカのビールと言えばバドワイザー。そのイメージは正しい。なにしろ下図が示すように、市場シェアで圧
-
美容と整形:2013年も引き続き市場は拡大
美容と整形について、最新のレポート "UK cosmetic surgery statistics
-
日本に残る最後の秘境へようこそ|東京藝術大学のアートでカオスな毎日
いよいよこの書籍が文庫化されましたね。そう、2016年に出版され大きな話題となった一冊『最後の秘境
-
そして誰もいなくなった東京|中野正貴の TOKYO NOBODY の世界
緊急事態宣言が発令され、そして街から人が消えた。以下の写真は新宿駅南口、いつもならどの時間帯でも人混
-
ニューヨーク・タイムズが選ぶ、今年絶対に行きたい世界52ヶ所:2016年版
さて今年もこのシーズンがやってきましたね。ニューヨーク・タイムズ紙が発表する「今年絶対に行きたい世界