英語論文の書き方:英文ライティングここから始める必読テキスト4選
「あらためて国際大学(IUJ)の紹介:留学生の出身国」で書いたように、国際大学の修士学生の多くは、各国政府の各省庁からの派遣留学である。そのため、出身部署の仕事と関連付けたリサーチ・トピックを持っており、それぞれとても興味深い。また既にデータを入手済みのことも多く、それはこちらとしても大変にありがたい。もちろん、必ずしも入学前から持っていたトピックやデータにこだわらなくともよい。
さて、そんな留学生の修士論文指導を僕自身も担当しているのだが、彼ら彼女らのリサーチプロポーザルを読んだり、論文ドラフトを読んだりして感じるのは、英語のライティング。人によってそのレベルはまちまちなのは当然なのだが、全体としてみると英語会話力の高さに比べて(英語を流暢に話す学生はとても多い)、英語ライティングのちからはそれほど高くないように思う。もちろん、そもそも僕がエラソーに言うことか、というご意見はもっともなのだが、それでも僕自身としては、英語学習においては、ライティングのちからを付けるのが最も時間がかかるが、最も確実にちからが付くものだと思っており、だからなるべく早いうちからライティングを伸ばす時間を取るようにアドバイスしているのだ。
photo credit: AlaskaTeacher via photopin cc
例えば英語の発音やスピーキングを今から矯正するのは相当シンドイが、ライティングは今からでもまだまだ伸びる。そう信じて、自分の経験をもとにしながら、論文指導中の学生に幾つか助言しているところなのである。その一つ目のアドバイスが「英語ライティングのルールを守る」ということ。そのためにまず読まなければならないのが、Strunk and White の “The Elements of Style” と、Zinsser の “On Writing Well” だ。
この2冊は、Greg Mankiw が自身のブログエントリ “How to Write Well” でも言及している名著であり、My Rules of Thums (PDF) の中でも、Rule No. 5: Write Well と題して、やはりこの2冊を推薦している。英語ネイティブのアメリカ人学生やCEA (Council of Economic Advisers) アナリスト/リサーチャー達が読まされているライティングのテキストなのである。であるならば、英語ノンネイティブの僕たちはもっともっと繰り返して読む必要があるのではないか。その意味でも、ぜひここから始めたい、基本中の基本の2冊なのである。
When I was CEA chair, I sent the following guidelines to my staff as they started drafting the Economic Report of the President. (中略)Buy a copy of Strunk and White’s Elements of Style. Also, William Zinsser’s On Writing Well. Read them—again and again and again.
ちなみに、”On Writing Well” は次のような構成となっており、英語ライティングにおいて何がNGなのかを事細かく解説する。決しておもしろく読めるものではないが、こうした基本的ルールを覚えて守ることが、王道の第一歩だと思う。
Part I: Principles
Chapter 1. The Transaction
Chapter 2. Simplicity
Chapter 3. Clutter
Chapter 4. Style
Chapter 5. The Audience
Chapter 6. Words
Chapter 7. UsagePart II: Methods
Chapter 8. Unity
Chapter 9. The Lead and the Ending
Chapter 10. Bits & PiecesPart III: Forms
Chapter 11. Nonfiction as Literature
Chapter 12. Writing About People: The Interview
Chapter 13. Writing About Places: The Travel Article
Chapter 14. Writing About Yourself: The Memoir
Chapter 15. Science and Technology
Chapter 16. Business Writing
Chapter 17. Sports
Chapter 18. Writing about the Art: Critics and Columnists
Chapter 19. HumorPart IV: Attitudes
Chapter 20. The Sound of Your Voice
Chapter 21. Enjoyment, Fear and Confidence
Chapter 22. The Tyranny of the Final Product
Chapter 23. A Writers Decisions
Chapter 24. Write as Well as You Can
さて、僕が学生に伝えている二つ目のアドバイスは「英語ライティングのスタイルを覚える」ということ。上記のような英作文の基本ルールを踏まえた上で、それでは具体的にどう書けばよいのか、そのために必要になるのが英作文のスタイルだ。こうした実践的な内容を解説するテキストとしては、以下の Trimble の “Writing with Style: Conversations on the Art of Writing” および、Williams and Bizup の “Style: Lessons in Clarity and Grace” の2冊が非常に参考になる。
ルールを解説したテキストの次の一歩として、エクササイズを徹底するものと言えるだろう。良い英文と悪い英文を比較分析したり、歴代大統領の言葉を引いたり、そして何より練習問題を通じて実際に書かせることで、英作文のスタイルを読者の体に覚えさせようという意図のテキストだ。スタイルを覚えて書く、そして書いて覚える、そういう使い方が相応しいだろう。
“Style: Lessons in Clarity and Grace” の構成は次のようになっており、とくに前半部分の Clarity に関して熟読を薦めている。今回リストアップした4冊は、以前にも「英文ライティングおすすめ参考書」で紹介したものである。これらは僕自身が留学中に何とか英語ライティングのちからを伸ばしたいと思い、試行錯誤しながら学んでいった内容だが、いまそれが、学生の論文を指導する側に立ってみて、思いのほか役に立っている。
Part I: Style as Choice
Lesson 1. Understanding Style
Lesson 2. CorrectnessPart II: Clarity
Lesson 3. Actions
Lesson 4. Characters
Lesson 5. Cohesion and Coherence
Lesson 6. EmphasisPart III: Clarity of Form
Lesson 7. Motivation
Lesson 8. Global CoherencePart IV: Grace
Lesson 9. Concision
Lesson 10. Shape
Lesson 11. ElegancePart V: Ethics
Lesson 12. The Ethics of Style
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