*

闘う頭脳|将棋棋士・羽生善治VSチェス棋士ガルリ・カスパロフ

公開日: : 最終更新日:2016/09/12 オススメ書籍

今年3月にNHKーETV特集で放送された「激突!東西の天才 将棋名人羽生善治 伝説のチェスチャンピオン ガルリ・カスパロフ」をご覧になった方も多いと思う。しかし本放送を見逃した方にとっては朗報、5/9(土)の夜、再放送されることとなった。これはぜひとも視聴してほしい番組だ。

 

 

ここ数年の「電王戦」で明らかとなったように、今のコンピュータ将棋は現役プロ棋士を凌ぐ強さを身につけた。コンピュータがチェス王者を破って以降も、相手から取った駒を再利用できる将棋はそのより複雑なルールにより、まだまだ人間の方が強いといった期待は、予想を遥かに上回るスピードで覆されていると言えるだろう。

 

そんなコンピュータに敗れたチェス世界王者が、今回のETV特集に登場するガルリ・カスパロフだ。1997年に彼が対戦したのが、IBMが開発したディープ・ブルーであり、カスパロフが1勝2敗3引き分けと負け越した結果、人類がコンピュータに負けたと大きな話題となった。

 

そんな彼が、日本が誇る最強の棋士・羽生善治と対談・対戦したのである。これが面白くないわけなかろう。ぜひその天才頭脳の対話をこの番組で楽しんで頂きたい。僕自身は将棋にもチェスにも興味を持っているため、とても刺激的に本放送を視聴したのは言うまでもない。

 

ちなみに、先日出版されたばかりの『羽生善治 闘う頭脳』が素晴らしい内容だった。羽生には著書『決断力』『大局観』といった名著があり、そのときどきでの彼の思考と哲学を語ってきた。それに対し本書『闘う頭脳』は若かりし頃の羽生から現在までを、過去のコラムやインタビュー等をもとにして時系列で捉え直したものであり、彼の進化してきた部分とブレない部分、それがクリアに分かる一冊として極めて読み応えがある。将棋ファンにとってはもちろん、そうでない人にも面白く読めること間違いなし。

 

 

最後に、今回のETV特集の主役カスパロフも著書を出している。僕自身は出版された当時、つまり随分と前に読んだものだったのだが、チェス世界王者の考えを知るという意味でも、そしてまた羽生を始めとする将棋棋士と比較するという意味でも、当時ものすごく興味深く読んだのを懐かしく思い出した。今回のETV特集を機に、羽生と将棋だけでなく、カスパロフとチェスにも、もっと関心を持つ層が増えることを期待したい。

 

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

国語辞典ベストセラーランキングに見る人気辞書|中学生以上は新明解、小学生はドラえもんかチャレンジか

国語辞典というのは大変におもしろい。実に個性豊かであるにも関わらず、その特徴は必ずしもきちんと伝わっ

記事を読む

組織を動かす実行力|結果を出す仕組みの作り方

新刊『実行力』を興味深く読んだ。本書は、ご存知橋下徹が、これまで大阪府知事として、そして大阪市長とし

記事を読む

世界を変えた密約と帳簿・会計の世界史

Amazon Kindle の「文春の翻訳本・政治経済編」キャンペーンでは、おすすめ書籍が期間限定で

記事を読む

超ヤバい経済学者のゼロベース思考—どんな難問もシンプルに解決できる

『ヤバい経済学』が世界中で大ベストセラーとなったばかりか、その続編『超ヤバい経済学』もヒットさせた売

記事を読む

欧州サッカー・マネーリーグ|今年も首位のバルセロナだけれども

毎年、この時期に楽しみなのが、「デロイトフットボールマネーリーグ」である。世界的な監査法人デロイトが

記事を読む

若い読者のための経済学史と哲学史

米国イェール大学出版局の "A Little History" は、歴史や文学そして経済学といった学

記事を読む

puma

スポーツの統計学|データ・サイエンティストたちのゲーム分析

スポーツ界に広がるデータ革命 これまで何度か書いてきたように、スポーツとデータというのはとても相性

記事を読む

華麗な王者モハメド・アリと、そのアリになれなかった男|沢木耕太郎の名著『敗れざる者たち』と『一瞬の夏』を再読する

2016年6月4日、プロボクシングの元世界ヘビー級チャンピオン、モハメド・アリが74歳の人生に幕を閉

記事を読む

chess board

機械 vs 人間:チェス、予測、ヒューリスティック

今回もサッカー・ワールドカップ予想をしている、毎度注目の統計家ネイト・シルバー。その彼の著書『シグナ

記事を読む

Kindle電子書籍で安く読める、経済学および統計学の教科書

電子書籍の普及がますます加速しているが、大学や大学院で使う教科書はまだまだ電子化が遅れている。しかし

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

卒業・入学おめでとうキャンペーン|80年記念の新明解国語辞典で大人の仲間入り

今年もまた合格・卒業、そして進級・進学の季節がやってきた。そう、春は

食の街・新潟県南魚沼|日本一のコシヒカリで作る本気丼いよいよ最終週

さて、昨年10月から始まった2022年「南魚沼、本気丼」キャンペーン

震災で全村避難した山古志村|古志の火まつりファイナルを迎える

新潟県の山古志村という名前を聞いたことのある人の多くは、2004年1

将棋タイトル棋王戦第3局|新潟で歴史に残る名局をライブ観戦してきた

最年少記録を次々と塗り替える規格外のプロ棋士・藤井聡太の活躍ぶりは、

地元密着の優等生|アルビレックス新潟が生まれたサッカーの街とファンの熱狂

J2からJ1に昇格・復帰したアルビレックス新潟が今季絶好調だ。まだ4

【速報】ついに決定|14年ぶりの日本人宇宙飛行士は男女2名

先日のエントリ「選ばれるのは誰だ?夢とロマンの宇宙飛行士誕生の物語」

3年ぶりの開催|シン魚沼国際雪合戦大会で熱くなれ

先週末は、コロナで過去2年間見送られてきた、あの魚沼国際雪合戦大会が

国語の入試問題なぜ原作者は設問に答えられないのか?

僕はもうはるか昔から苦手だったのだ。国語の試験やら入試やらで聞かれる

PAGE TOP ↑