*

Kindle電子書籍で手に汗握って読む、箱根駅伝をより面白くするこの3冊

公開日: : 最終更新日:2015/06/16 Kindle, オススメ書籍

いまや国民的イベントにまで人気が拡大した、正月の風物詩・箱根駅伝。僕も含めて毎年楽しみにしている人は多いだろうが、そんな人たちにお勧めしたいのが堂場瞬一の『チーム』である。

 

箱根駅伝の出場を逃した大学のなかから、予選で好タイムを出した選手が選ばれる混成チーム「学連選抜」。究極のチームスポーツといわれる駅伝で、いわば“敗者の寄せ集め”の選抜メンバーは、何のために襷をつなぐのか。東京~箱根間往復217.9kmの勝負の行方は――選手たちの葛藤と激走を描ききったスポーツ小説の金字塔。

 

さて、この『チーム』の面白さは、なんといっても「学連選抜」に注目した点にある。出場を逃した各大学のエースを集めたこの混成チームが、これまでの箱根駅伝を盛り上げてきたことは間違いない。さらには、こうした敗者の選抜チームから、その後活躍する選手が生まれたことも見逃せないだろう。その典型例が現在、公務員ランナーとして毎回注目が集まる川内優輝である、学習院大学時代に学連選抜の選手として箱根に出場したことが彼の基礎であり支柱ともなっている。

 

また、今年からは「学連選抜」という名称および関連ルールが変更となったが、過去の大会では、この学連選抜がシード圏内に入るかどうかも、箱根駅伝の大きな見どころとなっていた。いずれにしろ、箱根駅伝を舞台にした小説の中では、この混成チームに焦点を当てたという視点の鋭さもあって、圧倒的に読み応えのある一冊となっている。

 

photo credit: Chema Concellon via photopin cc

photo credit: Chema Concellon via photopin cc

 

 

続いておすすめしたいのが、同じく堂場瞬一著の『ヒート』である。上記『チーム』と合わせて読むべき理由は以下に述べる通りだ。

 

 

日本男子マラソンの長期低迷傾向に歯止めをかけるべく、神奈川県知事の号令のもと新設された「東海道マラソン」。県庁職員の音無は日本陸上界の至宝・山城悟のペースメーカー役に、孤独なランナー・甲本剛を起用する。果たして世界最高記録達成はなるか。数多の人間の欲望と情熱を乗せたレースは、まさかの展開に―。

 

箱根駅伝を描いた上記『チーム』の続編にあたる本書『ヒート』では、今度はマラソンに焦点を当てる。山登りや下りを始めとする箱根駅伝の特有ルールが、日本の男子マラソンを弱体化させているという指摘はよく聞くものだが、そういう批判をする人の多くも、それではいかに男子マラソンを強化するべきかという具体的な提案には乏しい。

 

それに対し、本書『ヒート』では、日本が男子マラソンで世界記録を樹立するという壮大なゴール達成に向け、関係者が暗躍するさまが生々しく描かれる。それは選手が速いことだけではなく、タイムが出やすいコース設定から、完璧なペースメーカーの用意まで、舞台裏での準備が必要になるのである。「箱根からマラソンへ」という掛け声を白々しいものとせず、リアルな到達可能目標とするためには、単にレースに参加するのではなく、ゲームのルール作りから深く関わっていくという、この小説で描かれるくらいの執念が必要なのだろう。前作『チーム』と同様に、単なるマラソン小説ではない、視点のよさが光る快作となっているのが、この続編『チート』なのである。

 

 

そして最後に紹介したいのが黒木亮の『冬の喝采』だ。経済小説のベストセラー作家として知られる黒木亮が、じつは早稲田大学在学中にあの瀬古選手とともに箱根駅伝を走っていたなんて、本書を読むまで知らなかった。そういうノンフィクションの要素を多く含んだ箱根駅伝小説の傑作が本書だ。

 

 

この2015年大会からは、先ほど述べたような従来の学連選抜に関するルールや、山登りと下りのコースに関して等々、いくつかの変更が加えられ、新たな見どころも増えた。今後の箱根駅伝をさらにより面白く見るためにも、駅伝ファンにはここで紹介した3冊をぜひともおすすめしたい。

 

Amazon Campaign

follow us in feedly

関連記事

ラグビー日本代表が強くなった理由|エディー・ジョーンズのコーチング

冬のスポーツ風物詩と言えば、箱根駅伝に加えて高校サッカー、そして大学ラグビーである。そんなラグビーの

記事を読む

あの伝説の一戦「3連勝4連敗」から9年|羽生善治・永世七冠誕生

2017年12月5日、長い将棋の歴史に新たな偉業が刻まれた。羽生善治が竜王位を奪還し永世竜王となり、

記事を読む

論文捏造はなぜ繰り返されるのか?科学者の楽園と、背信の科学者たち

先週は、小保方晴子氏の論文「学位取り消しに当たらず」(NHK)との報道が新たな議論を引き起こしている

記事を読む

Kindle電子書籍で、一生に一度だって使わないジョジョの奇妙な英語を学ぶッ!

いよいよKindle電子書籍で(ごく一部のファンの間で)超話題の(かも知れない)アノ一冊が登場した。

記事を読む

リチャード・マシスン『縮みゆく男』と、名医ブラックジャックにも治せない病

普段は僕自身読むことも少なく、おすすめする機会もほとんどないフィクションの分野。だけどこれだけは紹介

記事を読む

『シグナル&ノイズ 天才データアナリストの予測学』のネイト・シルバーがおすすめする2冊の絵本がステキ

「今年続けて読みたい統計学オススメ関連書と教科書15冊」で紹介したうちの一冊が、ネイト・シルバーの『

記事を読む

japanese dictionaries 1

明鏡国語辞典の最大の特徴は「問題な日本語」に対する答え

国語辞典編纂という仕事は、とても重要なものなのに一般に知られることがほとんどない。その職務内容やそこ

記事を読む

three main dictionaries

国語辞典を選ぶならこの3冊がおすすめ:現代語に強い三省堂・豊かな語釈の新明解・安定と安心の岩波

目的と用途に合わせてベストの国語辞典を見つけよう 卒業・入学シーズンなので、そのお祝いとして国語辞

記事を読む

綻びゆくアメリカと繁栄から取り残された白人たち

2014年に翻訳出版された『綻びゆくアメリカ―歴史の転換点に生きる人々の物語』に今また注目が集まって

記事を読む

聖の青春|天才・羽生善治を追いつめた伝説の怪童・村山聖

日本の将棋史上最高のプロ棋士・羽生善治の名前を知らぬ人は少ないだろう。だが、「東の羽生、西の村山」と

記事を読む

Amazon Campaign

Amazon Campaign

research proposal
科研費採択された研究者におすすめの2つのサービス|クラウドを利用して研究・事務作業を効率化する

科研費で利用したい研究効率化のための2つのサービス さて先日は、今年

科研費およびその他の研究費管理には、クラウド会計がびっくりするほど超便利

さて先日は、今年度下半期の科研費採択プロジェクトが通達された。経済学を

誰も教えてくれない、科研費に採択されるコツを公開|研究費獲得に向けた戦略的視点2018年版

今年も9月になり、科学研究費助成事業(科研費)の締切が近づいてきた。自

全米オープンテニス|錦織がフルセットを制して準決勝進出

日本時間早朝の全米オープンテニス生中継を観戦したみなさま、お疲れ様でし

グランドスラム初優勝を目指す錦織と大坂|データで観戦する全米オープンテニス

現在熱戦が繰り広げられている今年の全米オープンテニス、錦織圭と大坂なお

今からでも遅くない「行動経済学がわかるフェア」

「今年のノーベル経済学賞は『行動経済学』のリチャード・セイラーに」でも

辞書編纂者・飯間浩明の仕事の流儀プロフェッショナル

先日NHKで再放送された「プロフェッショナル仕事の流儀」をご覧になった

ジョジョの奇妙な原画展|荒木飛呂彦の冒険

この夏最大の注目とも言えるべきイベント、「荒木飛呂彦原画展JOJO-冒

PAGE TOP ↑